- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309624686
感想・レビュー・書評
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【30年総ざらい】政治,経済,社会,そして情報通信等の分野に至るまで,複数の専門家によって平成の約30年間に起こった出来事をまとめた作品。分量の多さと比例して濃密かつ膨大な情報が詰まった一冊に仕上がっています。著者は、『1968』や『<民主>と<愛国>』等で知られる社会学者の小熊英二他。
平成に関する作品は数あれど,データを積み重ね,ある意味「教科書的」にまとめあげた作品として評価できる作品。そのため,決して読みやすい訳ではないのですが,総合的かつ多角的に平成について振り返りたい方には特にオススメです。
〜「平成」とは、一九七五年前後に確率した日本型工業社会が機能不全になるなかで、状況認識と価値観の転換を拒み、問題の「先延ばし」のために補助金と努力を費やしてきた時代であった。〜
ただ決して難解な文章ではないこともあり☆5つ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の1人、小熊英二さんは日本を代表する歴史社会学者です。数々の著書で膨大な資料を読み解き、鋭い指摘をしています。政治、経済だけでなく教育がどのように変化しているのか、その背景には何があるのか。教壇に立つ前に知っておくと良いと思います。T
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【版元】
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309624686/
【簡易目次】
序文(二〇一四年一月 小熊英二) [003-008]
目次 [009-011]
◎総説 「先延ばし」と「漏れ落ちた人びと」〔小熊英二〕 013
◎政治 再生産される混迷と影響力を増す有権者〔菅原琢〕 099
◎経済 「土建国家」型利益分配メカニズムの形成、定着、そして解体〔井手英策〕 177
◎地方と中央 「均衡ある発展」という建前の崩壊〔中澤秀雄〕 217
◎社会保障 ネオリベラル化と普遍主義化のはざまで〔仁平典宏〕 267
◎教育 子ども・若者と「社会」とのつながりの変容〔貴戸理恵〕 365
◎情報化 日本社会は情報化の夢を見るか〔濱野智史〕 431
◎外国人 包摂型社会を経ない排除型社会で起きていること〔韓東賢〕 467
◎国際環境とナショナリズム 「フォーマット化」と擬似冷戦体制〔小熊英二〕 499
【目次】
序文(二〇一四年一月 小熊英二) [003-008]
目次 [009-011]
◎総説 「先延ばし」と「漏れ落ちた人びと」〔小熊英二〕 013
工業化時代の想像力 014
ポスト工業化 018
福祉におけるポスト工業化社会のバリエーション 021
移民と地方経済 026
「日本型工業化社会」の成立 032
バブル期から九〇年代へ 044
政治の推移 053
「中流崩壊」と「ゆとり教育」 065
女性労働と少子化 072
「格差」と「地方」 076
現状認識の転換を 083
註 090
◎政治 再生産される混迷と影響力を増す有権者〔菅原琢〕 099
1 本章の目的と構成――平成の政治を如何に捉えるか 100
2 平成の政治史 102
(一) 自公民路線と政治改革運動 (1989~93年) 106
(二) 選挙制度改革と政界再編 (1993年~96年) 108
(三) 民主党の伸長と自民党の危機 (1996年~01年) 111
(四) 小泉政権と構造改革 (2001年~06年) 114
(五) 末期自民党政権の迷走 (2006年~09年) 117
(六) 民主党政権とねじれ国会(2009年~) 120
3 日本政治の変化 123
