死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 (河出文庫 ア 13-1)

  • 河出書房新社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309467924

感想・レビュー・書評

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  • ドニー・アイカー『死に山 世界一不気味な遭難事件《ディアトロフ峠事件》の真相』河出文庫。

    1週間の海外出張で、なかなか読書が捗らなかった。4日も掛かってようやく読み終えた。

    テレビなどでも紹介された『ディアトロフ峠事件』の真相に迫るノンフィクションである。

    遭難した9人の若者たちの視点と事故現場と遺体を発見した捜索隊の視点、事件の真相を明らかにしようと関係者へのヒアリングを行い、事件現場まで赴いた著者の視点とが交互に描かれる。

    旧ソ連時代の状況や様々な制約の中で、過酷なトレッキングに挑戦した若者たちの様子、事故後の混乱などがリアルに描かれる。


    冷戦下のソ連、1959年にウラル山脈でウラル工科大学の学生を中心とした9人の若者が犠牲になった謎多き遭難事件。当時はKGBによる情報統制や様々な憶測により『未知の不可抗力』として片付けられた。

    著者は50年以上前に起きたこの事件を明らかにしようと多くの関係者へのヒアリングを行い、事故現場の調査に向かう。

    そして、明らかになった事故の真相とは……

    定価1,210円
    ★★★★★

  • 「ディアトロフ峠事件」。1959年、冷戦下のソビエトで起こった未解決遭難怪死事件。氷点下の雪山、テントから離れた地点で登山チーム9名の遺体が発見された。皆衣服や靴を脱ぎ、頭蓋骨や肋骨を骨折する重傷。遺体からは高濃度の放射能が検出。最終報告書には、「未知の不可抗力によって死亡」と記された。
    ディアトロフ峠事件の全貌と真相を描くノンフィクション。


    若く、友情と幸福に満ちていた経験豊富なトレッカーたちは、なぜ遭難し異常な状況で死亡することとなったのか?
    おそらく世界でも1,2を争うほど有名な遭難事故、「ディアトロフ峠事件」の真相に迫るノンフィクション小説です。
    正確には、遭難したトレッカーたちの様子、その後出された捜索隊たちの様子、事件の取材をする作者の記録が代わる代わる語られる形式ですので、厳密にノンフィクションとは言い難いのかもしれませんが、事件当時のトレッカーたちの様子なども日誌や病気で途中で引き返したグループ唯一の生存者の話などをもとにして推定・補完したものとなっています。

    旅の途中でトレッカーたちが撮った写真が何枚も載っており、それがまた普通の仲良し大学生グループのように笑いあったりはしゃいだりしている写真ばかりなのが悲しい。あったこともないのに、彼らの間に確かにある友情が見えるようです。

    実際に事件が起こった現地に行ったり、関係者から話を聞いたりとかなり詳細に調べている印象ですし、作者さんがその結果出した一応の結論(真相)も語られていますが、それでも実際の所真実がどうだったのかは分かりません。事実、本作(の単行本)出版後の2021年に、小規模な表層雪崩が事件の原因だとする論文もでています。
    それでも、明らかになった情報や出された結論が、少しでも遺族の方の心のよすがになればと願わずにいられませんでした。

  • 嗚呼、雪山…
    雪山に、憧れている。とてつもなく。なんというか、本当に恋焦がれている。雪の降らない場所に住み、山登り…高尾山、登山って言っても、いいのかな…という、このわたくし、わたくしは…雪山に…とてつもなく…恋慕の情を抱いている…。それは、そう…これもすべて…………闇の左手…嗚呼、惑星"冬"…

    という不純な動機で読み始めた本書。先に読んだ家族がニヨニヨしながら、読んだ?読んだ?と待っていた。やっと、読み終わりました。(一ヶ月くらいダラダラ,寝しなに読んでいた)なんとまあ…。

