メタバースとは何か ネット上の「もう一つの世界」 (光文社新書 1179)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334045845

感想・レビュー・書評

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  • 「メタバース」を学習するために読んだ本、2冊目。

    メタバースとは、ゲームやアニメの世界観をベースにする「現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」である。

    メタバースは、コミュニケーションだけでなく生活全般をフィルターバブルに包んでくれる。メタバースにより、個々にカスタマイズされた快適な空間を作ることで、多様性を達成することが可能なのではないか、という。

    確かに、多様性を受け入れるということは、他人の地獄と向き合うことだ。「汚い」と切り捨てたくなる他人の愚行を認めないで多様性を語る資格はないんじゃないか、とも思う。
    かといって、汚いと思うものにまともに付き合いたくないのもまた事実。

    だからこそ、フィルターバブルに包まれた世界というのは、ますます求められていくんじゃないかな、と思う。

  • 【まとめ】
    メタバース…「インターネットにおける仮想世界」

    VRは体験をデジタルコピーする技術だ。まだ発展の過渡期にあり、未熟な技術であるため、「VRで握手したから、もう本物のアイドルのイベントには行かなくていいや」とか「VRで見たので、旅行はやめよう」とはなっていない。 しかし、5年後、10年後にVRでの体験の価値が、現実でのそれを上回る可能性は十分にある。現在、VR体験は視覚と聴覚に偏っているが、視覚情報の大幅な進歩に加えて、触覚や嗅覚、味覚まで加えた体験が研究されている。

    であれば、VRの次はAR(Augmented Reality:拡張現実)だと話が広がっていくのも理解できる。現実を模倣するのであれば、何もないところから疑似現実を立ち上げるのではなく、現実と仮想を混ぜてしまえばよい。作り手としてはより効率的に疑似現実を作ることができ、受け手としてはより現実と地続きの形でその疑似現実を消費することができる。

    体験をデジタル化する技術には、もう一つの別の潮流がある。 冒頭で述べた「ソードアート・オンライン」や「レディ・プレイヤー1」がそうだ。現実に似せる(疑似現実)のではなく、現実とは違うもう一つの別の世界を作ろうという方向性である。
    単なる体験の枠を超えて、生活の大部分を「そっちの世界」へ移してしまいたいという構想。まさに、現実とは違うもう一つの世界である。「現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界」――本書ではこれをメタバースと呼ぶ。
    メタバースは仮想現実なので、現実ばなれ(リアルばなれ)した「都合のいい世界」を作ることができる。私はこれがメタバースの本質だろうと考える。メタバースの定義を議論するときに、VRか否か、アバターのあるなしなどがよく俎上に載るが、これらは「都合のいい世界」を作るための要素技術だ。

    SNSはフィルタリングにフィルタリングを重ね、慎重に設計されたグループの中に利用者を囲い込むサービスだ。同じ価値観の人間のみからなる世界は快適なため、つい長い時間を過ごしてしまう。
    SNSがもっと人に使われるサービスになるためには、もっと世界として完成され、ほとんどの時間をSNS内で過ごせるようになる必要がある。生理的な欲求の部分は最後まで現実世界に残り続けるだろうが、それ以外はすべて「そこ」にいられるようなサービスには巨大なビジネスチャンスがある。

    そしてこの分野に、日本ならではの成功の形があると思うのだ。 メタバースは現実の模倣ではない。辛くてつまらない現実から、いいところだけを抜き出した、もう一つの世界である。それはこれまで欧米が主導してきた疑似現実とは位相が異なる。Virtual Realityを仮想現実と訳しなじんだ日本だからこそ、作れるメタバースがあるはずだ。


    ゲーム内でのアイテム販売、コンサートの実施、イベントなど、フォートナイトは未熟ながらも、本書の定義での「もう一つの世界:メタバース」として機能し始めている。リアルの代替物や下位互換品ではなく、リアルではできないこと、リアル以上に楽しいことを提供し、「自分が活躍できる、楽しめるもう一つの場所」として機能し始めている。

