三面鏡の恐怖 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309415987

感想・レビュー・書評

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  • キギタカは高校生のときに
    創元推理文庫の全集で初めて読んで好きになって、
    以来時折読み返しているのだけど、
    後年その収録作以外に手を出したら
    割と何だかなぁって感じだったのが痛い。
    痛いというのに、ふと魔が差して、
    また買ってしまったのが、この『三面鏡の恐怖』。

    第二次世界大戦後の東京。
    電球会社社長の真山十吉は、妻の死後、
    その母・妹と共に暮らしていたが、ある日、結婚前の恋人で、
    昔の友人である弁護士・平原勝之助の妻となり、
    亡くなった尾崎嘉代子の、妹である伊都子が訪ねてくる。
    彼女は死んだ嘉代子に瓜二つだった。
    両親が多額の遺産を残したので、有り余る金と時間を提供し、
    十吉の事業に協力したいと言う伊都子。
    彼女の思惑は……。

    といった序盤。
    で、各登場人物のモノローグや、
    各自視点での叙述が入り乱れるので、
    小説としては非常に読みづらい。
    現代だったら編集者にガツッと説教されそうな書きっぷり(笑)。
    そして、全体の三分の二くらいで
    ようやく殺人事件が発生し、探偵が登場する(ううむ)。

    そんなワケで、楽しめたとは言い難いのだが、
    女性キャラクターが活き活きとヘタレ男どもを押しのけて、
    言いたい放題、やりたい放題……といった演出は、
    なかなか快い。
    上述の創元推理文庫全集収録作も、結構、
    作者の女性に対する優しい眼差しというか、
    頑張る女を応援するぜ!
    みたいな空気に満ちているのだけれども、
    戦後に執筆されたこの作品にも、
    これからは女性が活躍する時代――との想いが
    込められていたのかもしれない。

    ちなみに、刊行後間もなく映画化されていたそうなので、
    機会があったら鑑賞したい。
    グダグダ、グネグネした地の文を略した映像版の方が、
    ずっと面白そうな気がする。

  • 目の前にいるのはほんとうに妹なのか、それとも死んだはずの姉なのか。姉妹を中心に、人々の思惑が交錯する。敗戦直後の昭和22年から翌年にかけて連載されたというのが作品のポイントになっている。

  • 結核で死んだ元彼女と瓜二つの妹が、青年社長・十吉の前に現れ、十吉は失った恋を取り戻すかのように妹と再婚するが、十吉と元彼女とに連なる因縁が殺人事件を生んでしまう…ラストは切ない思いがするものの悪くない後味であり、電気事業をめぐる当時の日本の状況なども伺える面白さもある。
    探偵小説として肝心の事件が起こるのが作品の半ばを過ぎてからなので、そこまでは人間ドラマを見ているような感じ。でも全く退屈しない。
    作者は慶応医学部教授というインテリでありながら、優しく読みやすくトリックにばかりはしらない作風で好ましかった。

  • 河出文庫は『KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ』と題して往年の探偵小説や幻想小説を復刊しており、本書もその1冊。
    ジャンルとしては探偵小説に含まれると思うが、事件より人間模様で読ませるタイプだった。

  • 冒頭に作者の言葉が入っているのですが、「心理的多元描写」の方法を使った探偵小説だそうで。私の印象は、サスペンス風味の作品って感じですね。
    意外とあっけなくラストへ向かって走ってしまっているのが多少物足りなくはあります(あの作家やこの作家が書いたなら、もっと盛り上がりそうなネタではあるのに……みたいな感じで)。
    映画原作ということですが、映画の方が撮り方で盛り上がりそうなお話でもありますね。

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著者プロフィール

1897-1969。推理小説家、脳生理学者。『人生の阿呆』で直木賞受賞。作品に『四十指紋の男』『光とその影』『大心池先生の事件簿』等。

「2018年 『三面鏡の恐怖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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