櫻憑き (カッパ・ノベルス 異形コレクション綺賓館 3)

著者 :
  • 光文社
3.64
  • (6)
  • (7)
  • (10)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 66
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334074258

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とても面白かった。桜がテーマのおかげで、生々しさがある話でも儚さや夢心地の雰囲気が漂っている。以下、今回印象に残った作品。菅浩江『桜湯道成寺』冒頭から面白い作品だった。老婆の独り語りという体で、終わりに向かってじわじわと凄みが増していく。五代ゆう『阿弥陀仏よや、をいをい』今昔物語の源太夫の話から。一番気に入った作品。傷口から血ではなく桜の花が流れ出てくる幻視が、もう…。坂口安吾『桜の森の満開の下』想像するだけで、花酔いしそう。ふわぁ。石川淳『山桜』私が物を書く人なら、こんな風に書けたら、と思うだろう。

  • ――



     はなあらし 手弱女の散るに任せて


     このように桜の季節も過ぎつつありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。ときどき王子に行く機会があって、今年いちばん見たのは飛鳥山の桜かもしれません。去年は小金井公園、一昨年は御苑か? その前は…
     とまぁなんとなく桜に記憶はつきもので、憑きもので、それを不死性と取るのは一興。不死者、なんていうとなんとかリング的な、それこそ輪廻が巡って、繰り返す季節のそれぞれが色濃く現れてくる日本という国は、多分に感傷的になりやすいのかもしれませんね。なんつって女々しさにごてごてロジックを塗り固めているだけか?
     春生まれということもあって桜には妙な親近感を持っていて、なんとなく好き勝手に印象操作されてて可愛そうだな、と思っていたりする。大方のひとたちの間では酒の肴に愛でるものであって、ある一定の趣味人の間では恐ろしく、不気味な描かれかたをし、なんだか儚いもののように云われるけれど花ってだいたい季節あるよね? なんで特別扱いするかなぁ、というのが正直なところ。桜だって好きで散ってるわけじゃないし、別に来年を約束しているわけでもないのだ。感傷的な時期に咲いて散るのがよくないんだよねきっと。9月はじまりの国だったらこんなに流行らなかったと思う。
     まったく、勝手にいろんなイメージを持たれて大変だよなぁ、というところに同情しているのかもしれない。ミステリアスだとか何考えてるかわかんないだとか身勝手だとか、ほっとけっつーの。

     ……はふう。
     それでもやはり、桜にまつわる、として集めればこれだけの異形が集まるというのは壮観。異形コレクション・桜憑きでした。まぁテーマで購入を即決しているあたり、自分もしっかり桜に魅せられている側の人間なのである。
     桜の森の満開の下に持ち出すには、絶好の一冊。
     桜前線が未だの方は是非どうぞ。
     それではまた来年、お達者で、である。

     ☆5

  • 井上雅彦氏監修アンソロジー。書き下ろしと再録作品が半分位の割合で収録されています。
    能、歌舞伎、西行桜に道成寺。妖しくも美しく、人を狂わせる存在として描かれている桜。
    花見客で賑わう公園の桜と、ここに描かれている桜は全くの別物です。きらびやかな物が
    溢れる現代では桜に狂わされるというのにピンと来ない、かも。けれどあまりにも見事に
    咲いているのを目にしたら、この下に何か(誰か)が埋まって…なんて想像したくもなる。

  • 新作とスタンダード作品とを収録した≪綺賓館≫シリーズの3冊目。今回は「桜」及び「花」をテーマとしている。

    書き下ろしの新作に……そして時にはスタンダード作品と言われているものですら、梶井基次郎の「桜の樹の下には」の影響が見て取れるのは非常に興味深い。「桜」テーマでのもう一つの名作、坂口安吾の「桜の森の満開の下」も収録。

    ……毎年見るものでありながら、桜の美しさにどことなく落ち着かなくなってしまうのは、美しさの中に“妖しさ”が存在しているが故なのだと改めて気付かされる。

    「花見んと 群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎にやありける  西行」

  • 既読の話多し。「舞花」は発想ユニーク。古い作家の方が総じて面白かった。

  • タイトルに惹かれたものの、最初の編が退屈で、速読で無理矢理読んだ。「春泥歌」が一番「異形」らしくて面白い。「舞花」も。他「シロツメクサ、アカツメクサ」「阿弥陀仏よや、をいをい」等が面白い

  • 正しい題名「櫻憑き」
    (収録作品)桜湯道成寺(菅浩江)/阿弥陀仏よや、をいをい(五代ゆう)/花や今宵の…(森真沙子)/約束の日(速瀬れい)/ある武士の死(菊地秀行)/闇桜(竹河聖)/花十夜(井上雅彦)/人花(城昌幸)/花をうめる(新美南吉)/シロツメクサ、アカツメクサ(森奈津子)/花畠(吉行淳之介)/舞花(藤田雅矢)/桜の森の満開の下(坂口安吾)/花の下(倉橋由美子)/春の実体 憂鬱なる花見(萩原朔太郎)/春泥歌(赤江瀑)/山桜(石川淳)/十六桜(小泉八雲)/桜の樹の下には(梶井基次郎)

  • …春って、エロいわ…
    目当ては安吾の「桜の花の満開の下」だったのですが。
    安吾はもちろん素敵でしたが、外にも予想外に良作が沢山入ってて、非常に面白かったです
    特に百合ものは、いい。森奈津子のシロツメクサ、アカツメクサ、人を喰う花、城昌幸の人花も良かった。新美南吉の花を埋めるもノスタルジックでたまらん。菅浩江の桜湯道成寺も、ほの暗くうつくしい。
    アンソロジーってあまり読んだことがなかったけれど、こんなにいいものだったとは…
    そもそもテーマが桜、という、かなり興味をそそられるものだったというのもあるとは思うけど

    予想外の喜びといえば、梶井基次郎!
    桜の花の下には死体が埋まっている…。あまりにも有名です。この人が初出だったとは。古典モノだと思っていた。
    読み返したかったので、何と運がいいことかと。
    機会があったら「檸檬」も読み返したい…

    不満なのは装丁。何この蛍光ピンク…もっと和風っぽくまとめてほしかった

  • オリジナル&スタンダード

  • 井上雅彦「花十夜」が一番好き。ショートショートと言うのが、やはり力の見せどころか。
    スタンダードに、坂口安吾「桜の森の満開の下」があるのはやっぱりか、という感じ。でもやっぱりこれは名作。これほどにまで桜を恐ろしいと感じられる物語はそうそうない。
    全体的に、かなり良かった。けどやっぱり和風だし、装丁もっとおとなしい方がよかったんじゃ……(笑)。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年生まれ。SF作家。2015年、『放課後のプレアデス みなとの宇宙』のノベライズを上梓。他の著作に『おまかせハウスの人々』『プリズムの瞳』など。本作がはじめてのビジュアルブックとなる。

「2016年 『GEAR [ギア] Another Day 五色の輪舞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

菅浩江の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×