第二次世界大戦 4 (河出文庫 チ 3-4)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462165

感想・レビュー・書評

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  • 一ヶ月以上かけて、ようやく四巻まで通読することが出来た。
    読みづらい翻訳だったが、読む価値は存分に感じさせてくれる圧巻の本だった。
    第二次世界大戦と言えば、高校時代の世界史でざっと舐めた程度の全体像と、いくつもの映画や本で断片的に深く知っている事実しかなく、読み通してようやくすべてが繋がって胸に落とせた感がある。

    ポーランド侵攻に始まった大戦だが、その前にチャーチルがどれだけ戦争の危機を訴えていたのかは初めて知った。
    言ってしまえば平和ぼけしていた英仏の政府に対して、軍隊を強化して戦争に備えるように公然と批判を浴びせていた彼が、独が仕掛けた途端に当事者として立たざるを得なくなる皮肉な状況で戦争は幕を開ける。

    ダンケルクの撤退戦で何とか大敗を免れた英は独からの空襲に全土が晒されてしまうが、チャーチルの指導力の下で一致団結した国民は未曾有の危機を何とか乗り切る。
    思えば緒戦のこのがんばりが、英国をして最後の最後まで欧州の正義を立てて戦い抜かせたのではないだろうか。
    空襲の後は独Uボートによる大西洋上での圧力、攻めこまれて軍門に下った仏、冷ややかな態度で西欧州の戦いを見ている露、未だ参戦は先と構える米と、英国としては一人で耐え忍ばざるを得なかった戦争初期は本当につらい時期だったはずだ。
    そこを切り抜けるために国民を奮い立たせたチャーチル、本書内にもいくつか掲載されている演説は心を打つ。

    米露の参戦後は欧州全体像を念頭に置きながらの戦略立案と遂行、そこに至るまでの三国間の数々の駆け引き、このあたりの裏にも単なる政治家だけでは成し遂げることの出来ない、一級物の外交センスと交渉力、そして全軍に対する指導力と人物の大きさを伺い知ることができる。
    最後は共産主義者たちが築こうとする新しい秩序に抵抗しようと苦慮するのだが、その頃には米は共に戦った指導者は既に亡く、カイロ宣言を逆手に取り早々と手を回したスターリンを押し留める手立てもなく、有名な「鉄のカーテン」宣言とともに世界は冷戦への道を歩み出す。

    そしてそこまでの状況を当事者だった本人が、自身の主観も入れながら語っているところに本書の大きな価値が有るはずだ。

    あれだけの人がなくなり、あれだけの永い間世界を大混乱に突き落としていた第二次世界大戦を、最後には正義の勝利に導いた当人の書いた記録を読むことは、歴史を知る上では欠かせないことだと強く感じた。
    二度とあのような悲劇を繰り返さないためにも、読み継いで行かなければならない本の一つのはずだろう。
    それならば誰か、もう一度上手な日本語に訳し直して貰いたいものである。

  • 第二次世界大戦を連合国の勝利に導いた、イギリスの首相、ウィンストン・S・チヤーチルの回顧録である。
    第一刊から第四刊まで読んでみて、改めて、チャーチルの指導者としての、国際情勢の先をみる鋭さには驚かさせられる。世界の指導者でこの時代以後も、これほど世界情勢を的確に見れる人はいない。第一刊の序文で、チャーチルは第一次世界大戦の戦禍を免れて、世界に残されたものを破壊尽くしたこんどの戦争ほど、防止することが容易だった戦争はかってなかったと述べている。1936年のドイツのラインラント再占領までに対して、英、仏が断固たる意志と行動を示せば、あるいは、この戦争は防げたかもしれない。また1939年でも、スタリーンのソビエトを英、仏側に引き止めることができれば、戦争の局面は変わっていたであろう。彼は戦争末期、ドイツが降伏した後、ソ連との東西冷戦が始まることを予見していたが、米国が太平洋での対日戦の集結を残していたのと、余命わずかのルーズベルト大統領の体調も相俟って、米国に戦後の冷戦が、始まりつつあることを認識させることはできなかった。第四刊のエピローグで1946年の秋、ジュネーブで、欧州の平和には仏独両国のパートナーシップが重要であると、今のEUの設立の趣旨と、同じ考えを述べている。戦争の指揮官としては、作戦の失敗はあったかもしれないが、国際問題に対する、卓越した認識、国民を指導者として導く不屈の闘志、ユーモアのセンス、英国は、危機にあったとき、最高のリーダーを輩出したと言える。、今の日本の必要な指導者は、チャーチルのような、国際情勢に対する深い洞察力と、強靭な意志力持った人が必要であろう。

  • スターリンきゃわきゃわ

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