- Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334738426
作品紹介・あらすじ
大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。
感想・レビュー・書評
-
1.著者;荻原氏は大学卒業後、広告代理店に勤務。その後、代理店を退職。コピーライターになり、39歳の時に小説を書き始めました。理由は、「広告の文章は所詮人のもの、誰にも邪魔されない文章を書きたくなった」からとの事。初の長編小説「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞、「明日の記憶」で山本周五郎賞、「海の見える理髪店」で直木賞・・を受賞。他にも多数執筆。
2.本書;企業の実態を描いたサラリーマン小説。主人公の佐倉は大手広告代理店をトラブルで退社。異業種の「珠川食品」に再就職。ここでも問題を起こし、リストラ要員の待機所“お客様相談室”に左遷。それにもめげず、同僚達とクレーム処置に奮闘し、人生を見直していく話。「珠川食品」は、製造管理・商品管理がいい加減な会社。誰も責任をとりたくないので、正当な苦情すら闇に葬ろうとする。そんな環境下での生き方(人生への気付きと再生)が、読者にユーモアと希望を与える。16章構成。
3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と合わせて記述);
(1)『第1章』より、(佐倉)腹が立つのは、肩書だけで人を抑えつける奴だ。名刺一枚で他人を動かせると信じてる奴らだ。(同期の高野)「ぜぇぇったい出世しないな、お前。上にしがみついて、下を蹴落とす。それが出世ってもんだ。上司にペコペコ、スリスリ。部下にガミガミ、ネチネチ。他人に厳しく、自分に甘く。そういう人間が出世するのよ」
●感想⇒尊敬する上司に教えられました。「上司のタイプを『対上司or対部下×厳しいor優しい』で4区分してみなさい。良い上司は、上司にも部下にも厳しい人。悪い上司は、上司に優しく部下に厳しい人だ。部下を持ったら、良い上司を目指しなさい」と。振返ると、色んな上司に仕えました。彼のように、人生の道標を教えてくれたのは少数でした。ある上司は、部下にやたらに厳しく気分的・感情的に部下を叱る人でした。しかし、私事になると、勤務中にも拘らず、部下のいる執務室で、息子の世話の依頼を電話で知人に度々していました。秘書曰く、「人間性を疑います」と。“人のふり見て我が振り直せ”ですね。
(2)『第10章』より、(佐倉)「僕らが書いている報告書ってどこへ行ってるんです?」(同僚の篠崎)「製造統括本部のシュレッダーの中。・・持っていく先が製造統括じゃどうしようもない。あっちにしたら自分達のミスだもの。原因究明の為になんて言ってラインでも止めたり、出荷停止になったりしたら、それこそ大騒ぎだ。誰もそんな事しやしない。溝口専務に報告を上げようものなら、クビが飛びかねないし。犯人に証拠品を返してあげちゃってるようなもんだよ」
●感想⇒メーカーが重視しなければならないのは、安全は言わずもがな、次には品質保証です。欠陥商品は誰も買いません。劣悪な物を販売する会社はいずれは顧客に見放されるでしょう。自動車会社の例です。新製品生産の為に、組織横断的なチーム(開発×生産×・・)を編成して検討を重ねると聞きました。クレーム製品についても、関係部署が協力して対応するそうです。ユーザーに安心・安全な商品を提供するという使命から言えば、当然の取組みですね。“悪い情報を隠さず、事実の前には謙虚に襟を正す”という企業風土の構築が必要です。旗振りは経営者。他人事ではないと肝に銘じなければなりません。
(3)『第11章』より、(篠崎)目の前のおでん鍋を指して、「ほら、狭いとこでぐつぐつ煮詰まってさ、部長だ課長だ役員だなんて言ったって、所詮鍋の中の昆布とちくわが、どっちが偉いかなんて言い合っているようなもんだ」・・・「会社の序列なんて、たいした順番じゃないんだよ。一歩外にでたら、ころりと変っちまうかもしれない」
