薄情 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 170
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416236

感想・レビュー・書評

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  • 読んだのがたぶん去年なので(どれだけ置いておいたんだ 笑)うっすら忘れかけている部分もあるのだけど…悪い言い方をすればとても地味な雰囲気の小説。だけど妙に心にずっしりと来る。
    地方都市の狭さとか(人間関係の密接した感じ、噂がすぐに広まる、等)は似たような街に住む私もよく分かる。時には助けになるけれど、一方でものすごくうんざりするときも多い。都会ではなく、本当の田舎でもない。そういう独特の狭さの街。

    この、薄情というタイトルがどういうところを指しているのかは、作者ではないから分からない。主人公はある意味で至って普通の青年だ。つかず離れずの人間関係を形成しながら、必死ではないものの日々食べていける程度に働いて、彼女が出来たり、そして別れたりする。
    そんなどこにでもいる青年。それこそが、薄情、を体現しているのかも、とは思った。全体的に希薄な感じが。
    書きながら思った。身近にもこういう人がいる、って。

  • なんというか、しみじみとよかった、という感じ。
    文章に淡々としたユーモアがあって、するする読める。
    すごく大きな事件とかはないんだけど、でも読みながらなんとなく、人間関係とか人生とか日々の暮らしとか、いろいろ考えさせられる。ラストには希望のようなものがあってさわやかな感じもして。好きだ。

    主人公は、30代男性、将来は神主の職を継ぐことが決まっていて、群馬県の実家で暮らし、ヒマなときは農家の住み込みのアルバイトしたりとか、基本、ふらふらっとしてる感じで。基本、淡々と生きてる感じで。
    自分にはなにかが欠落してると思っているけれども、最初からなかったものは、そもそもなにがあったのか、なにがあるべきなのか、わからない、とかいってるのには、なんかわかる、と思ったり。

    地方で生まれて育って暮らすっていうのはこういう感じなんだなあとも。
    舞台になっている高崎とか群馬の温泉とか、行ってみたくなる。日本の地方のどこかが舞台の小説っていいな、と思った。

  • 地元に対する関わりを失いつつあるけど、そういった周りの人との付き合いの輪というものはどうしても切り離せずにあったりするかもなって感じ。

  • 絶望が漂う感じ、よかった

    タイトルと、地方というテーマに惹かれて読もうとおもった

  • もっさりヘラヘラした主人公だけど、「あーあるある、こういう感情!」という場面が多々描かれてるから嫌な主人公という印象にならなかった。もっさりしてるけど。

    「当たり前」のように毎日同じ生活してて、ふと全然違う行動したくなる衝動とか、夜の田舎道を運転する何とも言えない孤独感?ワクワク感、スリルみたいなものを思い出す。ここではないどこかに行きたい気持ち。

    歳をとると薄情が当たり前になってたけど、人間同士の感情の複雑さを嫌な部分も含めて明るみにしてくれた感。

    あとは、田舎道ドライブしたくなる。さすが絲山秋子。BGMはくるりのハイウェイとかいいな。

    映画化したらどうなるんだろう、と妄想したけどどうにも主人公が私の中でもっさりイメージなので華がないかもなぁ。でもきっと景色は綺麗そう。

  • なんか、ずっとざわざわしてたの。

    景色や光の描写もストンと入ってこなくて何度も戻った。

    「宇田川、おまえ大変だな。」
    って、彼の状況ではなく思考に対して感じていたせいか。


    そしてそして、堀江敏幸さんの解説を読んで、何度も、
    「はっ!」
    ってなる。

    ダメだなーオレは。


  • 「薄情」読了。絲山秋子の小説は多くが核とした筋がないように思う。たゆたうようにゆらゆらと、しかし、そこに人の心があり、読者はそこに惹かれる。
    第52回谷崎潤一郎賞(中央公論新社主催)

  • 主人公・宇田川がいう、「かけ算で0になる関係性」というのは、都会にもありますよね。
    ただ都会では、そういう関係性も社会生活のなかに紛れて、なんだかそれはそれで危うい孤独という形で成立しているんだと思うのです(良し悪しは別として)。0になりそうでも、どうにか倒れず生きている。目の前の通勤ラッシュとかをやり過ごしていくうちに。
    それが地方の社会生活のなかでは、同じようには成立しにくいのかなと、本作を読んで思いました(私は東京育ちなので、あまり深くは分からないところがあるのですが)。なので、0になりそうな危うさが際立って、宇田川の戸惑い?を生んでいるのかなと思いました。

  • 感情を抑えた描き方ではあるけれど、現代の人の思い、考えていること、日常の移り変わりがよく描けていて、私の世代では「ようわからんな。。。」って思いがちな部分が、「なるほどなー」と浮き彫りになったりして、それも読み応えがあってよかったです。

  • 誰かを薄情、と評するより自分に対して薄情、と思うプロセスの深度の方が圧倒的に深い。そのプロセスの中身をじっくり描いているような気がした。
    地方とは呼ばれないけれど都心でもないような土地に住んでいる自分としても鹿谷さんの工房の件は、主人公宇田川のような対応をすると思う。
    かれみたいにある意味誠実に考えないと思うけれど。
    解説の堀江敏幸さんの一文『人間関係のかけ算が欠け算になったとき、「薄情」は、他者だけでなく自分自身と誠実に向き合った解になる』で、読後感の何ともいえないほの明るさを言葉にしてもらえてよかった。
    彼じゃなくて「かれ」や、独白文は句読点が無いところとか、気になるというか気付いた程度だけれど、振り返ってみれば宇田川という人を描くのに効果はあると思った。

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著者プロフィール

1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。住宅設備機器メーカーに入社し、営業職として福岡、名古屋、高崎などに赴任。2001年退職。03年に「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞、04年に「袋小路の男」で川端康成文学賞、05年に『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年に「沖で待つ」で芥川賞、16年に『薄情』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞。他の著書に、小説『逃亡くそたわけ』『エスケイプ/アブセント』『妻の超然』『末裔』『不愉快な本の続編』『離陸』『忘れられたワルツ』『夢も見ずに眠った。』、エッセイ『絲的メイソウ』『絲的サバイバル』『絲的ココロエ 「気持ちの持ちよう」では治せない』などがある。群馬県高崎市在住。

「2020年 『御社のチャラ男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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