- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334102579
感想・レビュー・書評
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★5 引きこもり中年男性が侵してしまった事件… 8050問題の背後にあるリアルな原因と結果 #鼓動
■あらすじ
長い間ひきこもり生活を続けていた秀郎は、近所に住むホームレスの老女を公園で燃やしていた。通報を受けた彼は逮捕され、さらに自宅で父も殺害したと供述をする。
事件の背景について捜査を進める警察であったが、殺害された老女の身元がわからない。かつて子育てに失敗していた女性刑事が捜査を進める。彼女は殺害された老女に自分自身の将来を重ねてしまうのであった。
犯人と被害者にどんな背後関係があったか、刑事が見えた情景は…
■きっと読みたくなるレビュー
家族とは、親子とは、生きるってなんなのか? 途方もないテーマなのに、目の前の現実でもある。真正面から書き切った社会派ミステリー ★5です。
本作のストーリーは事件の背景や被害者の特定するという奥貫綾乃刑事の目線で進行する。それと並行して、ひきこもりである秀郎の目線で、幼い頃から事件に至るまでが綴られてゆく。
はぁ…苦しすぎるよ。実は私も同世代。育ってきた時代も、悩んでいたことも、そんなにも大きく変わりはない。ほんの少し人生の選択を間違えば、彼になっていたのかもしれない。
本書の半数を費やす彼の独白は、まさに日本の失われた30年を描いている。世界情勢や経済環境は常に変動し、日本も若者も、全員がその日その時を必死で生きてきた。それなのにいつの間にか遅れをとり、取り残されてしまった令和の現在。なんかもう悔しいのか腹立たしいのか、本を片手にさめざめと泣いてしまいました。
また子育てに思い悩み、苦心する女性の痛みが伝わり過ぎて… 自分の判断を正しいと言ってほしい、頑張ったよと言ってほしい、慰めてほしい。ちゃんと愛情を持ち合わせ、生物としても間違っていない。そして、そうだと信じたい。実は私も子育てには向いていなかったという反省があり、妻には感謝がしきれないのです。
なお小説やミステリーとしての品質も高いです。文章は気品があって、緩急のつけ方やリズミカルなところが大好き。謎解きとしてもハッとさせられ、心臓が縮んでいくようでした。
辛いお話ですが今年を代表する社会派ミステリーだと思います。心臓が動いてさえいれば希望はある。
■ぜっさん推しポイント
高齢者が多くのこっているにも関わらず、人口が減少して経済も発展しない。自分自身で問題を解決できる人であれば生き残れるが、病気や性格、家庭環境でつまずいた人たちはどうなってしまうのか。問題を先送りにして当面は生活ができていても、いったん経済や健康状態に問題が発生すれば一気に生活困窮状態になる。
8050問題、あと数年もすれば80歳の親たちは平均寿命を迎えはじめる。
本作はフィクションですが、NPO報告書にはリアルな実態が書かれていました。我が国に住んでいる、ひとりひとりの衝撃的な事実がそこにありました…
読んでいると途方に暮れてしまうのですが、自分にできることは何だろうと考え込んでしまいました。まずは知ること。ひとりでも救うと決めること。そして行動することではないでしょうか。 -
奥貫綾乃刑事…なんか、名前知ってる…!!「絶叫」と「Blue」にも出てきてたんだ!!なんの予備知識もなく、ただ好きな葉真中顕さんの新作だからと読み始めました。やっぱ、葉真中顕さんの社会派ミステリーはスゴイです。
「明日は今日より豊かになる」で始まるプロローグ…。ホームレスの老女が殺された上に燃やされる事件が発生、犯人は近くに住み18年もの間、引きこもっていた草鹿秀郎で現場で逮捕された。草鹿秀郎は父も殺害したと自供する。この事件を捜査するのが、桜ケ丘署の巡査部長で奥貫綾乃、彼女は過去に子供を育てることができないと自ら家庭と縁を切った経験をしている。
捜査が進む中、明らかになる老女の正体と、引きこもり問題と引き出し屋、8050問題、貧困ビジネス、虐待、労働環境の問題等々…いろんな問題が絡み合って、これぞ葉真中顕さんの作品っ!って感じになります。犯人の草鹿秀郎の生い立ちからこれまでの生き様を読んでいるうちに、あのときか…私は何してたかな??とつい思いを巡らせたりしました(これは関係ないけど)。親子がお互いを愛せないゆえの結末だったけれど、草鹿秀郎が生きることを選んだことが救いのように感じました。-
ヒボさん、おはようございます(^^)
読みましたよぉ~葉真中顕さんの新作っ♪
図書館で1番に予約できたんです!
