教養を磨く 宇宙論、歴史観から、話術、人間力まで (光文社新書 1263)

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  • / ISBN・EAN: 9784334046705

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  • 教養を磨く
    宇宙論、歴史観から、話術、人間力まで
    著:田坂広志
    紙版
    光文社新書 1263

    急速に進展する人工知能革命時代に求められる、新たな教養とは何か
    時代を読み、生き残るための、指針を提供してくれる書
    間違っているのか、正しいのかはわからない。ただ、暗闇をやみくもに歩くよりも、足元だけかもしれないが、明かりをもっていたほうがいいと感じました。

    気になったのは、以下です。

    ■哲学の究極の問い

    真の教養とはなにか、多くの本を読み、様々な知識を学ぶことではなく、そうした読書と知識を通じて、人間としての生き方を学び実践することである。

    現代において、教養ということの前提条件、書物を通じて学んださまざまな専門分野の該博な知識に、大きな3つの変化が起きている

     ① 該博な知識に関する時代の変化 AI革命が、該博な知識だけなら、AIにはもう人間はかなわなくなってしまっている
     ② 書物を通じてに関する時代の変化 活字メディアである書物よりも、マルチメディアである映像や動画を通じて情報を入手できるようになってきた
     ③ 様々な専門分野に関する時代の変化 難しい本を読まなくても、テレビ番組、映画や、YouTubeなどを通じて専門分野の学びができるようになってきた

    3つの深化

     ① 専門の知、から、生態系への知 への深化 個別の断片ではなく、個性的な思想体系である、知の生態系へ
     ② 言語の知 から 体験の知 への深化 活字の知から、疑似体験や共感とともにある知へ
     ③ 理論の知 から 物語の知 への深化 単なる知識から、具体的なエピソードや物語を学ぶことで人間学を学ぶよい方法となる

    人生にイエスという 
     いかに逆境に満ちた人生が与えられようとも
     いかに苦労の多い人生が与えられようとも
     それでも、それは、ただ一度かぎりの、かけがえの無い、自分の人生
     そう、思い定め、その人生を慈しみ
     与えられた逆境と苦労を魂の成長の糧として歩むとき
     運命という言葉は、いつか
     天命ということばに変わっていくのであろう

    ビスマルク 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

    過去の歴史が経験したことのない状況に人類が直面している時代において、我々が未来を知るためには
    経験に依拠した社会科学には限界があり、
    創造に依拠した、文学、特にSF文学が、大きな役割を果たすことになるだろう
    創造の力を飛翔させる文学には、21世紀、新たな役割がある

    人間のエゴ エゴを処する2つの力

     ① 相手のエゴに処する力
     ② 自分のエゴに処する力

     否定も肯定もせず、ただ、静かに見つめる
     エゴを大きく育てる ⇒ 大我は無我に似たり

    才能を開花させるには

     その人間の中から、その才能にみあった人格が現れてくることにほかならない
     どうしたら、我々は、自分の中に、必要な人格を育てることができるのか
     私淑すること、優れた人物の真似をすること
     学ぶことは真似ぶこと
     一流の経営者やリーダは、自分の中に様々な人格をもち、それらを場面と状況に応じてみごとに使い分けている

    学歴的能力よりも高度な3つの能力を磨く

     ① 職業的能力
     ② 対人的能力
     ③ 組織的能力 この3つの能力を支えるのは、人間力

    死に関する3つの真実

     ① 人は必ず死ぬ
     ② 人生は1度しかない
     ③ 人生は、いつ終わるかわからない

    ⇒ 死を直視すると3つの力が与えられる

     ① 逆境力が高まる
     ② 使命感が定まる
     ③ 人生の時間密度が高まる

    複雑系、複雑なものには生命が宿る

    不運の姿をした幸運 人間万事塞翁が馬
     人生の幸運と不運は人智ではわからない
     いまこの瞬間を生きる⇒いつ死んでも悔いがない
     人生で起こること、すべて良きこと
     
    ■ 科学と宗教の対立を超えて

    共感、書物を読んだだけでは決して身につかない
    人生において、自身が、様々な苦労を重ねること
    共感力と人間力

    うまへた と へたうま
     上手そうにみえて実は下手
     下手そうにみえて実は上手
     守破離 まず、基本の型をしっかり覚え、次にその型を崩していく段階がある

    創造性をめざす過ち
     結果にすぎないものを、目的にしてしまう

    世界には、自然の生態系とともに、心の生態系がある

    賢明なもう一人の自分が、自分を見ている

    言葉には重みがある、言葉を語るとき、書物で学んだ言葉なのか、自身の体験を通じてつかんだ言葉なのか

    謙虚と感謝
     自分に本当の自信がなければ謙虚になれない
     本当の強さを身につけていないと感謝ができない

    我流、プライドと慢心、我流の我とは自我の我、かたくななエゴに他ならない

    ■戦略的反射神経

    AIで決して代替できない3つの能力

     ① マネジメントの能力 それは管理ではなく、成長のマネジメント、心のマネジメントをいう
     ② ホスピタリティの能力 非言語的コミュニケーション能力 顧客の声に耳を傾け、相手の気持ちを察する能力
     ③ クリエイティブの能力 集団知を活性化させ、その集団から新たなアイデアやコンセプトが生まれてくることを促す能力