    メタバースの目的地は「リアルを超えてもう少し居心地のいい場所」にある。まだ遠い目標だが、ここ数年で各企業は「さほど長くない期間で実現可能」と踏んだのだ。
    もしも多くの人が体感している通り、リアルの政治や社会が機能不全を起こし、格差が拡大・固定化され、個人主義の浸透が各種の配慮の必要性を生むことでコミュニケーションコストを高騰させ、逆に個人が生きづらい世の中が到来しているのであれば、リアルなどという最初から持てる者だけが勝つことを約束されたゲームから降りて、仮想現実で生きていくのはあり得る選択肢である。


    ●メタバース普及の背景
    ・ゲームの発展と合わせた演算速度、描画機能、解像度の向上、インターフェイスのリアル化
    ・リアルでなくても構わないという人が増えた
    ・リモートの一般化


    ●大手企業のメタバースの導入
    メタバースはインターネットの代わりではないが、ウェブやSNSの代わりにはなり得る。2000年代、インターネットの情報流通のほとんどはウェブでなされ、そこで王者として君臨していたのはグーグルだった。何かが流通するとき、その全体を俯瞰し、管理する立場にある者や企業は大きな利潤を得る。そう考えるならば、ウェブでうまくやったグーグルも、SNSで名を成したフェイスブックも、情報流通の端末をブランド化することに成功したアップルも、メタバースの商機を見逃すことはできない。

    ・Facebook
    社名をMetaに変更。メタバースへの参入にもっとも意欲的。
    フェイスブックはGAFAMの中では最も他社サービスに依存している企業だ。それゆえ、どんな外圧や新規勢力の台頭にも揺らがない、確固たるプラットフォームが欲しいのである。彼らはメタバースにそれを見いだしたように読める。メタバースにxRを不可欠なものと位置づけて、今までフェイスブックの弱みであったリアルと強くリンクする製品を売って自社の代替不可能性を底上げしつつ、メタバースの覇権を狙う。GAFAMの中で最もメタバースを渇望するポジションにいることもあり、ここ数年はメタバースの実装をリードする立場に立つだろう。

    ・Google
    グーグルも自分のビジネスをメタバースに移行したい理由を持つ企業である。
    彼らの主要な収入源は、広告である。広告収入が100%近くを占めるフェイスブックに比べればバランスはよいものの、それでも7割を広告に頼っている。フラットなインターネットが終焉を迎えつつあり、コミュニケーション上のフリクションを嫌った利用者がますますフィルターバブルの中に深く閉じこもるようになると、フラットなインターネットの覇者であるグーグルには面白いことばかりではない。グーグルはメタバースもミラーワールドも選べる位置にいるので選択肢は広いが、リアルビジネスにも深く食い込んでいる企業でもあるため、そのメリットを引き出しつつメタバースの果実ももぎ取りたい。 したがって、それはメタバースよりは、リアルに寄ったAR、つまりミラーワールドを志向するだろう。
    そのため、GoogleはGoogleグラスというスマートグラスを開発しており、リアルの風景に情報を重ねて表示するAR機能を搭載している。

  • メタバースとは何か

    1.購読動機
    Facebookの社名変更があり、彼らが執着する「メタバース」の世界に関心が向かったからです。

    2.メタバースとは何か
    その昔、「セカンドライフ」なるものがありました。今もその世界は存在します。

    そして、いま、ハード、ソフトそしてコンテンツを創造できる世界は確実に精緻に、相当の計算力をこなす時代となりました。

    メタバースとは
    ①現在の世界のルールとは別のルール
    ②個人にとって居心地のよい
    ③向こう側(仮想)の世界
    です。

    3.SNSに興じる理由
    SNSとは志向が似ている人の集まり世界です。
    フィルターバブル。
    ゆえに、個人にとって居心地がよい世界です。

    たとえば、このブクログも、本好きのSNSととらえることもできます。

    SNSは、居心地が良い世界、しかし、そこに興じる時間は、まだまだ少ないです。

    それは、完成されていないからです。

    4.SNSが発展すると、、、
    人間の時間は24時間です。
    この時間をいかにしてGAFAは支配したいのか?
    その答えのひとつが「メタバース」です。