    アンタははやく、孤高の人を読みなさい。と言われたので、雪山読書を計画中。

  • 1959年の冬にウラル山脈での遭難事故
    直前まで、はつらつとしていた経験豊富な大学生トレッカーたちはなぜ全員死亡したのかという謎をアメリカ人が丹念に追う
    超低周波音とカルマン渦列という自然の不可抗力によるものと推測された
    事件とその推理よりも、ウラル山脈に住むマンシ族の人びとに心打たれた
    現在マンシ族を名乗るひとは多くなっているそうだがマンシ語を話すひとは少ないらしい アメリカのネイティブアメリカンのように住むところが狭められてるようだ

  • 読みにくいし、前半どうにも冗長で、よくわからない。が、自然現象として、超低周波音というものがあり、その影響が事件の原因という話は非常に面白い。現場に行くこと、一次資料を見ること、様々な論拠を現実に照らして可能性を吟味することで、真実に辿り着くのは素晴らしいと思う。
    情報にどう向き合うのかということを、考えさせてくれるもの。

    一つの視点である、学生達の旅程や人間関係を捉えるところなどは、だるかったが、それも、様々な通説(内輪揉めや痴情のもつれ)などを排除するのに重要なものなのだろう。
    ただ、欲を言えば、もっと、最後の超低周波音の話に辿り着いた契機や、そこでの対応、そしてその説の実証など(現地での計器での実測とか、ミニチュアやシミュレーションでの証明とか)に力を入れてほしかった。
    後は、もう少しミステリーの表現手法を使っていたら面白く読めたかもしれない。

  • 1959年1月、ロシア西部ウラル山脈の一帯で起きた遭難事故の真相を地道な調査で解き明かしたドキュメンタリー。ディアトロフ峠事件と呼ばれている。真冬のウラル山脈に学生登山部9名が入山後消息を断つ。1ヶ月後全員の死亡が確認された。その死に様が異様で凄惨なであったため、未解決遭難怪死事件として知られるようになる。氷点下の雪山のテントから1キロ以上離れた場所で発見された死体は、衣服や靴はなく、頭蓋骨折したものや、舌を喪失したもの、遺体から異常な濃度の放射能が検出されていた。最終事故報告書には「未知の不可抗力によって死亡」との記載で終わっている。ソビエト連邦時代に起こった未解決事件をアメリカ人である著者が真相を描いた傑作ノンフィクション。
    当時の学生がたどった状況を資料から読み解くパート、捜索隊がたどった状況を読み解くパート、現代著者が現場を訪れ調査をしていくパートが、交互に配置され真相を解明していくスタイル。
    以下真相にも触れます。


    初めて目にする「カルマン渦」「超低周波音」という言葉。特殊な地形で、ある条件が重なると発生する自然現象なのだそうだ。記憶の片隅に置いておき、気象現象について興味を持った時に深掘りしたい。
    カルマン渦列:ハンガリーの物理学者セオドア・フォン・カルマンにちなんで名付けられた現象。液体にも気体にも適用される流体力学分野の現象。

  • 写真が時折掲載されてることもあり、リアリティがあった。現代の大学生と変わらない、ありのままの様子も伝わってきて、現実に起こったことなんだと改めて感じた。
    事故の原因として著書が結論付けていることは、すっと腑に落ちたわけではなかったが、不可抗力で本当どうにもならないことが起こることも現実にあるのだと感じた。
    多くのご遺族が事故の真実を知ることなく、この世を去られてしまったということが辛い。

  • これで解決されたような口ぶりのレビューも多いが、あくまで帰結しているのは「可能性の一つ」でしかない。

    「カルマン渦」「超低周波音」は発生した可能性があるだろうけれど、本当にそれが起きたのかはまた別だ。最後の一枚に写りこんでいた「光球」が何だったのかもはっきりしていない。

