返らぬ日 (河出文庫 よ 9-6)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419732

感想・レビュー・書評

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  • 少女漫画の礎を築いた「百合界のカリスマ」、吉屋信子を知っていますか? | 彼女がいなければ『セーラームーン』も『少女革命ウテナ』も生まれなかった | クーリエ・ジャポン(会員限定2019.8.3)
    https://courrier.jp/news/archives/169891/

    吉屋 信子 | 兵庫ゆかりの作家 | ネットミュージアム兵庫文学館 : 兵庫県立美術館
    https://www.artm.pref.hyogo.jp/bungaku/jousetsu/authors/a69/

    鎌倉市/吉屋信子記念館
    https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/gakusyuc/yoshiya-koukai.html

    吉屋信子少女小説選2 返らぬ日 - ゆまに書房
    https://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843307380

    返らぬ日 :吉屋 信子|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309419732/

  •  女性同士の愛を描いた短編集。とは言っても、表題になっている「返らぬ日」が全体の半分の文量を占めていたり、読者から書いてほしいと言われた話が載っていたり、当時の女性の境遇や愛についての作者の考えを述べた評論が入っていたりと、内容はバラエティに富んでいた。
     解説にも書いてあったが、「愛情賛歌」が一貫したテーマとなっていた。戦前に書かれたという時代背景もあり恋愛自体が成就することはないものの、それぞれの恋愛の終わり方が愛に満ちたものになっていて心が動かされた。「返らぬ日」と「裏切り者」が特にそうだったと思っているが、最後に示される愛がそれぞれ異なっているところが面白かった。
     「返らぬ日」では、主人公のかつみは母に託された夢を選ぶか恋人を選ぶかの選択をしなければならないという状況に陥る。そのためにかつみは悩むための時間をもらうが、その間悩んでいたのはかつみだけではなく恋人もそうだった。最後にお互いを思いあった選択をした結果、離れ離れになるという恋愛や自分の気持ちを超えて思い合う愛が描かれていた。「裏切り者」では、高圧的でクラスで浮いていた人に気に入られた主人公が、ある事件においてその人を選ぶか主人公の家族を選ぶかを迫られ、結果これまでのこともあり家族を選ぶという決断をする。その後、主人公は相手に怯え相手のことを避けて過ごすようになるが、ある時ふとすれ違って言われた言葉から、相手が自分の選択でどれだけ傷ついたかを知る。自分も相手も思っていた以上にお互いを必要としていたことを知るという無くなって分かる愛を描いていた。
     このように様々な種類の愛が瑞々しい表現で描かれており、楽しめた。短編ごとに地の文や会話の雰囲気が変わるのも今まで読んでことがなく目新しく感じた。特に、「返らぬ日」では地の文に感嘆文が出てきて、興が乗った人の朗読を文に落とし込んだようだった。

  • 河出文庫の吉屋信子作品・新装版連続刊行第1弾。

    表題作の「返らぬ日」「裏切り者」のような心をぐさりと貫かれる作品も良いが、個人的には「七彩物語」「五月と桐の花」が良かった。

    「五月と桐の花」は4pととても短い作品なのだが、寄り添う二人、五月の空、花の香りがふわりと浮かんでくる。

    「七彩物語」は7つの章からなる作品で、“みさをさん”がアルバムの写真の“◯◯の君”について語る話。どの娘のエピソードもしみじみと素敵なんだよなあ。締めのみさをさんの台詞も良いし、「クリームの君」の「貴女風月へ出かけてシュークリームの君でもお慕い遊せ」には笑ってしまった。

    “Sweet Sorrow”(p127)なこの世界にずっと浸っていたいなあ、と思う作品集だった。

  • 少女たちの愛の力強さとひたむきさが眩しかった。斜線堂有紀先生の解説も必見。

  • 読了。表題作の返らぬ日と賛涙頌が好き。
    特に返らぬ日ではあるが、全編通して少女たちのプラトニックで美しい愛が描かれていて、女性同士の関係として理想とも言えるものが見られて満足。
    また当時の時代背景も当たり前ではあるが色濃く書かれていて、女学校という閉じられた園の美しさ、結婚という決められた結末がある少女たちの切なさ…みたいなものを強く感じた。

    返らぬ日では彌生とかつみの柔らかく優しい日常を描いた部分があるからこそ、最後の結末には思わず涙してしまった。

  • ひたむきに愛し合っているのに一緒には生きていけない表題作のふたりを思うと胸が苦しくなる。
    この作品が刊行された時代を思えば少女の行く末は決まっているも同然だけど、かつみと彌生のように想い合いながらも離れるしかない、まさに徒花にならざるを得なかった少女たちがいたのかもしれない。

  • 全編これ吉屋信子!という一冊。まずタイトルからしてしびれた。「返らぬ日」ときたら、『花物語』の冒頭にあったあの一文がぱっと思いだされる。
    「返らぬ少女の日の ゆめに咲きし花のかずかずを いとしき君達へおくる。」
    横文字多めの女学生たちの会話にうっとり。表紙も素敵だった。

  • これこれこういうのが読みたかったんだよ!な百合でした。
    表題作「返らぬ日」、女学生2人の出会いと別れ。吉屋信子だしタイトルからもう……ね?愛は不敗だが、必勝とは限らない……。
    個人的に刺さったのは「裏切り者」で、ラストの一節がとても印象的でした。

  • 文体が現在とは違うのでなかなか読みにくかったが、友情、思慕、独占欲、憧れ、恋心などいろいろな感情が見てとれた気がする。

  • <学生コメント>
    女の子同士の恋愛がまだ認められていなかった頃。少女たちの恋愛模様と葛藤が切なく描かれています。

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著者プロフィール

1896年、新潟市生まれ。52年「鬼火」で女流文学賞、67年菊池寛賞を受賞。『花物語』『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』『女人平家』『自伝的女流文壇史』など、幅広いジャンルで活躍した。著書多数。73年逝去。

「2023年 『返らぬ日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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