●感想⇒会社の序列は、“社内+関係先”では絶大と思います。そこに勘違いが起こるのです。役職者は決裁権と人事権を持つので、自分が人間としても偉いと勘違いするのです。大企業勤務の管理職や学校の役職者は地域社会での行事(地域清掃等)に消極的な人が多いと聞きます。個人的には、そういう人は少数と思いますが、思い上がりは良くないですね。本田宗一郎さんは、仕事に厳しく、人にやさしい人だと言われ、言行一致の人でした。本田さんが新入社員に贈った言葉です。「会社で長が付けば偉いという事はあり得ない。それは組織での名前であり人間としての偉さではない」と。至言ですね。
4.まとめ;副社長に対する佐倉の言葉、「会社はあんたの遊び場じゃない。社員はあんたのおもちゃじゃない。何の苦労もせずに手に入れた肩書で、人に偉そうにするな」等を読むと、溜飲が下がる人もいるでしょう。しかし、この会社は同族会社の特異性があるのかも知れません。会社は色んな人の集合体です。性・年齢・学歴・職位・・が違い、複雑です。中には常識が通用せず、“会社の中の偉さ”が外でも通用すると、勘違いする輩もいます。会社の将来を真剣に考えている人もいるはずです。本書は、フィクションと割切って読めば、痛快です。但し、世間はそんなに甘いものでは無いと心して読みたいものです。詳細をみるコメント2件をすべて表示-
Fiftyさん人間としての偉さって、意識している時点で可哀想だと思いました。。。いつも、イイネありがとうございます(^^)人間としての偉さって、意識している時点で可哀想だと思いました。。。いつも、イイネありがとうございます(^^)2022/05/28
-
ダイちゃんさんFiftyさん、いいね&コメントありがとうございました。偉さの定義は人によって価値観が違い、様々なんでしょうね。私は、“人への慈しみ”と“感...Fiftyさん、いいね&コメントありがとうございました。偉さの定義は人によって価値観が違い、様々なんでしょうね。私は、“人への慈しみ”と“感謝”と“謙虚さ”が大切と考えます。勝手な言い分で、失礼しました。2022/05/28
-
-
本書は、2002年刊行(2005文庫化)以来、ロングセラーだそう。私が購入した文庫は、書店員100人分の応援「ひと言」を全面帯にしたカバーでした。
カバーには、働く大人のバイブル、全「社畜」を救う物語、背中を押す等、書店員さんの熱い想いが踊ります。これは確かめざるを得ないでしょう。
主人公は、大手広告代理店からポンコツ会社「珠川食品」に中途入社した佐倉凉平・27歳。凉平は、入社早々販売会議で致命的欠点を晒し、販売促進課からリストラ要員収容所?の「お客様相談室」への異動させられます。上司の絶望的な態度や理不尽なクレーマーの電話などの不条理の中で、愚痴をこぼしながらも居場所を得て成長・再生していきます。
今でこそ、パワハラ・カスハラが蔓延する時代ですが、本書の中でも明らかにそれらのオンパレードです。けれども、それらへ泥臭くとも足掻き、しぶとく立ち向かう様が痛快です。競艇狂いのいい加減な先輩・篠崎が良い味を出していて、謝罪のプロ?なのでした。そのクレーマー対応術はハッタリとユーモアもあり、今現在でも参考になる面があるのではと感心します。
著者は、上司や顧客の酷さを描きながらも、笑いと優しさを巧みに織り込み、読み手をスカッとさせてくれます。本書では、カスハラ以上にパワハラ、さらに会社の体質・トップが諸悪の根源ですが、その悪を挫く展開が魅力で、この辺に共感と救い、次への挑戦意欲をもらえるのかなと思いました。
なんか過ごしにくい世の中になったなあと思ってしまいます。小説に救われるのは素晴らしいのですが、小説でしか救われない世の中だったら悲しいですね。 -
はじめての荻原さんの作品でしたが、すごく面白かった。篠崎さんが良い味を出してますね。
-
「嫌いなんですよ、肩書だけで威張ってるやつ。」(文中から)
これには、激しく同意!
上役が、白を「黒い」と言ったって、「白は白や!」って言ってしまうから。
そんな強権発動されると、逆に「知るか!」になる。
まぁ、自ずと遠のくけどね…別に出世だけが目標やないし……………(−_−;)
でも、今の時代は、こんなやつ化石化してきてるかも?
そうあって欲しいもんや。
どう転がったとしても、自分に正直に生きる!これが絶対良い!後で後悔するぐらいなら!
言っときますけど、転がり落ちて行く可能性も大いにある!