(一) 政党と政治家 125
一党優位体制の崩壊/終わらない政界再編/派閥・党内グループの軟化/政治家の流動化とリーダーシップの動揺
(二) 有権者とメディア 135
選挙結果の流動化/都市部有権者の影響の増大/政党支持の流動化/内閣支持率の乱高下と世論調査政治/変わらないメディアの政治報道
(三) 制度改革と政策 146
政治改革の目的と成果/行政改革と首相のリーダーシップ/政策課題の先送り
4 日本政治の混迷構造 151
(一) 政権の不安定化と混迷の再生産 153
政治を見放す冷めた世論/政府に抵抗する与党/妥協を拒み対決を志向する野党/日本政治混迷の循環構造
(二) 混迷脱出の方向性 158
5 有権者が決定権をもつ現代日本政治 161
註 164
謝辞 176
◎経済 「土建国家」型利益分配メカニズムの形成、定着、そして解体〔井手英策〕 177
はじめに――統治の全体史として平成の経済政策史を描く 178
1 平成経済政策史・前史――プロト土建国家の枠組み 179
2 全面開花した土建国家―― 一九九〇年代に何を受け継ぎ、何が変わったのか 186
相次ぐ景気対策、そして国債発行の環境整備186
揺らぐ戦後経済政策史の前提条件189
3 経済構造の転換――見いだされない脱土建国家の統治モデル 194
経済が地殻変動を起こした194
国際的な資金循環に飲み込まれた日本経済199
小泉構造改革と民主党政権の歴史的意味202
おわりに――世界金融危機、そしてアベノミクスへ 207
註 213
◎地方と中央 「均衡ある発展」という建前の崩壊〔中澤秀雄〕 217
はじめに――「中央」対「それに含まれないもの」218
平成の中央‐地方関係
1 空間ケインズ主義と都市圏立地政策 225
地域開発の二つの顔
角栄式リスク補償政治
「都市圏立地政策」への静かな転換
「地域間格差」の諸側面
2 中央‐地方関係の昭和史・平成史 237
昭和後期の中央‐地方関係
昭和後期の「地方国」
夕張の事例
補償政治の終焉
平成の市町村大合併
大都市起点のリスケーリング
「山と海」の自治力
3 まちづくり運動の水脈 253
4 結論 259
註 262
◎社会保障 ネオリベラル化と普遍主義化のはざまで〔仁平典宏〕 267
1 はじめに――課題と枠組み 268
「喪失の時代」のあとで
日本に「ネオリベラリズム」概念は使えるか
本章の枠組み
時期区分について
2 昭和と日本型生活保障システムの成立 275
昭和I期(1926年~1945年)
昭和II期(1945年~1973年頃)
昭和III期(1973年頃~1981年頃)
昭和IV期(1981年頃~1989年)
3 平成I期――日本型生活保障システムの終焉 288
生産/再生産レジームの変容
平成I期の社会政策
少子化対策としての育児政策
介護保険と年金
平成II期への助走
4 平成II期――日本版ネオリベラリズムのゼロ年代 297
劣化する雇用
雇用の「ネオリベラルルートとその影響」
ゼロ年代の育児政策――ネオリベラル化と脱ジェンダー化の交錯
リスク化する高齢者福祉
格差と再分配
「格差ではなく貧困の議論を」
ワークファーストの失敗(1)――ホームレス/ネットカフェ難民
ワークファーストの失敗(2)――母子世帯
ワークファーストの失敗(3)――障害者自立支援法
平成II期とは何だったのか――〈神学なきネオリベラリズム〉の両義性
5 平成III期――脱ネオリベラリズムの模索 320
平成III期とは何か
社会投資国家
非正規雇用の就労支援――アクティベーションへの細道か
社会的包摂への四つのポイント
少子高齢化への対応――医療と介護の抑制・子ども手当・保育制度改革
どんな論理で「一元化」するか
ユニバーサルな社会
平成III期が提起したこと
6 平成IV期――「平成的なもの」の終わりと反復 332
転移される対立軸
脱デフレという問題系
賃上げ・ブラック企業対策・消費税増税――デフレ脱却と社会政策
