大衆運動

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314009355

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  • 社会
    哲学

  • 平成30年5月26日

  • ユダヤ教、キリスト教の発生から、フランス革命、ソヴィエト共産党、ナチスドイツまで、政治的、宗教的、民族的なあらゆる人間集団の構造と心理を大衆運動という視点で洞察した20世紀を代表する思想書。哲学、社会学、歴史学、心理学と様々な領域で読み継がれる。逆読みすれば経営組織論としての示唆も汲取れるだろう。少年時代視力障害にあったホッファーはまともな教育は受けておらずすべて読書による独学によってこれらの論考を構築していった。どんな大衆運動も現状社会への欲求不満から起こり新しい世界への狂信を鼓舞する。推進役となるのは、不適応者・利己主義者・野心家・少数派・貧困者・退屈している人・罪人などだ。彼らは社会の上層部と下層部に位置し、変化を好まぬ中流はやむなくあとからついてゆくことになる。
    スターリニズムとナチズムの分析が主体となるので、ほとんど語られていない個人を尊重する自由の国アメリカ称揚があぶりだされてくる。
    しかし最後には社会の変革には大衆運動の必要性も説かれる。リンカーンやガンジーのような権力欲のないまれな指導者の出現にその希望が託されているようだ。
    ホッファーは60年代アメリカに発生したヒッピー・ムーブメントには「成熟できない子供たちの群れ」と冷淡だったそうだ。快楽主義と安直な自然回帰が受け入れられなかんだのではないかと思う。

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著者プロフィール

エリック・ホッファー(Eric Hoffer)
社会哲学者・港湾労働者。1902年7月26日、ニューヨークのブロンクスにドイツ系移民の子として生まれる。7歳のとき母と死別、同年に突然失明。15歳で視力が回復。一切の学校教育を受けていない。18歳のとき父の死により係累をすべて失い、ロサンゼルスへ渡る。以後、日雇い労働者として過ごす。28歳のとき自殺未遂をきっかけにロスを離れ、その後10年間カリフォルニア州中を季節労働者として放浪生活をしながら、先々の町の図書館に出入りし独学を続けた。1941年から67年までサンフランシスコで港湾労働者として働き、読書と思索の日々を送る。64年よりカリフォルニア大学バークレー校で、週に1度政治学を講義。51年に出版された処女作『大衆運動』は世界的なベストセラーとなる。67年テレビ出演を機に全米でホッファー・ブームが巻き起こった。1983年5月20日死去。大統領自由勲章受賞。著書『波止場日記』、『大衆運動』、『現代という時代の気質』ほか。

「2003年 『魂の錬金術 全アフォリズム集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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