母の発達 (河出文庫 し 4-2 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (1999年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309405773
感想・レビュー・書評
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母の縮小と大回転音頭の結末のところを読みあとは、はしょりました。こういう関係の母娘は世の中に実はよくいる。こういう妄想でもしないと生きていけなかったんだろうな。妄想の世界感の広げ方は作者のワールドで評価されているところなんだろうな。作者を画像で拝見すると想像どうりの方でした。世の中で虐げられたり抑圧されたりしながらも体裁を整えながら生きている人達の感じ方が少し理解できました。
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母親から医者になるよう半ば強制的に勉強を強いられていたヤツノは、受験を控えた頃から軽い鬱状態に陥り、登校拒否をし出す。そして強烈な頭痛を境に、母が縮んで見えるようになる。この作品は、その発端となる”母の縮小”、続編となる”母の発達”、”母の大回転音頭”の三編から構成されている。
物語らしい物語ではない。だが難解ではなく、読み進めていくと不気味な笑いがこみ上げてくる。その理由は関西弁のテンポや音の良さももちろんだが、言葉の選び方、造語の面白さがあると思う。作品の柱の一つとなる”お母さんの名前”がとても面白い。”母の大回転音頭”では「地獄のお母さん」、「ウニのお母さん」、「戦後派のお母さん」など様々なお母さんの名前を挙げていく。その名前や、名前から派生していくちょっとした物語も面白い。そういった言葉の面白さに加えて興味を引かれるのが、母と娘の関係である。母の支配下にあったヤツノが、”母の縮小”をきっかけに支配から逃れ、”母の発達”において逆転してしまうのである。逆転からさらに関係を修復していき、母への崇拝にまでいたってしまう”母の大回転音頭”。豪快でありながら暴走していくこと無く、見事にまとめ上げる手腕と世界観に驚く。 -
笙野頼子の存在を知ったのは佐藤亜紀のHPからでした。
その直後に本屋で見かけた『金毘羅』>『水晶内制度』>『絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男』と読み進めて、その流れで『説教師カニバットと百人の危ない美女』と『だいにっほん、おんたこめいわく史』を読むつもりだったんだけど、ついつい、ふらりと手に取ってしまったこの本。
「文庫で薄く」て「読み始めたらすいすい」読めてしまったからなんだけど、いやーまー…やっぱりすごいっ!笙野頼子!!文章は「すいすい」だけど書いてる内容はすさまじく深いっ!!なのに、この枚数で治まるなんてっ!ぎゃーはっはっはっはっ。
感想はもちろん◎!花丸つけちゃうぞ。
いやはや、笙野頼子の作品を読んでてつくづく思うのは、「大学のゼミでだったら、どう読んだだろう??」って事。なんでゼミで誰も取り上げなかったんだろ!?と思いつつ笙野頼子の経歴を見たら…ああああ、自分が学生の頃ってまだ笙野頼子はデビューはしていたけど、知られてはいなかったのね…。
特にこの『母の発達』は、ものすごくエキサイティングに読めちゃうような気がするなぁ。
おおいなる呪縛と化していた「母」を「縮小」し、解体再構成することによって「発達」させ「大回転音頭」する事で昇華してしまう…。
うー鮮やかだっ! -
3.44/276
内容(「BOOK」データベースより)
『殺しても母は死ななかった。「あ」のお母さんから「ん」のお母さんまで、分裂しながら増殖した―空前絶後の言語的実験を駆使して母性の呪縛を、世界を解体する史上無敵の爆笑おかあさんホラー。純文学に未踏の領野を拓いた傑作。』
冒頭
『母が縮んで見えるという視界の異変にずっと苦しんでいた間の事を、なんとか文章で説明してみたいと思ったのだが、そもそも縮み始めてからの記憶は目茶苦茶だし、苦しまなくなったきっかけはごく単純な事で、しかもそれを機会に母と会わなくなってしまったのだから一方的な話になってしまうかもしれないのだった。』
『母の発達』
著者:笙野頼子(しょうの よりこ)
出版社 : 河出書房新社
文庫 : 188ページ -
こんなにメチャクチャで最高な本はひさしぶりに読んだ。小説というのは元来ことばが物語を生むもので、書かれたことがそのまま虚構内の現実になるような、そういうものだけれども、それをあえてメタ的に示したようでとにかくたのしかった。
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連載途中のなにかを数度読んだ以来の笙野頼子、
世界観がくっきりで、
多少その世界に中って気持ち悪くなりながらも読みきりました。
愛憎を笑えるようになろう。