人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」 (光文社新書)
- 光文社 (2015年5月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334038564
感想・レビュー・書評
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複数の人格を意識して使い分ける。才能とは人格や性格のこと。隠れた人格を育てると才能が開花する。
身近な仕事ができる人がどのように人格を切り替えているか、自分は人格を切り替えることができているか観察していきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「多重人格」を実践的に行うことで様々なシーンで活用できるということの重要さと実践的なプロセスについて書かれている本。
多重人格を精神患者(行動忘却)という考えではなく、様々な人格を引き出して"育てる事"を目的とした内容になっています。 -
いわゆる精神分析における多重人格とは違い、色んなペルソナを有効活用することを説いた一冊。
実践的でわかりやすかった。 -
田坂氏と弟子の対談形式で進むため、読みやすい。大人になればそれぞれのシーンで「ロール」を演じるという基本的な話が中心。優秀な人ほど演じ分けがうまいようだ。
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自己分析がしっかり出来ている人が強い。弱い部分も含めて。
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■一流の経営者や歴史上の天才は「多重人格」
経営者は、様々な人格を持ち、場面や状況に応じて自在に使い分けることが高度に求められる職業。
またレオナルドダヴィンチや空海も、多重人格のマネジメントを適切に行い、
隠れていた人格と才能を開花させた。
■才能の本質は人格
・誰もが複数の人格を持っている。
そのことを自覚し、置かれた状況や立場によって「異なった人格」で対処するということを意識的に行うならば、
自然に「さまざまな才能」が開花する。
・ビジネスの世界や実社会での仕事において求められるのは、
「人の心」に処する力。
なので、この世界で求められる「才能」のほとんどが、
「人格」や「正確」と、密接に結びついている。
(営業の顧客の気持ちを感じ取る力⇒顧客の言葉のニュアンスや表情、仕草の変化を感じ取る細やかな人格、の才能が支える)
■様々な人格を育てる基礎練習
・メール、電話
・企画会議
「始め民主主義、終り独裁」
アイデアやコンセプトを話している間は「楽しくリラックスした人格」「肝要で前向きな人格」。
アイデアキリングせず、できるだけ自由な発想が出るような雰囲気を大切にする。
アイデアが出尽くした頃を見計らい「厳しさと緊張感のある人格」「慎重で現実的な人格」に切り替え、リアリティチェックをしていく。
最後に「独裁者」の人格で、エレガントな強引さをもって議論をまとめる。
■表の人格「ペルソナ」が妨げる、才能の開花
それぞれの立場において意識的・無意識的に選んでいる「表の人格」。
ペルソナが硬い問題と、本来持っている「様々な才能」のうち、「ペルソナ人格」以外の多くの人格を、
深層意識で抑圧してしまい、才能が開花できなくなる。
■才能の開花は「深層意識」で起こる
・深層意識に、恐怖心や不安感など「否定的な想念」や「マイナスの想念」があると、
人間の能力は抑え込まれ、能力が「萎縮」されてしまう。
・なぜ「深層意識」なのか?
心の世界は「あまのじゃく」。
深層意識は、しばしば「表層意識」が思っていることと逆のことを思う傾向がある。
心の世界は「電気の世界」と同じで、「プラスの想念」だけが発生するのではなく、
同時に「マイナスの想念」も発生してしまう。
表層意識が「できる」と思えば思う程、
深層意識は「できない」と思っていく。
■深層意識にプラスに働きかけるには?
・日々使う「無意識の言葉」の怖さを理解し、使い方を工夫する。
この言葉こそが、無意識の世界に浸透し、強く働きかける。
・「世界を二分してしまう」怖さ(世界の分節化)
技術屋と事務屋。
・優しい課長の深層意識。
「細やかに部下の気持ちを感じ取る力」などの才能は開花されるが、
「部下を強引に牽引する力」「リスクをとって直感的判断」をする力は
開花されない。
■性格診断の真の意味
日々の仕事や生活において被っている「ペルソナ」としての人格と正確を診断している。
「対人関係」や「社会生活」におけるアドバイスに対しては、
謙虚に受けとめて考えることは大切だが、
「待てよ、自分にはこの診断とまったく異なる性格があるぞ」といったことを考えてみるのが大切。
■マネジメントやリーダーシップの本質は「矛盾」
マネージャーの成長とは、ある意味「矛盾」に処することのできる「多重人格」になっていくこと。
優れた経営者は、例外無く多重人格。
「大胆にして、細心にあれ」
「思い立ったが吉日」「急がば回れ」
■深みのある人物は多重人格。
思想とは、現実の人生の中で、人間関係の中で、組織の中で、社会の中で、
それを「生きる」ために、目の前の現実と格闘したとき、
初めて「生きた思想」になり「真の思想」になる。
「深い思想」を持った人物は、個人、対人、組織、社会、世界、地球と言った、
「様々なレベルの思想」を生きているがゆえに、
その思想のレベルに応じた「様々なレベルの人格」を持っている。
■隠れた人格と才能を開花させるには?
