- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334039004
感想・レビュー・書評
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『星から来たあなた』のキム・スヒョンのプロフィールをチェックしていたら、『星から来たあなた』(2013年)のあと『プロデューサー』(2015年)に出演。2017年から2019年まで兵役。除隊後、『サイコだけど大丈夫』(2020年)で復帰、とありました。
ああ、韓国には兵役があるのだったと、前から気になっていたこちらを読んでみました。
最近だとBTSの兵役が問題になっていますが、こちらは2016年出版なので東方神起あたりの話が出てきます。
韓国の男子は高校を卒業すると徴兵検査を受け、おそくとも30歳までには入隊。21〜24ヵ月の兵役を務め除隊。除隊後も40歳までは毎年数時間の訓練に参加しなければならない。
「ファンにできるのは信じて待つことです」みたいなトーンがちょっと疲れるのと、兵役のシステムはよくわかったけれど、もう少し感情的な辛さの部分が詳しく知りたかった。
(兵役に行く韓国の学生と日本人の彼女の恋愛を描いたコミック『フォーナイン』では、前日まで彼女とイチャイチャ過ごしていた大学生が軍隊に放り込まれる衝撃がよくわかるので、ここらへんをもっと知りたい。)
『ブラザーフッド』(2004年)の監督がインタビューで「韓国の俳優は兵役の経験があるので銃の扱いには慣れています」とさらっと答えていて、そのさらっと感にびっくりしたことがあります。出演していたウォンビンが記者会見で「いつ兵役に行くのか」と質問され(この質問もすごいプレッシャー)、「今回の撮影はよい予行練習になりました」と答えていたり、スター俳優とはいえ兵役がついて回るのかと。
(この本によるとウォンビンはその後2005年に入隊、怪我をして半年で除隊するものの、復帰したのは2009年『母なる証明』。)
文中に出てくるヒョンビンの前向きすぎる入隊インタビューにもちょっと驚きます。彼は除隊後、北朝鮮の軍人を演じた『愛の不時着』が大ヒットしているので、軍隊経験が生かされているとも言えますが。
また、「軍隊はどこに行ってきたのか」が男同士の挨拶代わりになるとか、兵役に行っていないと一人前の男とみなされないあたり、ホモソーシャル的な土壌も感じました。
以下、引用メモ。
軍務期間
陸軍、海兵隊 21ヵ月
海軍 23ヵ月
空軍 24ヵ月
学校や職場に復帰したあとも、戦時に備えた定期的な訓練を受けなければなりません。それが完全に終わるのが40歳のときですから、少なくとも人生の前半は、軍隊とは切っても切れない関係を維持されることになります。
現役兵 21ヵ月
動員訓練 4年間(1年間に28時間ずつ)
郷防訓練 2年間(1年間に20時間ずつ)
民防衛訓練 40歳まで
1997年にMBC(韓国のテレビ局)の特別取材班が公表したデータによると、当時の韓国の20大財閥のトップの二世21人の中で、なんと11人が兵役免除になっていました。
2000年4月に行なわれた総選挙では、立候補男性の兵役経験の公開が義務づけられました。
立候補男性の22.6%が兵役免除を受けていたのです。
一般人の兵役免除率は4.6%
立候補男性の息子にかぎると、兵役免除率は約35%まで跳ね上がりました。
イ・ビョンホン
母を扶養する義務があったために、現役兵としての入隊が免除。自宅から通いながら6ヵ月の公益勤務。
チャン・ドンゴン
気胸を患っていたという理由で兵役免除
ウォンビン
28歳だった2005年11月に陸軍に入隊
膝のじん帯を傷めて半年あまりで除隊
「兵役義務を果たすという約束を守らず、申し訳ありません」
頭を下げて国民に謝罪したウォンビン。すぐに俳優に復帰できるわけがありません。そんなことをすれば、批判の矢面に立たされたことでしょう。
ウォンビンが芸能界に戻ってきたのは2009年です。映画『母なる証明』が復帰作となりました。
見本となるべき芸能人が、国民の義務である兵役を嫌ってはならないのです。
学歴偏重や頭脳労働者優遇という特徴を持った韓国社会では、芸能界をめざす人たちは低く見られてしまう
韓国ではまだまだ、国や地域や家などの集団が個人よりも上であると考える傾向が残っており、芸能人のように個人で目立つ存在を寛容に見る視線は少ないといわざるをえません。
これは、他人のことにとても興味を持ち、また関わろうとする韓国人の特質から来るもので、別に自分の関わりや影響もないことなのに、他人に対して意見を主張して、自分の考えに合わせようとする習慣にも拠るものだと思います。