でも
「だいじょうぶ、死にゃあしねぇよ」 -
ブックスタジオ新大阪駅店にて、山積みされていて、どうしても気になって購入しました。
有名広告代理店から珠川食品へ転職した、主人公の佐倉。入社4カ月で上司と喧嘩して配属されたのは、リストラ候補者が集まる、「お客様相談室」。「お客様の声は、神様のひと言」という社訓と、一際目立つお客様相談室への電話番号の書いた、商品パッケージのせいで、様々なクレームが毎日鳴り響く。
付き合っていた彼女は半年前から出て行ってしまい、滞納している家賃を人質に取られた佐倉は、仕方なく働き続ける。
ただ、お客様相談室も、そんな人達が集まるような部署だけれども、しぶとく働き続ける人もいて、直属上司の篠崎をはじめとして、これまたクセのあるメンバーが集う…。
公私共に向かい風が吹く佐倉が、どうなってしまうのかが気になって、ページをめくるのが止まらない。
怒涛の不幸の連続で、捨てる神あれば拾う神ありなんていうけれども、やはり拾う神はいないんじゃないかな、なんて思っているところで、「篠崎さん」の登場。
お客様相談室の佐倉の上司である篠崎さん。
私生活は堕落しているけれども、仕事のイロハを佐倉にちゃんと教える…。
掃き溜めに鶴とはこのことでしょうか?そう思わせる、一際輝く、篠崎さん。
小説だから、と言われればそれまでなんだけど、やはり土壇場で、助け舟を出す男はカッコいいですよね。
でも彼は彼で悩みがあるんですけど…。
教訓めいたことを言われても、「デモデモダッテ」の連続で、自分は例外だなんて思ってしまいますが、人を動かせる人はそれをわかってて、行動で示すことができるんですよね。だから余計にカッコよく見えるんです。
本自体は400ページ超えと、最近読んだ中でも比較的長い小説なんですが、駆け抜けるように読み終えました。
素敵な出会いを提供してくださった、ブックスタジオ新大阪駅店さん、ありがとうございました。-
はじめまして。この本、書店でちょっと前に見かけて気になっていましたが、こんな内容とは思いませんでした。すごく面白そう!読みたくなりました。
...はじめまして。この本、書店でちょっと前に見かけて気になっていましたが、こんな内容とは思いませんでした。すごく面白そう!読みたくなりました。
フォローもありがとうございます。私もフォローさせてください。2020/03/14 -
2020/03/14
-
-
初めて読む作者さんで本の題名も帯に書かれている書店員さんからのひとことに惹かれて購入。
確かに面白かったし読み終えてスカッとした。そしてハッピーエンド。現実の世界もこうなれば、、、。
面白かったので作者の別の作品も読んでみようと思います。 -
ちょっと池井戸潤的な?真面目にやってた人間が最後に勝つ、みたいなカタルシスのあるお話。登場するキャラクターも個性的で、とても面白かったです。
面白かったんですが、何度も読み返したいとか、余韻が残るという話ではないかなぁ?
単に好みの問題かもしれません。
-
面白い!サラリーマンにはたまらない!!
これまた会社の方からお借りした一冊。
★4.5くらいかな?
佐倉涼平は大手広告代理店に勤めていたが、問題を起こし退職。再就職で珠川食品の販売促進課に配属される。再就職先でも早々に販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員の姥捨山「お客様相談室」へ異動となる。
お客様相談室では異様な空気が。。。
個性的すぎる面々。彼らはそれぞれのトラブルで集まっただけあり、一癖も二癖もある。
そんな先の思いやられるお客様相談室だったが、これまた多くの問題を抱える篠崎の後をついて歩くのとによって多くの気づきを得る。
生活や就業態度はだらしがない篠崎だったが、クレーム処理の腕は一流だった。
彼に感化され、少しずつ佐倉にも変化が現れる。
そんな時副社長から直接指名があり、請け負った仕事から、この会社の真相が見えてくる。。。
それから佐倉がとった行動とは!?
サラリーマンやってたらたまらなく面白い小説!!
ゲラゲラ声に出して笑ってしまう場面があったり、ものすごく感情移入する場面があったり、自分の会社と比較してしまう場面があったり、最初から最後まで、ノンストップで面白い小説だった!(^-^)
サラリーマンには自信を持ってオススメ出来る!
そんな一冊!! -
120ページくらいまで苦行かと思うほど読むのが大変でした。篠原という人物が出てからは読むのが楽しみになった。
会議の描写は社会人時代を思い出し、どよーーんとした。 -
うちの会社の話ですか?ってぐらい古い体質が似てた。
頭カチカチの上司、例外は認めない会議、忠犬ハチ公の部下…どこの会社も同じなんだなー。
それらをぶっ壊そうとする彼らはヒーローだった!
スカッとさせてもらいました。