バッタを倒すぜ アフリカで (光文社新書 1305)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334102906

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  • バッタを倒すぜ アフリカで
    著:前野ウルド浩太郎
    光文社新書 1305

    おもしろかった
    バッタ博士は変な人である
    モーリタニアの所長からもらった、ウルドをミドルネームにつかい、現地の民族衣装で授賞式にのぞむ
    砂漠にバッタが棲んでいるのも、変だが、空を黒くして跳ぶのは、バッタじゃなくてイナゴなんじゃないの?
    モーリタニアも、モロッコも人懐っこいイスラムの国、日本が日出ずる国であれば、モロッコは日沈む国というのもいい。

    気になったのは、以下です

    ・この本は、すなわち、異世界転生モノ的に、アフリカのバッタの繁殖行動を明らかにしようとする研究者の活動話を大国柱とし、それを、「婚活」「仕事」「旅」という裏話の三本柱で支えたものである

    ・モーリタニアは世界有数のバッタの発生源、「フロントライン(最前線)」であり、バッタたちとの激戦区として有名である

    ・データをとらないと研究者として死ぬ

    ・これから私がすべきは、自分というフィルターを通じて、調査対象である自然現象を数字に変えてデータをとり、それに基づいてどのような傾向があるのかを統計解析し、グラフや表を作成し、その結果を基に考察する、ということである

    ・自分が研究する際には、四つの「はかる」を大切にしている
      図る⇒計画
      測る⇒長さ
      量る⇒重さ
      計る⇒時間

    ・バッタの野外調査がほとんどされてこなかった理由の一つは、バッタが灼熱地獄のようなサハラというバリアの中に巣食い、研究者を寄せ付けなかったからだろう。バッタに接近するためには、まず、灼熱のサハラを攻略しなければならない

    ・野外で得られたデータには、「たまたまだったんじゃないの?」という疑惑が常につきまとう。
     そのとき、たまたま風が吹いていたから、たまたま鳥が飛んでいたから、と、いくらでも別の解釈ができてしまう
     再現できるもの、だけが科学として認められる

    ・自然科学では、データを収集する前に、既知の情報や予備的な観察、実験を基にして、まずはすべきことがある。それは、仮説を立てることである

    ・巨人の肩の上に立つ

    ・自分に足りないものを補うことができれば、自然と成長でき、仮説検証と論文発表に挑むことができる

    ・なぜ銀行を襲ったのかと聞かれた、ウィリー・サットンは、「そこに金があるからだ」と答えた
     なぜ、ラバーのオスは、丘に集まるのか?なぜならば、「そこにメスがいるからだ」
     私たちも同じのはず、「なぜ男はナイトクラブに行くのか そこに女がいるからだ」

    ・砂丘エリアを超えるとき、1冊の本をいつも思い出す 上温湯隆氏の「サハラに死す」だ。

    ・私はずっと風を待ち望んでいた。風は時に大雨をもたらす。大雨さえ降れば大量のバッタが発生し、一気に研究を進めることができる

    ・「前野さん、何か問題に直面したら、その問題を紙に書き出してみたらいいですよ。頭の中で整理できて、次に何をしたら解決できるのか、思いつきやすくなりますよ」

    ・アフリカでは、「欲しいものは即買いせよ」が鉄則だ。おなじ商品に出合えない可能性があるため、一気にまとめて買う必要がある

    ・組織の長たる者「リーダ:引っ張っていく者」のごとく、メンバーを率いていかなければならないわけだが、リーダーが一番がんばらないことには、誰もついてこないとのこと

    ・繁殖期に別居する動物では、繁殖活動に参加する数が多いほうの性が互いに競争して自分の魅力をアピールし、少ないほうの性が優先的に交尾相手を選ぶ傾向があるようだ。
     大概、数が圧倒的に多いオスの集団では、メスにパートナーとして選んでもらうために、オス間で何らかの抗争がおこなわれている
     別居することで、メスはオスからの不要な嫌がらせを受けることなく、必要な時だけオスと交尾し繁殖できる上、たくさんいるオスの中から好みのオスを選ぶことができる。オスとしても繁殖の準備が整ったメスに巡り合うことができる

    ・乾杯は、宴会が始まる前のささいな出来事だが、フランス人は丁寧に時間をかけ、すべての参加者同士、一人残らず乾杯をしてから一口目を味わう

    ・実はサバクドビバッタのメスは、オスと交尾せずとも単為生殖でも排卵し、子孫を残すことができる

    ・モーリタニアは、イスラムの教えにより、持っている人が持っていない人に分け与えるのは普通のことで、素直に喜んでもらえる。あげたくなければあげなくてもいいし、あげたい人があげればいいだけで、あげなかったからといってとやかく言われず、非常にスムーズに世の中が回っているように思う

    ・何かをやり遂げた者は、常に3つのものに恵まれていたという。天の時と、地の利と、人の和である

    目次
    まえがき
    第1章 モーリタニア編―バッタに賭ける
    第2章 バッタ学の始まり
    第3章 アメリカ編―タッチダウンを決めるまで
    第4章 再びモーリタニア編―バッタ襲来
    第5章 モロッコ編―ラボを立ち上げ実験を
    第6章 フランス編―男女間のいざこざ
    第7章 ティジャニ
    第8章 日本編―考察力に切れ味を
    第9章 厄災と魂の論文執筆
    第10章 結実のとき
    あとがき 名前とお礼と挨拶と
    参考・引用文献