一番つらいのが警戒勤務です。全員が1日あたり1時間にわたって、2人1組で、正門や重要施設の警備をするわけです。
軍隊は24時間臨戦体制を保ちますので、当然ながら、夜間の警戒勤務があります。就寝中に自分の番が回ってくると大変です。冬の寒さが半端ではないのです。
特に、軍事境界線の近くは、韓国でも一番北方で厳寒の地です。
現役兵と認定された人の全員が軍隊に入ってしまったら、兵士が余るのは目に見えています。
北朝鮮と厳しく対峙している以上、徴兵制をなくすことはできないでしょうが、現実問題として、兵器が近代化された結果、多くの兵士が必要ではなくなってきています。
韓国では、男は軍隊に行ってきて一人前、という考え方が浸透しています。
社会服務要員だった人は、『あいつは軍隊に行っていないから弱い奴だ』と陰で言われることはあるでしょう。
結婚したいと思う女性がいて、彼女の実家に挨拶に行ったときに、『軍隊はどこに行ってきた?』と相手の父親に聞かれますね。
『社会服務でした』とか、『兵役免除でした』と答えると、とたんに軍隊経験のある父親が苦い顔になって、結婚が許されないこともありますね。
韓国では何かにつけて『軍隊はどこを出たのか』というのが、男同士の挨拶代わりになります。
みんな軍隊には、行く前は死ぬほど行きたくないのですが、除隊になると、最高の思い出になってくるんですよ
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2021.12.28読了
目を背けたい話題だけど、アミである以上避けられない、近い将来向き合うことになる現実を知りたくて。
我らが推しの成功により兵役法は変わっているものの、それでも基本的なことはよくわかる一冊。韓流ファン目線の解説だからすごく…リアルで…何度も涙が。
冒頭の「…ファンであることがもはや、【趣味】ではなくなったからです。それは【生き方】になり、【覚悟】になったのです。覚悟のある生き方ほど、強靭なものはありません。どんな困難が押し寄せても、覚悟さえあれば、乗り越えていけます。」だけで、いかにファンに寄り添った内容か分かるでしょう。
ここからは本の感想というよりいま思っていること。
彼らの国に生を受けた男性の義務であり、若い国民の模範となるべき立場だし、隣国といっても文化・歴史・政治・軍事情勢が全く違うから、部外者は静観しかないと思っている。行くときは行くし、もしかしたら行かないのかもしれない。それだけ。
ただ、こんなに、toxic masculinity(有害な男らしさ)に対し疑問を呈し、diversity & inclusion(多様性の受容)を重んじて活動をしてきた彼らが、「マスキュリニティ」と「ホモソーシャル」の権化のような組織に、一時的とは言え、属さなければならないことが、喉に刺さった小骨が取れないようなもどかしさを覚える。
彼らの中にダブスタを強いることになるんじゃないかな、ジェンダーに対する考え方が変わっちゃったらどうしよう、とか・・・
いや、彼らが納得して決断したことはなんであれ応援するよ、という気持ちはあるし、入隊することで人間的な成長が見込まれるってことも著書から学んだ。
「国民の義務」以外に、彼らは何を思っているのだろうか。やっぱりそれを語るのはタブーなのかな。いつか彼らの言葉で教えてほしい。
韓国の社会問題は徴兵制を無視しては語れないと思うので。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689665 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99835530 -
韓流スターと兵役 あの人は軍隊でどう生きるのか。康煕奉先生の著書。韓国の社会制度や社会事情に詳しくない人は、有名で人気のある韓流スターが兵役で芸能活動を休止するという報道を見てはじめて韓国に徴兵制があることを知るのではないでしょうか。韓国の徴兵制や軍隊生活はどのようなものなのかをわかりやすく説明しています。徴兵制の良し悪しは難しい問題だけれど、徴兵から戻ってきた韓流スターたちは皆さんどこか一段逞しくなって男性として力強さや魅力が増しているように思えます。
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16.mar
おそらく韓国内で兵役について常識になっている部分について、その上澄みを知ることができた。
韓流ファンに向けて書かれた本なので、わかりやすかった。