この作品、確かに厚...ヒボさん、おはようございます(^^)
読みましたよぉ~葉真中顕さんの新作っ♪
図書館で1番に予約できたんです!
この作品、確かに厚みがあるけれど
読み始めると止まらないです!!
夢中で読んでしまいました(^-^;
葉真中顕さんの世界を堪能しました。
そんなこんなで、私も積んである自分の本は
全然減っていかないんですけどねぇ…。2024/04/15 -
読み始めると止まらないのがわかってるから買えませんでした(笑)
図書館で予約1番はステキですね♪
横浜は人口が多いので、新刊なんて50番目...読み始めると止まらないのがわかってるから買えませんでした(笑)
図書館で予約1番はステキですね♪
横浜は人口が多いので、新刊なんて50番目位で予約出来たら逆の意味でビックリします^^;
1ヶ月2人としても...約2年...
待てるかーいΣ\(゚Д゚;)2024/04/15 -
ヒボさん、止まらないんです(*'▽')
田舎の図書館は、蔵書は少ないけれど
でも結構図書館のサイトをチェックすれば
人気の新作も1...ヒボさん、止まらないんです(*'▽')
田舎の図書館は、蔵書は少ないけれど
でも結構図書館のサイトをチェックすれば
人気の新作も1番に借りられたり、
ちょっと待つかなっていう場合でも6番目くらいには
予約入れられるんです♪
取り置き期間も2週間あったりするんで
待たされることもありますが
年単位で待つということはないですね!!
予約できるのは7冊までだったりするけど
結構便利に使わせてもらってます(*^^)v2024/04/15
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やってもた!
女刑事奥貫選手シリーズの三作目らしいですわ
三作目から読んでもた!つかなんなら葉真中顕さん自体初読です
ちゃんとかなさんのレビューに書いてあったのにやってもた!
でも安心して下さい
三作目から読んでも全く問題なく楽しめましたよ!(光文社の手先マン現る)
はい、本作はいわゆる「8050問題」を取り上げた社会派ミステリーとなっております
いやサラッと書いてるけど、そもそも「8050問題」って何よって感じよね
お前が不勉強なだけでみんな知っとるわ!って感じ?
そうだとしても書いちゃう
恥を晒すだけだったとしても書いちゃう
書いちゃうっていうかコピペしちゃう
なぜならそれが生きるってことだからだよ!
恥を晒すってことが生きるってことだからだよ!
わいの『鼓動』を感じるがよろし!
8050問題(はちまるごーまるもんだい、はちぜろごーぜろもんだい、はちじゅうごじゅうもんだい)は、長年引きこもる子供とそれを支える親などの論点から2010年代以降の日本に発生している高年齢者の引きこもりに関する社会問題である。背景には在宅介護問題がある事が多い。高齢者と中年の引きこもりは親子依存もしくは扶養義務による事も多い。(ウィキペディアより引用)
ふ〜ん(リアクション薄いな)
いわゆる団塊の世代と団塊の世代ジュニアの年代よね
その団塊の世代ジュニアと就職氷河期がぶつかって引きこもりがどかんと増えたわけね
で、その引きこもりを経済的に支えてきた親世代が高齢化して収入が激減したり、亡くなってしまったりすることで
親の代わりに行政(つまり社会全体やね)が支えなきゃならなくなってきたんだけど
こっちだってそんなお金ねーわ!どうする?ってことなんよね
「自己責任」って切り捨てちゃっていいの?ってことよ
いやそれはマズイよねやっぱ
マズくねーわ!って意見の人もいるんだろうけど、わいは切り捨てたくないわーって思うのよね
だってそこに『鼓動』があるんだもん
でもなー
こっちだってそんな金ねーわ!状態でもあるんよなー
なんとかならんかなー
うーん、と、とりあえず諦めずに考え続けましょう!(結論が出せない悪い会議の見本のような終わり方)-
いや、ポアロシリーズ途中はどうでもいいけど最初と最後は『スタイルズ荘の怪事件』と『カーテン』やし金田一も最初と最後は『本陣殺人事件』と『病院...いや、ポアロシリーズ途中はどうでもいいけど最初と最後は『スタイルズ荘の怪事件』と『カーテン』やし金田一も最初と最後は『本陣殺人事件』と『病院坂の首縊りの家』で統一しないとだーめ2024/05/08
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2024/05/08
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2024/05/08
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重い一冊。
時代の流れを追い事件の真相を追う。
これぞ葉真中さんの社会派ミステリ。
衝撃的な老女殺害事件。
その犯人とされる男はいわゆるひきこもり。
些細なことからの社会との断絶、"承認"に縛られた彼のもがきがどんどん叫びという重みとなってのしかかる。