・誰の中にも「すべての人格」がある
・「人格形成」という言葉があるように、人格のかなりの部分が
環境、出会った人間、経験などによって、後天的に形成される。
従って、周囲の環境を適切に選び、時間をかけることによって、
「どのような人格」でも育てていける。
・現在の人格は「変えよう」とせず、新たな人格を「育てる」
・最初は「演じる」でもいい。
ある人格を気持ちを込めて「演じて」いると、
その人格が自然に育っていく。
■隠れた人格には3つのレベルがある
①表層人格
すでに状況に応じて表に出ている人格。
(友人関係での人格、職場での人格)
②深層人格
現在は表に出ていないが、状況や立場が変わったり、意識的な努力をすることによって、
自分の中に育ち、表に出てくる。
(自立心のない若者⇒結婚、出産⇒親として責任感のある人格)
③抑圧人格
何らかの理由で、強く抑制されており、なかなか表に出てこない。
(幼少期の虐待により抑圧された、他者に甘える人格)
■「表層人格」を開花させる技法
(1)今の仕事に「どのような人格」で取り組んでいるかを観察する。
(2)仕事以外の世界で「どのような人格」を表しているかを観察する。
仕事の場面では意識的に抑えられている、プラスの人格もある。
(3)「仕事のできる人」が、仕事でどのように人格を切り替えているかを観察する。
(4)仕事において、表に出して活用する「人格」を切り替える。
■「深層人格」を開花させる技法
(1)優れたプロフェッショナルを「師匠」として、
その「師匠」から「人格」を学ぶ。
立場が人格を引き出すこともある(出世魚)。
(2)自分の中の隠れた才能が開花する仕事を選ぶ。
端的に言えば「苦手な仕事」「自分の性格に向いていない仕事」。
1つの職業的な世界で成功した人は、分野をとわず、
必ずと言っていいほど、その人生において「苦手な仕事」に向き合わざるを得ない経験をしている。
「不遇の時代」こそ、才能を開花させる絶好機。
(3)日常とは違う場で表れる、日常とは違う人格を体験する。
「日常の生活と仕事の場」では、しばしば、行動が単調であり、
人間関係が固定されており、そのような場では、
自分の中のいくつかの人格しか表に出てこない傾向がある。
深層人格レベルの隠れた人格は、なかなか出てこない。
「日常とは違う場」において現れてくる、自分の中の「日常とは違う人格」に気づき、静かに、深く見つめる(静かな観察者であるもう1つの人格)。
<静かな観察者>
自分の中に表れてくる様々な人格を、抑えもせず、否定もせず、
肯定もせず、ただ静かに見つめる。
「静かな観察者」が心の中に生まれてくると、
自分の「エゴ」が見えるようになってくる。
■「抑圧人格」を開花させる技法
カウンセリング、セラピーなどの心理療法。
<なぜ特定の人格を抑圧するのか?>
・社会的な倫理や禁忌
・過去の経験のトラウマ(心的外傷)
・他者に対する嫌悪
他人の中に見た「嫌な人格」を自分の中にも感じる時抑圧する。
■「豊かな人間像と人間性」を開花させる技法
自分の中に貧しい人間像しかなければ、多重人格を開花することはできない。
・なぜ貧しくなるのか?
世界が狭いから。似た者同士のコミュニティ。
・豊かな人間像を身につけるには?
①様々な人生経験を積む。
しかし、直接的に「人生経験」の幅を広げることは、
時間的な制約や経済的な制約もあり、限界がある。
②教養を身につける。
人間の生き方や心の深奥を描いた「純文学」や「古典文学」がおすすめ。
小説の主人公の生き方や心の動きを通じて、「人間像」を広げ、
「人間観」を深め、真の教養を身につける。
「人間像」や「人間心理」をリアルに描いた映画でもよい。
「悪人を演じる時は、その人間の善き部分を見つめて、演じよ」
「善人を演じる時は、その人間の悪の部分を見つめて、演じよ」
■人間性が開花する理由
①相手を理解し、相手の気持ちがわかるようになる。
②相手の状況や心境に合わせて、適切な人格で対処できる。
③エゴマネジメントと静かな観察者 -
著者の本はこの本が初めてであった。意図されている通り「多重人格」の捉え方についての難解な思想が分かりやすく例示されており、また身近な例が多かったことから理解が深まった。最後に著者も纏められている通り、真正面から多重人格に取り組んだ場合の奥深さも感じ、まさに本書は序章に過ぎない。分析方法が細かな分類で細分化されていることから、全体的なマップがあればより理解が深まるのではないか。(自分で作ればいいのだが)また匿名でのネット投稿、見るべき映画や映画の見方に関しての言及があった点も非常に興味深かった。
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なかなか面白い本ではあるのだが、隠れた人格と才能を開花させる方法が書かれてはあるものの、些か物足りない。なにぶん薄い新書一冊に全て詰め込むのは不可能だろうから、これからもっと著作を読んだりようつべのチャンネルをチェックしてみようと思う。
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自分の中には多様な人格がある。
例えば、Aさんに対してはにこやかに明るく接するのに、Bさんに対しては高圧的に命令口調になってしまうなど、相手によって態度を変えてしまうことはないでしょうか?
自分の中に、愛想が良い人格があったり、人を支配したいという人格があったり、それは状況に応じて頻繁に入れ替わっています。
自分の中には、まだ自分でも気がついてない人格、無意識に使っている人格がたくさんあります。
それを意識的に活用することで、才能が開花するという論点がとてもわかりやすかったです。
リーダーとして器の大きい人がどんな人なのか、どういう在り方を目指せば良いかも分かります。 -
『知性を磨く』、『人間を磨く』に続いて読んだ。本書を合わせた3冊のランキングを付けると、
1位:『知性を磨く』
2位:『人間を磨く』
3位:本書『人は、誰もが「多重人格」』
となる。
前2冊は田坂氏の得意な講話形式で書かれており、本書は対談形式で書かれている。その分書かれている内容が薄かつた。
内田樹氏は、太宰治や村上春樹の中に、多様な人格が存在し、それが読者の心を惹きつけると言ったが、田坂氏も同じ趣旨を言っている。
リミッターを解除し多様な人格を発揮した自由自在の境地は仏の概念に近い。