- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309461496
作品紹介・あらすじ
オリーヴが繁り、ラヴェンダーが薫る豊かな自然。多彩な料理とワインに恵まれた食文化。素朴で個性的な人々との交流。本当の生活、生きる歓びを求めてロンドンを引き払い、プロヴァンスに移り住んだ元広告マンが綴る珠玉のエッセイ。BBCがTVドラマ化し、NHKでも放送されて話題を呼んだ、世界的ベストセラー。一九八九年度イギリス紀行文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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世界中のプロヴァンスブーム火付け役となった本。広告業界を経てロンドンで作家となったピーター・メイル。何度か訪れていたプロヴァンスがすっかり気に入り、夫婦で移住することに。古い農家を購入し、改築。工事にやってくる職人、近隣の農夫、村の人たちとつきあいながら、プロヴァンスに溶け込んでいく様子が、1月から12月までの月ごとに描かれています。オリーブが繁り、ラベンダーが香る豊かな自然。おいしそうな料理とワイン。日々の生活を最大限に愉しんでいる人たちの姿は、まさに人生の楽園そのもの。ブームになったのにも納得。
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すごく有名な本(らしい)で,プロヴァンスに関する文章に何度も出てきてたのを,やっと読みました.
思っていたよりもずっと地に足がついた,生活感あふれる内容.それがとても面白かった.フランスの,プロヴァンスの文化・習性に苦労しつつも,全体的にはその生活を満喫しているのがすごくよく分かって,いいなーと素直に思えます.これは確かに人気が出るのが分かるな,という本でした. -
-イギリス人はなにしろ消化器が弱く、どこへ行っても下水のことばかり気にしている-
「南仏プロヴァンス」といえば、「陽光溢れる自然」「ラテン気質の純朴な人々」を想像するのでは?そこからいくと、初めの一行で、この作者が「異邦人」であることがわかる。だって文体・文章がイギリス人(理屈っぽくて、シニカル)っぽい!観光ガイドブックとして、名物チェックだけでなく、「ヨーロッピアンキブン」の追体験ができるのが良い。 -
感想
春の空気が鼻腔をくすぐる。そんな小さな喜び。都会では味わうことができない。人が自然の一部であることを思い出す。風の変化に心を踊らす。 -
プロヴァンスブームの火付け役となったエッセイ。1990年ごろは映画や雑誌などあちこちでプロヴァンスが取り上げられていてだいぶチャラいイメージがあったのですが、須賀敦子が書評でとりあげていたので、どこにもgo toできない今、気分だけでもと読んでみました。
イギリスで広告の仕事をしていた著者が何度か旅行して憧れていたプロヴァンスに移住し、最初の一年間を綴っている。この観光客でもなく、地元民にもなりきっていないという距離感のある視点がちょうどいい。
期日のまったく守られない工事、予想外に寒い冬など、苦労話もあるものの、基本的にはマイペースかつ堅実なプロヴァンス人たちとの交流が楽しい。これは著者が別荘にやってくる旅行者ではなく、ちゃんとプロヴァンスで暮らしていこうとしているから異国人であっても受け入れられているんだと思う。
自分の土地にある葡萄畑からの収穫を1000リットルのワインで受け取るとか、近所のおいしいビストロ、パン屋など、飲み食いしている話がたくさん出てきて、ワイン好きではない私でもうらやましくなる。
名前しか知らなかったようなイギリスの友人たちが、宿と食事と観光の足を目当てにいきなり電話をかけてきて訪ねてくるとか、いろいろありそうなのもおもしろい。
この本が出版されたのが1989年(日本語訳が1992年)。映画やドラマにもなり、プロヴァンスブームを引き起こしたことで、この土地の良さは失われたりしてないのだろうか。著者はその後何冊かプロヴァンス関連の本を出し、2018年死去。『南仏プロヴァンスの25年』という本も出てるのでこちらも読んでみたい。
以下、引用。
プロヴァンス人にとって、雨は自然が人に加える個人攻撃である。
ウサギを愛玩したり、アヒルに情が移ったりというのは都会人の感覚である。
プロヴァンスの田舎では、禽獣の死と食卓は直接結びついている。
肉屋は肉を売るだけではない。私たちの後ろに客の列が長く伸びるのもお構いなしで、その肉をどう料理して、盛りつけはこう、付け合わせには何、酒はこれこれ、とことこまかに講釈しないと気が済まない。
墓地はたいてい村で一番眺めのいい場所にある。ある老人がそのわけを説明してくれた。「死んだ者は特等席だ。なんたって、この先長いことそこにじっとしているんだから」老人は自分の冗談に大笑いして咳き込んだ。いよいよこの年寄りの番がきたのではないかと私は気が気でなかった。
カリフォルニアの墓地は景色のいい区画の方が平凡な眺めのところよりも値段が高い話をすると、老人は眉ひとつ動かしもせずに言った。「馬鹿は死ななきゃあ治らない。いや、死んでもだ」
「マムシに噛まれたら男は死ぬ。ところがさ、女を噛んだら……」マッソーは眉をひくひくさせて私に顔を寄せた。「マムシの方が死ぬっていうぜ」
食事を終えて仕事に戻る客たちは髭を拭いながらマダムに明日の献立を尋ねた。何かおいしいものを、と彼女は答えた。
彼らの仕事ぶりを見て以来、私の頭の中で鉢に盛られた葡萄の房と、腰痛、肩凝り、日射病の連想は切っても切れないものとなった。
メネルブの村のパン屋は気紛れで、何時に店が開くかわからない。マダムの化粧が済んだ時が開店時間だと聞かされたのがきっかけで、私たちは他所の村までパンを買いに出かけることを覚えた。
ハンターたちが大勢寄ってたかって容赦なくイノシシを撃つとはあんまりではないか、と私はマッソーに言った。
「そうは言っても、イノシシはうまいからな」マッソーは涼しい顔だった。
村では幼時のイエス選びが進められていた。年恰好のちょうどいい子供の自薦を募っているが、選考の基準は何よりも大切な場面を行儀よく勤めおおせる耐久力である。仮装行列は真夜中にはじまるからだ。
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プロバンスに住みたくなる
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日々を味わう秘訣が満載。何度でも読みたくなる美しい情景描写。池央耿さんの訳も語彙が豊かでとても読みやすかった。
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イギリス人であり、イギリス育ちの著者夫妻が、南仏に移り住んでからの12ヶ月を綴った一冊。
新しい本ではないけれど、南仏の雰囲気、人々の温かさが詰まっている。南仏といっても寒い地域があることに驚いたし、バカンスに訪れられる側の立場をとおした夏の様子は興味深かった。豊かな自然がもたらす美味しそうな食事やワイン。仕事は遅れるのが当たり前、呑気な、でも面白い、そして、食事やワインにうるさい人々。
南仏旅行の前知識本として手に取ったのだけれど、結局行かないことになったのが悔しいくらい、明るい太陽に、人々の笑顔に溢れた一冊でした。
いつか、南仏行きたい!! -
イギリス人の著者は、アメリカとイギリスを往復する忙しい毎日を過ごしていたが、あるとき、旅行で訪れた南仏に魅せられ、移住した。この著者におきた12ヶ月をとてもきれいな文章で書き纏められたエッセイです。