- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309462257
感想・レビュー・書評
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きれいはきたない、きたないはきれい。とんでもないものを読んでしまった。先に後期の『恋する虜』や政治的テキストを読んで、ジュネの光の部分の思想に触れていなければ、これら初期の(糞尿まみれのポルノグラフィともとれる)闇の世界を読み切ることができなかったろう。それが今や、その汚辱、裏切り、悪から美を掬い上げ詩情たらしめるジュネの言葉の操りに心酔しているのだから。入り組み難解で卑猥な文章もこの美しさがあれば十二分に堪能できる。これを機に、嘗て何度も挫折した『花のノートルダム』や『泥棒日記』に再チャレンジしたい。
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過激と愛があふれた物語。同性愛者ではないが違和感なく読めた。
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同性愛と矛盾と混沌の物語。「ジュネ文学の極北」。めまぐるしく展開する場面と、ちょっと油断すると妄想とも現実ともつかない描写、濃厚な同性愛描写にくらくらとする。
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ジュネ作品のなかでもとくに、ナチスがらみであることと、同性愛の性描写が露骨すぎるというので、問題視されることの多かった作品らしいのですが、うん、なるほど、って感じでした。恋人を失ったジュネがその悲嘆と苦痛のあまり、というよりむしろ哀悼と追想の想いから果てしなく繰り広げてゆく自己救済的妄想が、そのままひとつの物語りを構築してゆきます。それを書く行為そのものが、彼なりの埋葬の儀式だったのだと、そう思わされる作品でした。