もしかしたら自分はもちろん、誰もが陥ったかもしれない怖さを含み、終始、心を突いてきた。
そして今作は犯人と同世代の奥貫刑事の向き合い方が印象的。
彼女自身の心情を随所に重ね合わせる姿、終盤、心からほとばしった彼女の言葉が良い意味で重く胸に落ちてきた。
言葉の救いが心に残る。 -
「ロング・アフタヌーン」以来、葉真中顕さん2年ぶりの新作長編は〝奥貫綾乃刑事シリーズ〟3作目にして著者らしい社会派ミステリ。何ともやりきれない「引きこもり」「育児放棄」がテーマの話で、本作でも団塊ジュニア世代の恨みつらみが世相とともに描かれる。「Blue」以降同様のパターンが続き、「ぼく」の独白パートでの時代背景詳述に〝またか〟という思いや違和感があった。が、そこはやはり葉真中さん、必然性があったからこそで、終盤の盛り上げと全て納得のいく締め方はさすが。タイトルも刺さった。
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葉真中さんの作品なので大どんでん返しがあるのかなと思って読みましたが、本作は大きなそれではありませんでした。
社会派ミステリーに分類されるであろう本作は、引きこもりと8050問題を軸に描かれています。
相当に細かく取材や勉強をされたのでしょう、40~50代になるまで引きこもりを続けている人の心理描写はリアリティに富み、重く心にのしかかってくるものがありました。
本作には「自己責任」という過去の一時期に多用されたキーワードが登場し、引き込もっている本人が自身に向けて投げ掛けてもいますが、果たして全てが「自己責任」なのかと問われると答えに窮するのは確かです。
しかしながら、100%周囲の人間関係やその他の環境が原因かと言うとそうではなく、引きこもり問題の難しさを提示していると感じました。
さて、ミステリーとしては私自身がどんでん返しを期待して慎重に読み進めていたせいか、真相の半分は予測できていたためさしたる驚きはありませんでした。
ミステリーとしては普通ですが、引きこもりに係る描写と問題提起のクオリティの高さが際立つ一冊だと思います。
読むタイミングによって抱く感想が変わりそう。それくらい難しいテーマでした。
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葉真中顕さん初読みにして最高傑作に感じた作品でした。いまだかつてない心理描写ミステリーだと感じました。読み始めてなんともない展開がだんだんと心躍らせるストーリーになってきました。引きこもり、ホームレス、つながりなどあった驚く展開にびっくりです。刑事奥貫綾乃の経歴がいまだかつてないダークなイメージで出てくることが一風変わっていました。始まりのプロローグの言葉とラストの言葉がつながっていくことへの発見、そして最後の「一九七四年六月十三日のことだった」の意味を考えて読み終わりました。あなたもぜひぜひこの最高傑作を堪能して下さい。
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この著者の小説を初めて読む。「ロストケア」の映画は見たのだけど。
引きこもりの青年と、殺人事件を追う刑事の回想が交互に描かれて、真相が次第に明らかになる、という構成で描かれたミステリー。
何のために人は生きていくのか、という問題に真正面から取り組んだ作品で、好感が持てる。なかなか真正面から「正解」を見出そうとするのは、どの作家も、気恥ずかしくて避けてしまうことだし。また、文学ってものは、「正解」を嫌って、むしろ蔑む傾向があるし。
だから何だか、この小説からは、文学の取り澄ました崇高さを超えて、しんどい人たちへのエールを送ろうという意志が感じられるのだ。
いい小説だと思う。多くの人に読まれてほしい小説です。
コメントありがとうございます。
そうですね、私も大学中退してすぐは社会からはみ出している時がありまして。...
コメントありがとうございます。
そうですね、私も大学中退してすぐは社会からはみ出している時がありまして。あのまま問題を先送りにしていたら、果たしてどうだったか。怖いよ…
あと数年すると、溢れ出てくる問題なのは間違いないですよね。
ほんと、やりきれないです。
湯浅誠が「滑り台社会」「溜めのない社会」と言って、社会の問題を言い当てて、約15年経ちましたが、全然変わっていない、むしろ酷く...
湯浅誠が「滑り台社会」「溜めのない社会」と言って、社会の問題を言い当てて、約15年経ちましたが、全然変わっていない、むしろ酷くなっているのかもしれません。
読んでみようと思いますが、予約人数7人!半年後になりそう。
いやホントですよ。次々と変わる世界情勢や経済についていけず、日本の凋落っぷり...
いやホントですよ。次々と変わる世界情勢や経済についていけず、日本の凋落っぷりが目に余る。失敗してもいいから、次々と判断していくことだと思ってるんですがね…頑張れ日本
そして私も何か社会貢献ができればと思わずにはいられませんでした。半年後でもいいので、是非お時間とって読んでみて下さいmm