- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309419343
感想・レビュー・書評
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ちょっと側から見たらよくある大学生の話だが
主人公の淡々とした思考回路が猟奇的
自我が感じられない辺りがまさしくゾンビ
認知と言動のアンバランス感が気持ち悪くていい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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第163回 芥川賞受賞作
主人公の視点で語られる日常風景は、
驚くほど内向的で無機質。
物語を読んでいるというより、研究の結果や
分析の説明を受けているような印象でした。
主人公はこうしなければならないという
拘りが非常に強いタイプで、年長者や
女性に対する態度は概ね誠実。
その一方で、他人の本心は結局のところ
わからないという冷めた感覚を持っている。
一見相手を思い遣っているような態度も
形だけの表面的なものに感じられてしまう。
一人語りで進む、音のないスライドを
ただ粛々と見ているような静けさと、
味気なさとも言える空虚感を覚えました。 -
陽介みたいなタイプは少し苦手。
自身の思い描く男性性・女性性に対する理想像への異常な執着が随所に見られ、気味が悪かった。
筋肉が男らしさの象徴という理由だけで筋トレしてそう、、 -
主人公は他者の気持ちを推し量ることが出来ないようですね。自閉スペクトラム症なのでしょうか。そういう思考の方から見た世の中は、こんなふうに映るのか…と知ることが出来ました。本人はいいでしょうが、家族や周囲の人は大変なんですよね。
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なんとも独特な世界観
読んでいるうちに何故か不安な気持ちになってくる
それがまたクセになるから面白い
性描写や自慰のシーンでは生々しくて少しウッときたけれど、あれが24歳の若さなのかしらと、昔むかしを思い起こされた
ラストシーンは不条理な結末で
あーーーっなんでーー!!??!!?
と思わず声が出そうになってしまった
女ってずるくて面倒ですね(女だけど思った) -
スラスラと読み進めた結果、あっけなく結末を迎え、解説を読んで「なるほど」となった。解説を読んでからまた読み直すと新しい発見がありそう。
初見ではどこか違和感を得ながらも読んでるうちにいつの間にか「破局」を迎えてしまったが、2回目に読むと何が「私」を「破局」に追い込んだのか気づけるかなと思った。
「私」は自分を規則正しくルールに則って生きてる善良な人間だと思っているけど、それはあくまで社会的に定められた範疇で、正しいとされる規律やマナーに他人行儀に従っているにすぎない。「世間的にはこれが正しいとされる」「父親がそう言っていた」他人などが決めたことに倣ってるだけで、本心からそうしてるわけではない。頭でわかってるだけで、心では何も感じていないというか。
そうした現代人の歪みのようなものを、ユーモアも織り交ぜながらうまく文章表現に落とし込んでる点が、芥川賞につながったのだろう。 -
別れではなく破局なところがなんとなく拘りを感じさせる。
ムキムキに鍛えている青年と女性との別れ。
合わないようでいてどことなく形としてしっくりきたのは不思議だ。
作中の主人公には殆ど感情移入はできない。
自分勝手で正義感の塊であると信じてやまない己に酔いしれているいわば嫌な奴。そこへもって彼女がいることがまたおかしく、浮かんでは落とされて不快ながらも読むのには邪魔ではない。また不思議。
自分のことを俯瞰できていると多分彼は思っている気がした。でもそれは気がしただけで、そこらへんの男性陣よりもっともっと幼稚で幼くて乏しい。
無理して手にした灯とも結局うまくいかない。
かくれんぼがうまい彼女を探しきれなかった。
最後で読んで思う。これは別れではなく破局だ。
自分の意志で動かないまま迎えてしまった終わりだからだ。