    食事、排泄以外は、メタバースで暮らす、仕事する、報酬ももらえる、そんな世界です。

    現実世界は、自由に責任が伴ない、降りたくなるシーンもあります。
    この人間のリアルをコントロールした仮想の世界、それがメタバースです。

    5.読み終えて
    「知らないことは怖い。
     知ることでそれはなくなる。」

    著書の冒頭の言葉です。
    メタバースとは何か。知ることで、楽しみ、学びが広がります。



  • 他の方も書いているが、とにかく筆者のメタバースに対する熱い思いが綴られている一冊。

    技術面の話がほぼ出てこないので、メタバースがなんとなく来ているな…ただ実態がよく分からない、という初学者向けの本かと思う。

    メタバースとは仮想現実(=自分にとってもう一つの都合の良い世界を作ること)なので、ポケモンGOのようなAR(拡張現実)とはまた意味合いが異なるとのこと。

    現実とは異なるもう一つの世界で経済活動や恋愛、娯楽など様々な要素が成り立つようになったとき、私たちはどちらの世界を選ぶのかとても気になる。


  • メタバースとは何か?という問いの回答よりも、執筆時点でのゲーム分野での活用事例が豊富です。
    筆者のその分野での見識の深さがうかがえます。

  • わかりやすくかつ読みやすい良書。著者の自虐ネタがいい味を出している。

  • 著者のオタクとしての文章と専門家としての文章が絶妙に混ざっていてとても楽しく読めた。専門知識がほとんどないから難しいな…と思ったところに、ゲームやアニメなど個人的には親しみやすい例えが出てくるので、すごく理解しやすかった。

    メタバースは専門家でもまだ掴みどころのない部分が多いみたいだから、これからの展開も楽しみ。

    オキュラスがもっと手軽楽しめるゲームに進化したらもっとビートセイバーをプレイしたい。

  • Kindle Unlimitedにて読了。
    メタバースとは、もう一つの世界のこと。要はVRでしょって雑な理解をしてたけど、現実との関わり具合で、デジタルツインとか、ミラーワールドというのもあるらしい。
    リアルのフリクション(まさつ)を無くした快適な世界へようこそということなんですが、個人的にはまだ不気味さを感じます。まあ、試してないからなんともだけど。コミュ障なので、自分と耳障りの良いことしか言わないAIだけの世界、アンダーワールドにはちょっと興味あったんですが、期間限定公開だったので、いまはないみたいですね。残念。
    VRゴーグルもオキュラスクエスト2が今は定番ですが、まだまだ進化の余地はあるようなので、一般人はまだ様子見でよいかな。次に発売されるVRゴーグルは注目かも知れません。

  • 書籍タイトル通り、メタバースって何かわからない人(私)向け。私の年齢だと、メタバースの恩恵を受ける頃には、あの世にいるかもしれないが、メタバースで生かされてるかもしれない(笑)。

    読み終わって、メタバースの世界も悪くないと感じた。というのも、個人的に、リアル世界も色んな分野で、行き詰まりを見せていると思うから。環境問題、人種問題、格差問題など、リアルでは解決できないことが山積み。

    だったら、メタバースで理想に近い世界が作れるかもしれない。例えば、自分は男に生まれてきたけど心は女性で生きづらければ、メタバースで女性のアバターを使えばいい。住む場所もメタバースなら関係なく、実際に行けないところも瞬時に行けるだろう。高齢者や障害者も自由に不都合なく活動できる。

    でも人間であることには変わらないし、メタバースの世界でも、人間の本質は変わらないだろうから、結局は最後に「リアルな」問題で悩むことになりそうだ。

    メタバースって何かを知るのも面白かったが、自分だったらどう感じるだろう?人間って、幸福って何だろう?と改めて考えさせられる一冊でした。

  • 基礎知識がなかったので読み終わってもちょっと消化不良

    自分の好きなもの、自分が心地よいものに囲まれた仮想世界は今後どのように発展してくんだろうか?
    自由になるのか不自由になるのか

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著者プロフィール

中央大学国際情報学部教授

「2021年 『デジタル/コミュニケーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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