リカバリー・カバヒコ (文芸書・小説)

著者 :
  • 光文社
4.08
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感想 : 667
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334100520

感想・レビュー・書評

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  • 王様のブランチか何かで紹介している映像を見て、興味がわき読んでみました。

    感想を一言。
    ホットした。

    著者のやさしさを感じられる文章は、読者に安心感を与えます。
    登場人物一人一人に著者の愛情・やさしさが投げかけられている感じが伝わってくるんです。
    「大丈夫。大丈夫だよ」と、ささやきかけるような優しさっていうんでしょうか。
    その優しさは、登場人物を通して読者である私にも伝わってきました。

    この本に登場する人物たちは、年齢・性別・職業(学生もいる)、全部バラバラ。
    しかし、彼らの持っている感情は彼ら特有のものではなくて、いくつになっても生まれてくるものだと思うのです。
    (学生だからって他人事ではない)
    誰かに嫉妬する気持ちや、自分のやりたい事を見失ってしまっている事や、誰かと理解し合いたいのに出来ないとか。
    生きてると醜い自分ってどうしたって出てきます。
    彼らが自分の醜い感情とどう折り合いをつけていくのか、そこからどうやって前を向いて歩いていくのか。
    マイナスの感情をプラスに持っていく過程は、私たちが生きていく上で参考になると思いました。

    生きているとイロイロある。
    小さなことから大きなことまで。
    誰かに本音を言いたいけど、その誰かがいないって事はよくある事なんですよね。(自分と近い関係であればあるほど言えなかったりする)
    カバヒコに変わる何かがあると困った時の心の拠り所になりそうです。
    (自分の話を聞いてくれるのは人間でなくてもいいのです。むしろ、反応を気にしなくていいモノの方が好都合なのかもしれません)
    私も自分のカバヒコを探そうかな。

  • 公園にある古いカバの形をした遊具を巡る短編集。
    誰でも経験したことのある悩みと葛藤が、公園に来たのをきっかけに緩やかに解決していく。
    定石通りの話が多いが、そんなに人生に劇的なことは起こらない。等身大の小説だった。話がリンクするのも、楽しめた。

  • タイトルのとおり、カバヒコを中心に話を展開、と思いきや。他にもキーになる人とかお店とかあって、謎解きみたいで楽しかった。

    カバヒコ、すごい。カバヒコをきっかけに、自分の弱い部分に向き合う各話の主人公たちもえらいな。
    そしてカバヒコにみごとな冠の”リカバリー”の名前を付けたのはあの人だった!

  • 友人からのプレゼント
    このブログでもたくさんの方の本棚に
     
    大好きな青山美智子さん
    ワクワクと手に取った

    帯から
    ≪公園の古びたカバの遊具、カバヒコ。カバヒコに触れると、治したいところが回復するという≫

    表紙カバーのとぼけたカバに悩殺される
    そして裏表紙のカバのお尻にウひょひょムニュ(わけわからず)

    5話の短編それぞれの悩み
    小さくても本人は落ち込む
    でも!カバヒコがいてくれる

    大丈夫だね
    そう思いつつあったかい気持ちで本を閉じた

    今回もよかったあああ
    設定がうまいなあ、まいったなあ

    ≪ カバヒコは 泣いて笑って だいじょうぶ ≫

  • 青山さんの短編集は安定的に面白いです。

    新築分譲マンション「アドヴァンス・ヒル」。そのマンション近くの団地の公園にある、よくあるアニマルライド。
    塗装のあちこちはげた古めかしいカバですが、自分が治したい体の一部を触るとそこが"回復する"という都市伝説がある。

    少し弱っている心に優しく寄り添ってくれるような作品でした。

  • 全5話からなる連作短編集。
    ストーリーは、新築分譲マンションのアドヴァンス・ヒルという場所を舞台に展開します。
    近くの日の出公園には、都市伝説として知られる、アニマルライドのカバヒコがあります。
    それに触れると、自分が治したい部分が回復すると言われています。
    主人公たちは自分たちの悩みを打ち明け、カバヒコを頼りにして自己成長を遂げていくのです。

    青山さんの独自の世界観が存分に詰め込まれていて、文体も優しく読みやすいです。
    お話に登場する主人公の年齢が異なるため、幅広い年齢層の読者に訴える作品だなと思いました。

    さらに、この本を読むことで自身の課題にも向き合い、考えを整理し、新たな視野を開けるかもしれないと勇気をもらいました。
    この作品は、読むだけで心に安らぎをもたらし、いつでも元気をもらえる存在。
    本棚に置いておくだけでもご利益があるかもしれませんね…

  • 相変わらず軽快で優しく温かい青山美智子らしい作品。カバヒコ自体に不思議な力はないが、前向きになれるきっかけのアイコン。そんなものがそばにあるといいなと思えます。

  • 青山さんの優しさがギュッと詰まった連作短編集。

    どの話も共感できる。

    中でも、カバヒコの由来が良かった。親子のような近い存在ほど、素直になれず意固地になる。ありがとうの一言も言いづらい。奥さんの美弥子さんがいい潤滑油だった。

  • 読書備忘録788号。
    ★★★★。

    青山さんの最新作。図書館予約が回ってきました。
    今回は公園のアニマルライドのカバ。カバヒコ。
    身体の治したいところを触ることで治るという。
    人呼んでリカバリー・カバヒコ。カバだけに・・・、というダジャレ付き。
    ただネタバレですが、これまでと違って都市伝説を作ったのは、とある親子。最終話でした。
    この最終話が無かったら、★4つはいかなかったかも。それくらい良かった最終話。

