- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309414522
感想・レビュー・書評
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収録されている作品がどの程度バラエティに富むか、という観点からみると、先に読んだ『日影丈吉傑作館』のほうに軍配は上がるが、こちらも「謎を解き切らない余韻」や、"妖しい"女性の魅力(決して「魔性の女」のステレオタイプに嵌らないのが良い)。
お気に入りは異色のクリスマスストーリー「変身」、妖しい女性モノからは「ふかい穴」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
個人的には「傑作館」のほうが好き。評価する方も居られるが、女性の描かれ方や末路が、私にはどうも癪に触ってなんだか集中しきれないし、少年の推理にも、前の編にあった神秘性が寡ない。それでも気に入ったのは、「崩壊」と「冥府の犬」。同じく不思議の要素を持っていて、前者は澁澤龍彦を、後者は京極夏彦(後者は現代の作家だけれど)の作風を連想させる。
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1950~60年代の日本を包んでいた独特な空気の下、思春期の少年が大人の女に対して抱くミステリアスなエロティシズム…、のようなものが漂う作品が多い。
文体は流麗で、幻想的な世界からは様式美も感じられる。 -
河出文庫から日影丈吉の2冊目が!久生十蘭みたいにシリーズでもっと出してくれるといいな。今回は女性が犯罪者のものが多かった印象。あと年下の少年からみた色っぽいお姉さんの思い出的なのと。
ちょっとオチが突拍子もない気もしたけど「オウボエを吹く馬」がお気に入り。新婚夫婦の妻の寝室から薔薇の花が1本だけなくなるとか、馬の幽霊とか、設定だてがゴシックで。あと「歩く木」もタイトル通り木が歩き回って人を殺してそうな前半部分の雰囲気がとても好き。解決があっけないのだけど、解説によるとどうやら春日検事事件簿というシリーズものらしいので、やや唐突に探偵役が出てくるのもそのせいだったのか。
刺青美女と少年の「ふかい穴」、女優の姉が妹殺しのアリバイ工作をする「夜の演技」、正体の見えない怪異がじわじわ恐怖をあおる「崩壊」、戦争中の台湾を舞台にしたオチがグロテスクな「蟻の道」もそれぞれ面白かった。「冥府の犬」だけちょっと毛色が違うなと思ったらこれだけ89年の作品だからか(他はすべて1950~60年代)これはこれで好きだな。
※収録作品
「オウボエを吹く馬」「変身」「匂う女」「夜の演技」「異邦の人」「歩く木」「ふかい穴」「崩壊」「蟻の道」「冥府の犬」 -
『日影丈吉傑作館』に続く河出文庫の短編集。
前作より本書の方が作品のセレクトとしては好みだった。解説ではオチに関してやや批判的なことが書かれている『オウボエを吹く馬』も、個人的には好きだ。但し批判そのものは的確だろうとは思う。
それ以外では、『匂う女』『崩壊』『蟻の道』『冥府の犬』が印象に残っている。台湾ものはエキゾチシズムもあって良かった。