    自分は、自分に似ている人を嫌悪する ⇒ 自分の中にある欠点を許す
    結局、自分を愛せない人は、人を愛せない

    人生百年時代 体力だけでなく、精神のスタミナの大切さ、タフな精神を鍛える、精神は60を超えても高めることができる

    進歩史観 歴史は必ず、人類の進歩に向かって進んでいるという歴史観

    透明な感性 すべてを諦め、死を覚悟したとき、静かで透明な心境が訪れる

    メメント・モロ 死を想え ラテン語

    2つのパラダイム
     ロボットとはしょせん機械である  
     サイボーグとは、人間である
     人間の能力は最先端の科学技術をしても、測り尽くせないほどの奥深さがある

    無と空を大切にする 自己の内側を見つめる沈黙の時間を持つこと、そのとき我々の精神の深化が始まる

    シンクタンクではなくドゥタンク

    戦略的反射神経とは、目の前の現実が予想外の展開をしたとき、状況の変化を瞬時に判断し、速やかに戦略を修正しながら、その新事業を前に進めていく能力のこと

    自然(じねん)の思想 自然として生きること

    静かな強さ すべては自分に原因がある すべてを自分自身の責任として引き受けること

    ■フォースを使う技法

    新しい資本主義
     貨幣経済、交換経済、贈与経済
     経済として流通するのは貨幣であるが、ボランタリ経済において流通するのは、知識、関係、信頼、評判など目に見えない資本である

    マネジメントの道を進める3つの理由

     ① 人間として成長できる
     ② 生涯を通じて活躍できる
     ③ 淘汰の嵐を超えていける

    知能と知性
     知能とは 答えのある問い、いちはやく正確にたどりつける能力
     知性とは、答えのない問い、問い続ける能力

    ■ポジティビズム

    成功者の不思議な偶然
     折よく、たまたま、ちょうどその時、ふとしたことから
     人生の出来事に、深い意味を感じ取る力

    統合的・超越的人格=賢明なもう一人の自分
     ① 自分の心の中のエゴの動きを静かに見つめることができるので、エゴや感情に流されることがなくなり、人間関係が好転する
     ② エゴや感情に振り回されない心の状態が生まれ、直観力が鋭くなる
     ③ 直観力がするどくなると、人生の岐路において、選択を過たず、運気を引き寄せる力が高まる

    仏の思想家、ジャック・アタリの提唱する、ポジティビズム:積極主義

     楽観主義:オプテイミズム 観客として自分の好きなサッカーチームが勝つだろうと思う
     積極主義:ポジティビズム 選手としていま負けていても、必ず勝てると信じ、力を尽くすこと

    不動心とは

     決して乱れぬ心ではない
     乱れ続けぬ心、乱れてもすみやかに平常心にもどることができる心

    優秀な人間がつき当たる7つの壁

     ① 学歴の壁
     ② 経験の壁
     ③ 感情の壁
     ④ 我流の壁
     ⑤ 人格の壁
     ⑥ エゴの壁
     ⑦ 他責の壁

    死とは

     必ずしも、恐怖や絶望を表すものではない
     やすらぎ、救いと考えることもある

    エゴはすてなくてもよい

     ただ静かに見つめること
     心は蛇蝎のごとくなり 親鸞 エゴは決してなくならない

    プロはなぜ育たない
     本を読めば、楽をして成功を手にいれるという安易な考えをとっていないか
     敵は我にあり

    ■神の技術がもたらすもの

    神は細部に宿る

    現代は複雑系の知:
     摂動敏感性 小さなゆらぎが全体に波及していき予想がつかなくなる
     管理不能性 システムがあたかも、意思をもった生物のようにふるまう

    これまでの西欧的手段は、機械的世界観
    これからは東洋的手段で、生命的世界観

    直感とは追い詰められて、もうあとがないという時に閃くことが多い
    追い詰められた自分を楽しむ、もう一人の自分を生みだす

    アイデアとは、自分という小さな存在が生み出すものではなく、自分を超えた大いなる何かから降りてくるもの
    我が業は我が為すにあらず 棟方志功

    合理的利他主義

     我々が利他的行動をとるのは、自己犠牲の精神からではなく
     その行動が自分にとっての利益になるからであり、幸せにつながるから

    はじめに 二一世紀に求められる「新たな教養」とは何か
    第1部 哲学の究極の問い
    第2部 科学と宗教の対立を超えて
    第3部 「戦略的反射神経」の時代
    第4部 「フォース」を使う技法
    第5部 「ポジティビズム」の時代
    第6部 「神の技術」がもたらすもの
    第7部 思想を紡ぎ出す読書
    謝辞
    さらに学びを深めたい読者のために