普遍化主義の隘路と社会保障制度改革
ネオリベラル化の隘路と生活保護「改正」
ネオリベラル化の隘路と雇用政策
雇用のネオリベラル化は進んだのか
夢の出口で
註 350
◎教育 子ども・若者と「社会」とのつながりの変容〔貴戸理恵〕 365
はじめに――日本的移行過程における「メンバーシップ主義」 366
1 学校と企業が成功しすぎた社会 371
はじまりの明治
第二次世界大戦後の「平等=画一的」な中等教育の整備
新卒者の「学校から仕事への移行」の整備
能力主義における学校と企業の連続性
「学校・企業=社会」の誕生
対抗言説の存在
2 新規学卒就職の揺らぎと若者労働市場の悪化 388
綻びの発生
誰もが漏れ落ちうる
特定の存在が漏れ落ちやすい
「問題化されない」という差別
変化のまとめ――メンバーシップ主義の揺らぎと残存
3 対策 405
若者雇用対策
教育改革
一九九〇年代~文部省主導の「ゆとり」改革/二〇〇〇年代~新自由主義の教育改革
4 結論――学校と企業に限定されない「社会」の展望 415
「メンバーシップ主義」における利点・欠点のまとめ
失われる「利点」、顕在化する「欠点」
「必要最低限」の確保へ
対抗言説の可能性へ
註 425
◎情報化 日本社会は情報化の夢を見るか〔濱野智史〕 431
1 問題意識と本論の構成 432
2 インフラ層の情報化 434
平成以前
平成以降
なぜ急速なインターネット・インフラの整備に成功したのか?
3 アプリケーション層の情報化 443
「夜」の領域とインターネット
「昼」の領域その1:情報化と経済領域
ミクロ視点:日本のインターネット・ビジネスは「タイムマシン経営」/マクロ視点:なぜ日本経済は情報化の恩恵を蒙らないのか?
「昼」の領域その2:情報化と政治領域
電子公共圏という夢、匿名サイトとの戦い/情報化と政治領域の実際
4 まとめ――日本社会は情報化の夢を見ることができるか 462
註 465
◎外国人 包摂型社会を経ない排除型社会で起きていること〔韓東賢〕 467
1 はじめに 468
2 「多文化主義なき多文化社会」としての「平成日本の排除型社会」 470
3 日本の外国人政策――冷戦下の切り捨て、外圧とプライドによる譲歩 472
「多民族帝国」から「国民国家」へ
転機をもたらしたインドシナ難民
4 九〇年代日本の外国人政策――経済大国化となし崩しの「多文化社会」化 477
「国際化」のかけ声とバブル景気
建前維持の陰で開けた「三つのドア」
5 二〇〇〇年代日本の外国人政策――「包摂」への模索と新たな「排除」 481
移民受け入れへの「熱気」
多文化共生と治安維持、その矛盾の産物
6 おわりに 487
象徴としての「朝鮮学校」
「多文化主義なき多文化社会」の行方
註 493
◎国際環境とナショナリズム 「フォーマット化」と擬似冷戦体制〔小熊英二〕 499
1 従来の史観 500
2 「ピラミッド型」から「フォーマット化」へ 504
3 冷戦後の国際情勢の変化 511
4 安全保障の変化 519
5 戦後日本の安全保障体制 528
6 疑似冷戦体制の構築 537
7 対アジア外交と象徴的国益問題 547
8 「ナショナリズム」をめぐる状況 544
9 結論 568
註 570
平成史略年表 [i-vi] -
小熊英二先生の監修の本なので読んだ。
冷戦後の、日本社会の衰退が、よく分かる。
悲しいけれど。 -
151017 中央図書館
じっくり読むと、かなり濃密。人口、地方問題、経済、情報技術の発達、国際関係などの面で、平成の20年あまりに何が起こってきているのかを記述しようとする試み。
現代では、これほどの広範な問題に対して、一つのビジョンや見取り図でプレステージを持って語り得る「知識人」は存在しない。経済問題一つとっても、通常のジャーナリストや学者では手にあまるだけの材料がある。したがって、この本のようにいろいろな学者の視点からのオムニバスという形でしか記述できないようだ。