「日本列島改造論」と鉄道 (交通新聞社新書161)

著者 :
  • 交通新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784330030227

作品紹介・あらすじ

“庶民宰相”として名を馳せ、ロッキード事件で逮捕されるも、死してなお注目を集める田中角栄。1972(昭和47)年6月に「日本列島改造論」を発表し、2022(令和4)年で50年を迎える。記念すべき年となる今年、交通事業をはじめとした多岐にわたる改革案を示し、是非が問われてきた「日本列島改造論」の、なかでも鉄道政策について再考する。角栄が訴え続けた地方ローカル線の再評価や、高速新幹線ネットワークの拡充など内容を振り返り、現在の鉄道政策に与えた光と影を浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • まず私の生まれは旧新潟3区であり、田中角栄を選出した選挙区である。私が中学生のときに政界は引退しており、原体験としてはほとんどないのだが彼の正・負両面の遺産を感じながら育ってきた。大学時代に「日本列島改造論」を古本屋で買って読んだのも覚えている。昨今、JR各社のローカル線の赤字が改めてクローズアップされている。コロナ禍が拍車をかけた面もあるのだろう。今年は日本の鉄道開業150年の節目でもある。そんななかふと見つけたのがこの本だった。

    田中角栄の持論は特に地方では赤字でも鉄道は維持するというもの。その思想は当然「改造論」にも反映されていた。

    だが国鉄の末期は赤字路線の廃線が相次ぎ、彼らが主導した上越・東北新幹線開業の後から、JRになり整備新幹線の計画は一時的に停滞する。その後、長野、九州、北陸、北海道など開業はしたが、東京への集中が進み、在来線は第三セクターとなり地元民にとっては不便なものになり、貨物輸送の柔軟性も奪われつつある。災害時には最後の点はクローズアップされる。彼の思いとは逆に「国土の均衡ある発展」とは逆に向かっている面は否定できない。

    筆者は最後に、「鉄道を平時のビジネス感覚のみで捉えるのではなく、非常時にも機能させるべき公共の社会資本と考えるならば、財政面も含めた公的機関の関与や制度の充実は不可欠」と説く。国鉄の国鉄民営化とJRの誕生により効率性優先で生活が豊かになるという「正」の面ばかり見てきた世代には戸惑う面があるかもしれない。だが、今なお交通政策に影響を与えている角栄の主張を通じ、改めて鉄道とは、公共交通とは、社会資本とはを考える好機になると痛感した。

  • 政治家に求めることは何か。
    細かい施作も大事だが、全体を俯瞰して国としての政策を立てること。

    交通を中心に日本の全体的発展を立案できた稀有な政治家。

    現代にその遺産は活用されているが、もうダメかもしれない。長年公明党に国土交通大臣を取られているのはなぜなのか

    読了50分

  • 田中角栄の『日本列島改造論』が刊行されたのが1972年。そこから50年後となる2022年に、同書をベースとして、旧国鉄からJRに至る日本の鉄道事業の変遷を語る。同書中には「新幹線ができた区間では通勤、通学以外の旅客運送の大部分を新幹線に移し、在来線の輸送力を貨物輸送にあてる」べきと説かれているが、貨物輸送と旅客輸送をいかに併存させるかというこの視点は新鮮だった。コロナ下の折、鉄道旅客輸送は危機的状況にあるが、貨物輸送手段やエネルギー危機下のライフラインの意味も含め、ひとつでも多くの路線が残されて欲しい。

  • 田中角栄の列島改造論に書かれている鉄道の施策について、その後の50年間の鉄道の歴史と照らし合わせて列島改造論の影響の有無を答え合わせしていくような感じの内容でした。
    新幹線は1985年までにやるはずのことが2045年までかかりそうですが一応目標達成なんでしょうかね。行政が一度決めたことを変更することが難しいというのは承知してますが、民営化という大変革をしても新幹線は変更されずというのは言われてみる驚きで、変革の難しさを改めて感じます。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/777799

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著者プロフィール

昭和50年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業科学専攻博士後期課程単位取得退学。日本及び東アジアの近現代交通史や鉄道に関する研究・文芸活動を専門とする。平成7年、日本国内のJR線約2万キロを全線完乗。世界70ヵ国余りにおける鉄道乗車距離の総延長は8万キロを超える。平成28年、『大日本帝国の海外鉄道』(現在は『改訂新版 大日本帝国の海外鉄道』扶桑社)で第41回交通図書賞奨励賞を受賞。 『鉄道と国家──「我田引鉄」の近現代史』(講談社現代新書)、『旅行ガイドブックから読み解く 明治・大正・昭和 日本人のアジア観光』(草思社)、『宮脇俊三の紀行文学を読む』(中央公論新社)、『アジアの停車場──ウラジオストクからイスタンブールへ』(三和書籍)、『「日本列島改造論」と鉄道──田中角栄が描いた路線網』(交通新聞社新書)など著書多数。日本文藝家協会会員。

「2022年 『アジアの一期一会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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