    私はたっぷり…というほどではないが、冬山登山の経験はある。
    厳冬期の八ヶ岳、初冬の鹿島槍ヶ岳など。かなりの暴風と音に一晩中悩まされたこともある。そこで疑問に思う。
    ・カルマン渦や超低周波音が起きたとしても、トレッキングの経験豊富なパーティが、数時間のたった一晩の出来事で発狂したようにテントを飛び出すだろうか? アメリカや欧州で超低周波音の公害が問題視されているが、それは中長期的な影響による健康被害でたった一晩で…ということはない。
    私も他に誰もいない場所でテントを張ったときに夜中に風速15メートルになり、あるわけのないブーンという機械音に聞こえて外を確認したことがある。彼らもそういう経験は死亡した日以外にも聞いたことはあるのではないだろうか?
    ・カルマン渦でテントが潰れた説もあるが、テントを中から切り裂いたためその後の降雪でテンションがかからなくなったからではないだろうか。雪山をやる人なら、幕営地を掘り下げて雪の壁を作り、多少の風よけとすることは普通。そのためテントが半ば埋もれていたのはうなずける。また、この状況で低周波音はテントに響くだろうか?雪にぶつかり吸収されないだろうか?
    ・当時のブーツの形状は? 当時のブーツは履きにくく、また時間がかかる形状だったのだろうか。
    慌てて飛び出すにしても、雪山で靴を履かないで飛び出すことなど登山経験のあるものなら信じられないことだ。靴をひっつかんでいく、またはつかもうとする努力すらしてないのが気になる。

    幕営するときは雪崩が起きないかどうかをまず最初に考える。彼らが安全だと思った場所にも関わらず、カルマン渦や超低周波音のせいで「雪崩が起きた」と思った可能性はあるかもしれない。しかし、メンバーの多くが死亡したのは午後8時前後を湿している。雪崩は日中、太陽によって暖められて融雪する事により起きることがほとんどなので、雪崩が起きそうだとパニックになることはない。しかも、夕食は6-7時の間で、ルステムの遺体から見つかった時計は8時45分を指していたことから、テントを飛び出したときに、皆就寝していなかった可能性が高い。
    この本では言及されていないが、不思議なのはディアトロフの腕時計は午前5時31分で止まっており、彼はテントの方に向かって倒れていたという。当時の時計の精度はわからないが、彼は一番長く生きていたのだろうと思う。
    となると、もしかしてテントに近い順に倒れていた彼とジーナは先に飛び出したメンバーを追うかどうか迷っていて、遅れて探しに出たのだろうか?しかし、それであればブーツを履く余裕はあったはずなのだ。

    また、気になるのは遺体発見のときの損傷の状態がはっきり書かれていないことだ。
    リュダだけ舌が無くなっていたのは、彼女の口だけ開いていたからなのか?

    空中に飛んだ「光球」の光線で「攻撃された?」と驚き、確認しに飛び出したというシチュエーションも考えられるかもしれない。
    面白いのは、唯一途中離脱したユーディンが「当局による脅しで殺された」と考えていることだ。当時の社会や政治を肌で知っている人がそのように感じているのなら、その線は消さないほうがいいのかもしれない。
    この本を読んで、私の中ではますます疑問が膨らんでしまった。

    とはいえ当時のソ連の様子や、ソ連の大学生の意外ともいえる情熱さ、マンシ族など知らないことが知れて、筆者の体験を追体験でき、内容は面白かった。

  • 亡くなった人や今も生きている関係者の方に敬意や尊敬を持って書かれているように読めて良かった。
    もちろん自分の興味や好奇心がまずあるんだろうけど、取材を重ねてきっといろいろと感じるものがあったからこそ、こういう文章になったんだと思う。
    オチ(っていうのは不謹慎ですが)が今の時代には割と普通で「なーんだ!」ってなるようなことでも安心感と納得が得られて良い。読んでいる私もセンセーショナルなものは期待していないし、著者の方がきちんと納得できる地に足のついた結論を書いてくれたのが良かったです。
    本当のところは事故で亡くなった人にしかわからないけれど、変な陰謀論とかに亡くなった人や関係者の方が巻き込まれたり嫌な気持ちになるんだったら、こうやって一旦結論を出した方が腑に落ちるのではないかなあ、と他人事ながら思ったり。
    タイトルはちょっと扇情的だけど、最後の再現ドラマならぬ再現小説は優しくて素敵な書き方だなあと思いました。

  • 単行本が出たときから気になっていて、やっと読めた。
    気になりだしたらとことん調べずにはいられない人の手による誠実な記録でありました。
    旧ソ連というだけで、何やら陰謀めいたものを勝手に想像していたことを反省。

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著者プロフィール

フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

「2018年 『死に山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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