    舞台はとある東京近郊の街。
    新築マンション、アドヴァンス・ヒルが分譲され、そこに住み始めた登場人物達。
    一方、この街は古くからの団地や、カバヒコがいる日の出公園など寂れ感も併せ持つ。

    話は戻ってカバヒコ。
    治したい身体の部位を触ると治ると。そこは青山さん。やはり連作短編の主人公たちのメンタルを優しく包み込む。ということで、主人公たちのメンタルを簡単に触れときます。

    「泰斗の頭」
    宮原泰斗、高1。
    引っ越す前の中学では成績優秀だった。この街に引っ越す前に、推薦で進学校へ。
    そしたらびっくり、一気にビリに。なんでこんなにバカになってしまったんだ。バカを治したい!
    同級生の雫田美冬さんからカバヒコの都市伝説を教えてもらい頭を触る。
    カバヒコ!頭を治して!

    「紗羽の口」
    樋村紗羽。夫の佳孝と保育園に通うみずほの3人家族。
    保育園のママ友たち。ママ友たちとの関係に悩む。感謝のことばを忘れないように、ありがとう。気分を害してしまったら、ごめんなさい。
    なんか違う。苦しい。何も言えない。なんとかしてこの口!カバヒコ!

    「ちはるの耳」
    新沢ちはる。26歳。ブライダルプランナーだった。耳管開放症になって休職した。
    原因はストレスだと言われた。
    同僚で好きだった洋治。イイ感じだったので付き合うと思っていた。中途で入社してきた澄恵。洋治を奪われた?二人の会話を聞きたくない!
    細かいことに拘る客。もういい加減にして欲しい!
    そして耳がおかしくなった・・・。
    カバヒコ!

    「勇哉の足」
    立原勇哉。小4。
    走るのはやだ。駅伝大会のメンバーになりたくなくて、足を痛めたことにした。仮病だ。
    あれ、本当に痛くなった。なんで?
    カバヒコ!

    「和彦の目」
    溝端和彦。52歳。出版社勤務。
    老眼。若手の企画書。気に入らん。俺はやり手だった。
    そしてもうひとつ悩み。
    日の出公園のそばにあるサンライズ・クリーニングを切り盛りする母ゆきえ。
    息子の世話にはならんと意固地に。
    それなら勝手にしろと同じく意固地になる和彦。
    最近ずっとぎくしゃくする親子関係。
    そして、母が倒れる。クリーニング屋を閉めるという。勝手にしろと。
    もやもやの中、日の出公園のカバヒコのところに。
    懐かしい・・・。昔、母と共にお世話になった・・・。
    そこに小学生の少年がいた。勇哉。カバヒコに足を治してもらったと。なんと、母と自分たちが起源の都市伝説が生きていた!
    そして、勇哉は和彦に言う。
    「カバヒコは僕の足を治してくれた。でもそれは元の足じゃないんだ」そう。バージョンアップした足だった。決して元には戻らない。老眼も親子関係も。
    Ver2.0でいいじゃないかと。
    お互い求めているものに好かれていないことを恐れていた。距離をとってしまっていた。好きなだけに。
    老眼も見えるものが変わっていく。それで良い。

    これがイイ!良すぎる!
    和彦の妻、美弥子さんが母ゆきえをずっとサポートしてくれていた。
    そして同じく歳とって皺やシミが増えた美弥子に掛けた言葉。サイコーの一言!
    言えるか!俺!言えるか!俺!
    頑張れ俺!

    最後にひとこと。
    カバヒコがすごいのではなく、サンライズ・クリーニングのゆきえお婆ちゃんのアドバイスが完璧なんです。だってカバヒコ都市伝説はゆきえさんそのものなんだから。笑

    • shintak5555さん
      ユキさま。
      汁出ますよ。ホントに。笑
      読みながらの脳内映像の美弥子さんの顔は、紛れもない妻でした。が〜ん!
      ユキさま。
      汁出ますよ。ホントに。笑
      読みながらの脳内映像の美弥子さんの顔は、紛れもない妻でした。が〜ん!
      2023/12/20
    • shintak5555さん
      ユッキーさまだった。さーせん!
      ユッキーさまだった。さーせん!
      2023/12/20
    • yukimisakeさん
      奥さんに!!笑笑。それはそれで素敵だー(о´∀`о)
      あ、ユキで大丈夫ですよ、ゆーき本さんユキって呼んで下さってるので♪
      奥さんに!!笑笑。それはそれで素敵だー(о´∀`о)
      あ、ユキで大丈夫ですよ、ゆーき本さんユキって呼んで下さってるので♪
      2023/12/20
  • 青山美智子さんの本はどれも心がほっこりする。登場人物それぞれの悩みがとてもリアルで誰もが悩みそうな事、だからこそ読んでいて面白い!すごく壮大ではないけれど、日常の中にある心のツマリみたいなものがとれるこの本が私は好きだなぁ♪

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著者プロフィール

1970年愛知県生まれ。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国し、上京。出版社で雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。第28回「パレットノベル大賞」佳作を受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が、第1回「宮崎本大賞」を受賞する。『お探し物は図書室まで』で2021年「本屋大賞」2位に、『赤と青とエスキース』で2022年「本屋大賞」2位に選ばれる。他の著書に、『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『マイ・プレゼント』(U-ku氏との共著)『月の立つ林で』『リカバリー・カバヒコ』等がある。

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