美術の力 表現の原点を辿る (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334043315

感想・レビュー・書評

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  • 美術は、感性だけでなく、知性に働きかけるもの。作品の意味、機能、作者や注文者の意図などの、知識があれば、鑑賞を深めることができる。

  • 評価は3.5があればそれにしたい。

    ●美術は場も影響してくる
    →非常に納得がいった。同じ絵でも日本で見るのとその作者の故郷で見るのとはまた違ってくるだろうし、前後にある絵との兼ね合いによっても変わるだろう。
    自分の心境や見る時間帯によって、さらには年齢によっても変わってくるのではないか。

    これは美術以外にも言えると感じた。例えば、飲食においても東京で同じものは食べられるがやはり本場に行った方が美味しいと思う場面も多々ある。

    物の本質を高めるには、そういった外的要因というのも考慮するべきだ。

    ●絵の背景を見ること
    →その時の社会やアーティストの感情等、複数の情報を得て見ることで感じ方が変わる。

    今までは心を無にして見ることで心の琴線に触れる絵が良いものだと考えていたし、なぜかそう習って来たような気もする。

    ただ、それは正解であって正解でなく、より突き詰めるのならば絵の背景をより学ぶことで見え方が全く異なる。

    作者はそれを知的なものだと捉えており、たしかに歴史的背景や美術界の移り変わりによって描かれているものが左右されてきたということもあるようだ。

    これは美術以外にも、建築物やそれこそ本においても同様なことが言えるのかもしれない。
    背景を学んでから自分の目で見てみるというのは非常に大事と学んだ。

  • 背ラベル:700-ミ

  • 東大文学部卒、美術史家、神戸大教授

    ● ポンペイの壁画
    「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」
    画面下部の中央にいる鷲は、ヘラクレスの父であるゼウスと同時にローマ皇帝を表している。擬人像や寓意によって物語を表現するのは、古代から西洋美術に特有の手法であった。
    32

    ●美術史の意義

    美術というものは古今東西を問わず、どんな天才的作品でも必ず過去の作品と密接な関係をもっており、時間と空間の制約の中からしか生まれないものであって、芸術家の天分や創意工夫などといったものはごくわずかな要素にすぎないのだ。
    164

    美術を見るということは、感性だけの営為ではなく、非常に知的な行為なのだ。知識があればあるほど作品の意味や機能、作者や注文主の意図がわかって深く鑑賞できる。知識があって鑑賞の邪魔になることはありえないし、知識を軽視して、自分の感性や好き嫌いだけで見ても、ほとんどの美術作品は何も語りかけてくれないだろう。

  • もはや心から感動できることはないのだが、作品の良し悪しはかえって敏感になった気がするし、今後もこうした求道と巡礼を続けるしかないと思っている。本書の何遍かにはそんな思いを吐露している。

  • 西洋美術については、宗教と時代性に基づくモチーフに関する話など、よく聞く話ではあるが知らないことも多く興味深い。

    ただ、特に独特なのは中盤からで、クレパスによる絵や日本の戦争画、踏み絵や絵馬、奉納物(エクス・ヴォート)、供養人形、アール・ブリュットとそれに伴う(と著者は解釈する)死刑囚の絵など、あまり芸術としては注目されにくい物らの紹介が面白い。
    全く知らなかった作家や作品、考え方が多く、これまでいかに分かりやすく、有名どころの「芸術作品」ばかりに注視していたかを実感させられた。

  • 面白かったよ〜
    ただ読み終わってその内容が全く頭にない

  • 見事な絵画のカラー写真が満載で綺麗な本。新聞や雑誌で掲載された内容を集めた、とのことで全体のまとまりは無いが、章ごとに色んなテーマを扱っている
    知らない芸術家がまだまだたくさんいて興味深かった。紹介される人物が多い分、いつの時代の人だったかを真っ先に明記してほしいと思った

  • 自分が絵画好きになったのは、高校時代にエル・グレコの受胎告知を観てから。先週もナショナル・ギャラリーで、この本にも取り上げられているカラヴァッジォの作品を観てきたところ。実物を観た事があると、当然ながら興味のレベルが1つも2つも上がる。

    「美術の力」と書かれている通り、一般的な絵画紹介本ではなく、それぞれの時代において絵画が果たしてきた役割とそのもたらす影響について書かれている。

    西洋絵画だけでなく日本人による作品も取り上げられているところも好感。




  • 図が多く絵画をカラー図版で確認できイメージしやすい。自分が行った展覧会や観たことのある絵画が思い出されて読んでいて嬉しい。
    絵画や美術そのものの意味を問うている精神性の高い深い内容。「絵画とは何か、絵を見るとはいかなることなのか」(p.90)を考えさせてくれるモノとして絵画が紹介されている。
    また日本の美術教育に対する懸念、問題提起もされている。美術史を学ぶこと、古今の実際の作品を観ること、そして名画を模写することをしないことにより「自分の感性だけで見ればよいという姿勢に結びつく」「好き嫌いだけで見ればよく、色や形の美しさを感じるだけでよいという誤解」がある(p.136)という言葉にはドキリとした。
    5章「信仰と美術」、6章「美術の原点」は特に心に響く内容だった。絵を描く・観る意味、美術の持つ力について書かれた、とても心に残る章だった。読めて良かった。繰り返し読み、取り上げられている絵を眺め、できれば実際に観に行きたい。

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著者プロフィール

宮下 規久朗(みやした・きくろう):美術史家、神戸大学大学院人文学研究科教授。1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒、同大学院修了。『カラヴァッジョーー聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞など受賞。他の著書に、『バロック美術の成立』(山川出版社)、『食べる西洋美術史』、『ウォーホルの芸術』、『美術の力』(以上、光文社新書)、『カラヴァッジョへの旅』(角川選書)、『モチーフで読む美術史』『しぐさで読む美術史』(以上、ちくま文庫)、『ヴェネツィア』(岩波新書)、『闇の美術史』、『聖と俗 分断と架橋の美術史』(以上、岩波書店)、『そのとき、西洋では』(小学館)、『一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ《聖マタイの召命》』(ちくまプリマー新書)、『聖母の美術全史』(ちくま新書)、『バロック美術――西欧文化の爛熟』(中公新書)など多数。

「2024年 『日本の裸体芸術 刺青からヌードへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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