アウトサイダー・アート (光文社新書 114)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334032142

作品紹介・あらすじ

「アウトサイダー・アート」とは、精神病患者や幻視家など、正規の美術教育を受けていない独学自修の作り手たちによる作品を指す。20世紀初頭にヨーロッパの精神科医たちによって「発見」されたこの芸術は、パウル・クレー、マックス・エルンスト等の前衛芸術家たちにも多大な影響を与えた。戦後には、フランスの画家ジャン・デュビュッフェがヨーロッパ各地から作品を収集し、それを「アール・ブリュット(生の芸術)」と呼んで賞賛したことから「価値」が高まった。近年、日本でもそれらの作品への関心が急速に高まりつつある中、モダン・アートが置き忘れてきた「もうひとつのアート」の魅力に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA63659632

  • 37898

  • 偶然書架で目にして。以前世田谷美術館で展示を見て以来興味のある世界。

    アウトサイダーアートは決して「障害者が作る作品」と同義語ではないことは肝に銘じるべきだろう。美術教育の功罪についても考えさせられる。

    P51 「私が作品を描くときには、一握りの専門家を喜ばせようなどとは思っていません。それよりは、仕事を終えて通りを歩いている人を楽しませることができれば」デュビュッフェ

    P55 アウトサイダーアートは、社会の内部にいる者が、そのシステムに安住しないこと、確立された制度に疑問を持つことの大切さを教えてくれる(中略)私たち一人ひとりが茶金(はてなの茶碗)の心を養うことで、アウトサイダーアートの世界は豊かに広がる。

  • 【資料ID: 1117000864】 702.07-H 44
    http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA63659632

  • 以前から読みたいなと思っていた本。
    この度、兵庫県立美術館で「アドルフ・ヴェルフリ展」を観て、そして斎藤環氏の記念講演を聴いて、このタイミングで読むことのセレンディピティを感じつつ読了。
    自分自身、アウトサイダー・アートに対しての理解について曖昧なところもあり、いろんな視点で確認でき、とても勉強になった。
    それと併せて、著者の静かで実直で、そしてアウトサイダー・アートに対しての愛に溢れた眼差しに安心感と信頼を感じながら読むことができたことが良かった。
    筆者があとがきで、アートを体験するには自分自身にも心の余裕がないといけない、ということを書いている。
    「作り手が真剣勝負で挑んだ表現には、それを見る側も万全の体調と精神状態で臨まなければ太刀打ちできないと思う。」という言葉に妙に納得。
    安藤忠雄氏による兵庫県立美術館の建築についても、いろんな意見を聞くことがあるが、私的には気に入っている。迷路みたいでわかりにくいという声もわからなくもないが、なんかそういう面倒臭いところも含めて愛着を感じる存在だなと思っている。
    私自身、いわゆるアウトサイダー・アートについて、「障害のある人が作った作品」というような認識をしていたが、そういうものではなく、純粋に観てとても面白い表現に満ちていると思うことが多い。
    そもそも表現とは何だろうか?人間ってなんだろうか?ということをこれからも考えて行くことになる訳で、これからもやはり考え続けて行くのでしょう。
    その際に、この本や展覧会での活動が、それぞれの人の考え始めるきっかけになれば幸いだなと思います。

  • 「アウトサイダーアート入門」と比較すると衝撃は少なめ。淡々とアウトサイダーアートについて俯瞰的な視点で語られている。表現欲求に突き動かされて描かれた絵はたしかに胸を打つ。一方、アカデミックな場所で絵を学んだ人の職工的な絵画も素晴らしいとも思う。しかしアウトサイダーアートがプリミティブな欲求によって描かれた作品である限り、鑑賞する我々は衝撃を受け続けるのだろう。

  • ヘンリー・ダーガーから興味を持ち、
    単純にアウトサイダーアートと呼び習わしていたが、
    倫理や教育の問題が微妙に絡み合ってくるということを知った。
    アール・ブリュット、エイブル・アートという呼び方も。

    なにぶん創作者が自ら世の中に提出することが少ないので、誰かが「発掘」して提出しなければならない。
    そのときにアウトサイダーという、ややもするとスキャンダラスな側面も含む言葉によって、強い印象を残すほうが、
    完全に忘れ去られてしまうよりよい、と思う。

  • 純粋に、自分のためだけに創作活動を行う、アウトサイダーアートというジャンルがよく分かる。

  • ルソー展の予習に。この薄さでここまで魅力的な情報を詰め込んだ本には久々に出会った気がします。美術が好きな方は誰でも一読の価値ありと思います。惜しむらくは紙幅の関係上仕方ないとはいえ、20世紀頭くらいの西欧と日本以外の話題がないこと、あと図版が小さいために作品の様子がよくわからないことです。とはいえアウトサイダー・アートというこの曖昧なジャンルをこよなく愛する筆者の熱は十分に伝わります。特に日本の美術教育の問題への言及には共感してしまいます。また昔から裸の大将が放送されるたび???となっていた身としては、この本の記述は納得いくものでした。
    ローザンヌにあるというデュビュッフェのコレクション(美術館、ではない)、見てみたくなります。

  • この本ではアウトサイダーアートの起源から、日本での歴史などがわかりやすく説明されている。アウトサイダーアートという特異な視点。芸術とは何なのか?本質を問いかけてくる。結局芸術は、優劣がつけがたく、その人の感性によるものであり、有名になる作品は会うべき人に会えたかどうか、なのではないか。 とはいっても完全に自由なわけではなく、何かの基準にそって色眼鏡でしか見れないのだろうけど。しかし、少しでも、当たり前の現実というものに風穴を空けるのが、現代のアウトサイダーアートの立つ位置。 目利きのある人によるプロデュースが重要な鍵を持つ。その作品そのものにとって。

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著者プロフィール

甲南大学文学部人間科学科准教授。兵庫県立美術館学芸員、横尾忠則現代美術館学芸員を経て現職。アール・ブリュット/アウトサイダー・アート研究の第一人者として、その紹介と研究を精力的に行う。主な著書に『山下清と昭和の美術』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『解剖と変容:アール・ブリュットの極北へ』(共著、現代企画室、2012年)、『アウトサイダーアート―現代美術が忘れた「芸術」』(光文社新書、2003年)など。

「2018年 『日本のアール・ブリュット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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