    ISBN:9784334046705
    。出版社:光文社
    。判型:新書
    。ページ数:352ページ
    。定価:920円(本体)
    。発行年月日:2023年07月
    。発売日:2023年07月30日第1刷

  • 田坂広志、3冊目。 

    私たちが勉強するのは何のためか?
    いい学校にいくため?一流企業に就職するため?
    子供のためを思ったらそれはある。その方が可能性が広がると考えてしまうから。
    だけど、一流企業に就職できたら、それはハッピーエンド?いや違う、これから先辛いことがたくさん待っているかもしれない。
    最終的に行き着くとこは、生きる術を身につけるため。
    これこそが教養。
    この本は生きる術がたくさん詰まった本。

    不動心とは決して乱れぬ心ではない
    乱れ続けぬ心

    この節が印象深い。
    どんな立派な禅師だって心が1ミリも乱れない人なんていない。乱れた時にいかにすぐに戻ってこれるかが大切。
    戻ってくるためには、
    戻るべき場所を知ってること。

    自分が戻るべき心を、揺るぎない信念を確立していくことが、真の教養なのだと思った。

  • 筆者のこれまでの著書の整理のような感じで、あまり目新しいものがなかった

  • こんな本を読めば教養が身につく的な本とは一線を画す。
    Iトピック4ページなのも読みやすい。
    他のシリーズも読んでみたい。


    『卒業しない試験は追いかけてくる』
    身につまされる。

  • 答えのない問いを考え続けるのが知性である
    神を信じる宗教と、神に近づこうとする科学が相反するものと言う思いがありましたが、科学そのものが宗教の様な存在なのかなと思ったり。
    仏教の様にありのままに受け入れる姿勢も、時には必要なのだなと思いました。

    専門の知→生態系の知
    言語の知→映像の知
    理論の知→物語の知

    知性とは「答えのない問い」を問う力

    人生にはイエスという

    エゴに対して
    否定も肯定もせず、ただ、静かに見つめる

    非言語的コミュニケーションを磨く

    人は必ず死ぬということを直視するならば、命あるだけ、有り難いという絶対肯定の姿勢で処することができる

    人生で起こることは、すべて良きこと

    写真家として最もつらいのは、他の誰かの悲劇で特をしているということだ

    「創造性を目指す過ち」
    結果に過ぎないものを目的にしてしまう

    人間、自分に本当の自身がなければ、謙虚になれないのですよ

    自分を愛せない人間は、他人を愛せない

    英雄のいない国
    英雄のいない国が、不幸なのではない
    英雄を必要とする国が、不幸なのだ

    フォースを使う技法
    直感は過たない
    過つのは判断である

    直感を閃かせる技法
    直感というものは、退路が断たれ、追い詰められた状況で、閃くことが多い

    人生で起きること、すべて良きこと
    どのような出来事が起こったかに、あるのではない。
    起こってしまった出来事を、当解釈するか

  • 1冊の人生の攻略本。ぜひ再読してみたいと思う。

  • これまでの田坂先生の著書の集大成だと思います。沢山のページに付箋が付きました。感謝

  • 生き方の視点を縦横無尽なテーマから。

    ◯三つの深化
    ・「専門の知」から「生態系の知」へ
    ・「言語の知」から「体験の知」へ
    ・「理論の知」から「物語の知」へ

    ◯「経験」に依拠した社会科学だけでは未来が見えない時代、「想像」に依拠した文学に新たな役割

    ◯「大我」は「無我」に似たり
    エゴを受け入れ、広げる

    ◯人格育成のために、複数の先達に私淑する

    ◯「この危機はいつ終わるか」ではなく、「この危機は我々をどう変えるか」をこそ、問うべき

    ◯「結果」に過ぎないものを「目的」とする誤り
    イノベーションを求めない

    ◯「賢明なもう一人の自分」の存在を自覚する

    ◯「知の生態系」を築き、自身の思想を持つ上で、専門の垣根、ジャンルの垣根を超える

  • かなり学びが多い高カロリーな本

    AI時代にはマネジメント能力(成長のマネジメント、心のマネジメント)
    ホスピタリティ、クリエイティビティ(集団から新しいコンセプトを生み出すのを促進する力=ファシリテーション能力)が重要となる。

    成功者は出来事に深い意味を感じ取る力が強い
    自伝本などでも 運良く、たまたま、折よくなどの単語が出てくる。

    褒めることの重要性、後輩にはどんどん褒めたい。
    新書ながら分厚い歴史書を読んでいるような満足感が得られた。

  • 運気を磨くを読んで、こちらを購入しましたが、運気を磨くで、心に残ったことの重複も多いかと。ただ、この本を読んで、SF思考って言葉に行きつき、いまは、SF小説路線に笑
    結局、ありがたい本でした。

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著者プロフィール

シンクタンク・ソフィアバンク代表

「2023年 『能力を磨く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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