- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309412955
作品紹介・あらすじ
よく食べよう、よく生きよう――元祖料理エッセイ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』の著者による単行本未収録作を中心とした食エッセイ集。五十年代パリ仕込みのエレガンス溢れる、食いしん坊必読の一冊。
感想・レビュー・書評
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やわらかい文章で紡がれるお料理のレシピが本当においしそうで、豊かな気持ちになる一冊。
「白魚のつくだにのサンドイッチ」「つくしんぼうとタンポポのサラダ」なんて、とても素敵!
オムレツすら「まず、小さ目のフライパンに油大さじ一、二杯入れてよくよく熱する。次にバタを少量入れ、こげぬうちにじゃと玉子を流しこみ箸で手早く描き廻す。半熟になったら形をととのえて出来上り。」と描写されると、夢のようにおいしい食べ物みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
少し前の酒や料理の本は楽しい。 情報過多のネット全盛の時代になって、「正解」っぽい記事があちこちに散らばっているせいか、今の酒や料理本には、著者の個性がなくなった印象だ。逆に、昔のオリジナルの視点で切り取った酒や料理の世界は、個人の主観や思い入れがたっぷりで、読み物になるのだ(間違いもあるけど)。
著者の石井好子と言えば、自分たちの世代だと「料理の鉄人」審査員のイメージなのだが、元々シャンソン歌手で渡欧して各国の料理を食べまくったようだ。帰国後はエッセイストとしても活躍したとか。
チーズにパスタにサンドイッチ、オムレツ、ちゃんこ、おにぎり……。欧州から日本各地の料理まで、写真がまったくないのに、どれもおいしそうなのは、ただの食いしん坊ではないからだろう。
東京の老舗レストランガイドの側面もある一冊だが、気になったのは小川軒。よく行くのは鎌倉の小川軒で、基本お菓子のみなのだが、本家はレストランもやっていて、オックステールシチューが紹介されていた。別の個所で紹介されている「フジワラステーキ」という、歌手・藤原義江ゆかりの料理も気になるので、緊急事態が終わったら、ぜひとも行ってみたい。
冒頭で、情報過多の現代について、批判めいたことを書いたのだが……。検索して分かったのは、石井好子だと思っていたのは、岸朝子の顔だった。ネットも大事ですな。
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1950年代から1980年代に発表されたものがほとんどなのに、全く古く感じない。華やかな世界に生きながら、流行り廃りで消費されるものでない、文化と呼べるような食を選びとり、愛してきた著者を尊敬する。
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パリでシャンソン歌手としてデビューした石井好子さんの、お料理エッセイ集。
70年代パリの香り。気軽で、陽気で、でも基本の丁寧さは忘れないお料理たち。フランスで思い出す日本の味。そしてお酒。「白ぶどう酒」の表記にワクワクする…
食いしん坊であることはとてもパワーがいることだな、と最近思う。食に関する探究心と行動力。そして共に食事を楽しめる仲間たち。 -
いつかこれらのレシピお料理したい!何にこんなに惹きつけられるんだろう?
2016.3.27
半身浴のお供シリーズ。
大好き石井好子さん。故人で一番会ってみたい!と強く感じる私の憧れの人。大正生まれということで、祖父母よりも前に生まれた人なのに、本当にすごい。
彼女の決してでしゃばりすぎず品がありながら、積極的な好奇心に満ちた生き方に、強くわたしは惹かれるんだと思う。
2020.12.18 -
石井好子さんのお料理や食材についてのエッセイはいつもほんわかとあたたかい気持ちにさせてくれるけど、いちばん心に残ったのは少し物哀しい雰囲気の「パリで一番のお尻」でした。「女ひとりの巴里ぐらし」にも収録されていた話でしたが、こちらのようにお食事のエピソードばかりのなかにぽんと放り込まれると、その哀しげな雰囲気がより際立つようで、ひときわ印象に残ります。
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だいすきな石井好子さんの食べ物エッセイ
最初から最後まで食べ物のおはなし!
この人の文章はどうやったらおいしいものをおいしく食べれるか、作れるか、まわりにそれを伝えられるかをよくよく考えてるのが伝わってくる
牛のしっぽも、カエルも外国で食べられてるものを偏見をもたずにチャレンジしてそのおいしさを知ってほしいってことが書いてあって、読むとその国に行ってみたくなるし食べてみたくなる
中のレシピも参考になるな~作ってみよ~~ -
2010年の没後編まれた、単行本未収録の文章を集めた本。1970年代中心に、古くは1955年頃から一番最近で2001年頃までの文章が入っている。おいしいものが大好きだけれど、凝りすぎるわけでもない、おおらかで心地よい文章。
短い文章が多いので、気楽な隙間読書向け。 -
よく食べよう、よく生きよう―元祖料理エッセイ『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』著者の単行本未収録作を中心とした食エッセイ集。50年代パリ仕込みのエレガンス溢れる、食いしん坊必読の一冊。
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6/8 読了。
いつもの美味しい話の中に一編、石井さんがパリでシャンソンを歌っていた頃に知り合った女給たちの姿を活写した「パリで一番のお尻」という話がある。1950年代当時、レストランの女給という仕事は娼婦すれすれの職業で、彼女たちはヒモに暴力で縛り付けられながら生きていた。石井好子が女給たちを描く筆致は、時代こそ違えどロートレックが同じパリの女たちを描いた、あのタッチに似ている。同情しているからこその一歩引いた目線、美化も戯画化もせず、彼女たちの背中から滲み出る寂しさを書く。