    ISBN:9784334102906
    出版社:光文社
    判型:新書
    ページ数:608ページ
    定価:1500円(本体)
    発行年月日:2024年04月
    2024年04月30日初版1刷
    2024年05月15日2刷

  • 前作は「バッタを倒しにアフリカへ」の続編。

    著者の研究が成果を上げて多方面から称賛されていて、前作から読んでいる身として嬉しくなった。

    今作は前作よりもバッタ研究をメインにしているものの、話題はあっちこっちに飛ぶ。読むにあたりそれが読者にいいか悪いかになるけれど、それは著者もことわりをいれてるし、それが面白い本なのです。
    バッタ研究に関しての努力や工夫はもちろん、生活や人間関係もバラエティ豊かで楽しげに書かれていて600ページのゴツさ驚いた読み始めが嘘のようにサクッと読めた。

    その中の1つに、日頃から常々思っている「人生なにが役に立つかわからない」というのを説得力を持って教えてくれる場面がよくあり感心しつつ学びにもなる。
    ただ、同じように生きるには自分には勇気や器がまったく足りないし無理だ。

    誰にでもおすすめできる本だけど、どちらかといえば学生や若い方にお薦めしたい。

    きっと得るものはたくさんあると思います。

  • バッタを倒しにアフリカへの続編
    前作が非常におもしろかったので迷わず購入

    前作より専門性(研究に関する内容)が重圧になっているので
    その辺りは人を選ぶかもしれません。ただ、著者の健在の文章力でそのあたりはカバーされ、約600ページあっという間に読み切れると思います!

    私も大学院まで進学し、単著での論文執筆までは至りませんでしたが、研究に携わった経験があります。後半論文執筆時の前野氏の苦悩や、研究に関する様々なしがらみ共感できる部分が多かったです。

    前野氏も断っているように、話がぶっ飛びまくりで、
    最後まさかの夢の話になりますが、これが結構しみました。

    小学生には少し難しいかもしれませんが、中学、高校生あたりの子供には夢の考え方の一つとして、読んでみてもらいたいなと思いました。

    私も学生時代にこの本に出会えていたら、研究に対するアプローチの仕方の幅がもう少し広げられれたのかなと思います。仮説をたてて最もらしい証拠を集めていく、この当たり前のプロセスが当時はなかなかできていませんでした、未熟。

    最後にもう1人の主人公と言ってもの過言ではない、ティジャニは今回も健在です。なんならパワーアップしているので、前回ファンになった人はその部分だけでも読む価値あると思います笑

  • 今作も面白かった!
    学術的にも、ネタ的にも!
    特に印象深かったのは、研究成果を挙げるには健康第一であること。粘り強い活動を支えるのは、知的体力+基礎体力なんですね。
    前野さんの相変化が今後、素晴らしいものになることを祈念しつつ、さらなる研究成果と新作をお待ちします!

  • 長い。でも面白かった。
    特に論文リジェクトされたり、取材攻勢されて、心が砕けたあたりは、涙

  • ベストセラー『バッタを倒しにアフリカへ』の続編。

    前著は、サバクトビバッタとは何者で、なぜ同バッタを研究するのか、研究に伴う苦楽がコンパクトにまとめられており、非常に面白かった。

    本書は続編ということもあってか、上記の事項は全くと言っていいほど記載がなく、前著を読んでいないと面白さが半減するのではないかと思われる。
    また、著者自身も断っているが、話が多々脱線するので、何をテーマに語っているのかが分かりにくかった。

    とはいえ、コロナ禍での苦難や、学術雑誌に掲載されることがいかに大変であるかを垣間見ることができ、非常に興味深く読めた。

  • 前作よりも、学術的な話題が多め。
    研究者をやることの大変さ、相棒ティジャニ、言語の壁、論文の投稿とリジェクト、国と地域を超えたバッタの大発生と襲来。さらさら〜っと書いているけれど
    、絶対そんなに簡単じゃない。書いてない苦しいことがあっただろうけど、でもやりたいことやって人生楽しそう。
    ティジャニの章は職場で読んでて笑ってしまった。愛すべき相棒の存在は大きいでしょう。

  • 前回、研究内容をもっと知りたいと思っていたので良かった。10年もの研究の帰結が世に出る感慨やいかに。ティジャニで一章使うとは、わかってるね!

  • 今作も笑いをこらえきれなかった。最高。こんな教養新書ないのよ。
    書店で手に取り「分厚い!」と思ったけど、いざ読んだら本当にあっという間。むしろ「これ以上読んだら夜通し読んで仕事にならない。我慢して続きは明日にしよう」と頑張ってセーブしたほど。
    今作では論文執筆に向けた前野さんの奮闘ぶりが描かれている。相変わらず凄すぎる行動力。地道な活動。そして至って真面目なバッタ研究に関する文章と、はっちゃけぶりとのバランスの素晴らしさ。
    そしてティジャニほか周囲の人達への印税の使い方を読むと、本を買っていてよかったなぁと思った。笑

  • ヤバい。
    もし自分が10代前半くらいのときにこの本があって読んでしまっていたら、分もわきまえずに人生の道を踏み違え、バッタ博士をめざそうとしたかもしれない
    ヤバい、ヤバい。それくらいヤバい

    凡人の想像を超える困難に、凡人の想像を超える努力で打ち克ってきたであろう著者が、極めて明るく語る名著

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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