- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309462684
感想・レビュー・書評
-
こ難しいけれど、エロチックな、味わいのある作品。
わたしは無宗教だが神はあると思っている。けれども真剣に考えたことがない。つまり考えたこともないことは未知。知りたい。
しかし神を信じるか、信じないかを試すのに、変態(どうしたってそうみえる)夫が妻に誰彼かまわず不倫をさせるとなぜわかるのか、変な理屈だ。しかも夫は神学の大学教授である。
読んでいるうちに、めまいがしてきたのは膨大な哲学的論であるけれども、そのめまいのうちには春本と見間違うほどの いきなりそこ(エロチズム)へいくのか!という強烈な変態の様相。
その変態老人(といっても60歳、しかし昔は…)が30歳妻の不倫状況を妄想したり、演出したりするのが微にいり細にいり書いてあること、あること!
作者自身の挿絵が数枚あるが、エロというより下手グロで、なおさら輪をかけて妖しくておかしな気分になる。
でも、それに目を奪われてはいては理解できない。悪魔の誘惑という図式ならまだわかるがそういう簡単なものではない。そんなのは映画で観たことある。尼僧に悪魔が付くとか。
そうではなくて人間が人間を試すとこうなる。とくに変な趣味のひとが。
だが、この妻は賢かった。だって最初から神を信じていなくてだまされた振りして楽しんでいて、しかも…(ネタバレになるのでやめる)
つまり、わたしもすこしは西欧の神学についておもしろく読んで解かったかなーと言う気分。まあ、そんな簡単にわかるものではないだろうけど。
解説を読むともっと違う読み方が示してある。いろいろ解釈・議論がある作品ということだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作と「ナントの勅令破棄」の二本立て。「ナント~」のほうは、ロベルトと夫オクターヴの日記が交互に記される形式、「ロベルト~」のほうは戯曲のような会話だけの部分と小説の部分が混在していて、両方を全部読み通しても、バラバラの断片を脳内で時系列に整理してどれが現実に起こったことでどこからが幻覚や捏造・想像なのか見極めるのが難しい。総じて難解でした。とくにキリスト教についての知識のない日本人には理解しがたい部分もたくさんあるし。
ざっくり表面的な粗筋を述べるなら、若く美しく活動的な女性代議士の妻を得た変態インテリ爺いが、屁理屈をこねくりまわしたあげく妻に客との不倫を強要して屈折した喜びを得るも、妻に毒殺される、といったところでしょうか。最初から最後まで、とにかくロベルトとオクターヴはバトルっています。二人の間にあるのは愛情ではなく、どちらが勝つかという戦いのみ。
フェミニストというわけではないですが女性側からするとどうしてもロベルトの肩を持ちたくなるので、この夫の、性的嗜好云々ではなく、自分の筋書き通りに妻をあやつれる、自分の思う方向へ誘導できると思っている、その思い上がりが腹立たしい。もちろんロベルトはけしてバカではないのでそれも承知でいるのだけれど、結局なんだか根底に作者の女性蔑視のようなものがある気がして、微妙に不愉快でした。 -
哀れなオクターブよ、そして欲望に忠実なるロベルトよ。
猫町倶楽部のUGイベント第3回に参加してきました。
UGだから官能小説かなって思ってたんですが、哲学に近かったですね。
オクターブはロベルトの無神論にはがゆく、色んな男をロベルトに近づけることで、
彼女をキリスト教的な考えに改めるようにあの手この手を使っていましたが、
結局は一番躍らせられていたのは、当のオクターブですね。
精神と肉体は別々なのか?この問いにあなたはどう答えますか?
久々の読書会でああでもない、こうでもないって言い合えたのはよかったな。 -
395夜
-
相反すると思われるが実は近似性のある宗教とエロティシズムにおける陶酔による自己超越の可能性を追求する夫オクターヴと妻ロベルトの壮絶な決闘。無神論者ロベルトの圧倒的な勝利。オクターヴとアントワーヌの問答の中で、人間の本性と神の本性の合一を説明する場面があるのだが、オクターヴの説明でエヴァの人類補完計画を思い浮かべた。