- Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309408965
感想・レビュー・書評
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新書文庫
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古本で購入。
江戸に4人存在した非人頭の中で、最大の勢力を誇った浅草の車善七。
「車善七」という世襲制の役目が何であったのか。
以前読んだ同じ著者の『弾左衛門とその時代』が関八州の賎民を支配した「弾左衛門」というシステムの実態に迫っていたように、本書では江戸の非人を支配した「車善七」というシステムについて明らかにしようとする。
とは言うものの、車善七には謎が非常に多い。
まず江戸初期の居住地が定かではない。
寛文7年(1667)に新吉原に接する役宅に移り、そこで江戸時代の終わりを迎えるが、それ以前の十数年間のことがよくわかっていない。
浅草の鳥越にいた車善七が山谷堀のどこかに移り、そこからまた新吉原へ移る。その「どこか」を、著者は文献資料などから砂利場(日本堤と山谷堀の間)であると推定している。
また、代々の「車善七」の伝記がよくわからない。
このあたり、写真も残っている最後の穢多頭弾左衛門こと弾直樹とは大違いだ。「長谷部」と名を変えた最後の車善七も、どこへ行ったかわからない。
この他、野非人などの収容施設「溜」や非人たちの生業、弾左衛門とその支配を受ける車善七の対立などをテーマに、謎多き車善七の実態を浮かび上がらせようとする。
中でも紙数を割いているのが、弾左衛門との訴訟に敗れたことに不満を持った非人による、享保年間の火付け騒動についてである。
これまでの「火付け事件の犯人として濡れ衣を着せられた非人」という教条を覆し、これを「非人の反乱・一揆」と位置付けているところに著者の独自性がある。
「車善七」その人の登場はほとんどないが、巨大都市江戸の一面を支えたシステムを知ることのできる本としてオススメ。上述の『弾左衛門とその時代』と併せて読むべき。 -
弾左衛門とか車善七がどの様な人かを知っていることが前提の本なので、繋がりが分かりにくい。しかも、当時の住居場所を調べる過程に随分ページを割いているので、ちと退屈。江戸社会の中の位置づけ、本当に今私達が想像している様な蔑みが実際あったのかが分かる様な本ではなかった。