- Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334740825
感想・レビュー・書評
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単純な痴情のもつれによる殺人の裁判かと思いきや、被告人の過去そして真犯人の追及と、法廷内で怒涛のドラマが繰り広げられる。
古い作品だが、色あせない魅力を感じる作品だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本における法廷小説第一弾。<BR>
高木彬光は「神津恭介シリーズ」が有名ですが、逆転裁判がお好きな方にはこちらの小説がおすすめです。<BR>
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主人公、百谷弁護士と天野検事のやりとりには血が踊ること必至。<BR>
序盤はスローテンポで進む物語に焦れったくなるかもしれませんが、読み進めていくうちに止まらなくなるはずです。<BR>
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ちょっとした法廷独特の言葉遣いなどにも心くすぐられました。天野検事かっこいいな…。 -
宮部みゆきの最新傑作『ソロモンの偽証』を読み終えたあと、レビューの最後で、
“法廷推理物に興味を持たれた方は、是非高木彬光『破戒裁判』を読んでみて下さい。落涙すること間違いないです。“
などと書いたものだから、
自分の発言に責任を持つべくというか、落とし前をつけねばならぬという思いで、三十数年振りに、この『破戒裁判』を読み直した。
初めて出版されたのは昭和三十年代だから、時代としてはかなり古いものになる。
ただし、ほとんどが裁判所の法廷でのやりとりなので、さほど時代の隔絶感といったものは感じない。
再読しても、確かに面白かった。
殺人の罪に問われた被告人が、警察の取調べに一度“自白”しながらも、のちに供述を翻し、自分は無実であると主張するのだが、この裁判での検事と弁護人の戦いが手に汗握る。
一度罪を認めながらも、一転無罪を主張するようになった被告人の背景には何があったのか?
この小説の肝になる部分だが、そこに至る検事と弁護人の丁々発止のやりとりの臨場感が、見事に描かれている。
“破戒”という言葉が謎解きの重要なキーワードなので、目の肥えたミステリー読者の多い現在なら、作品のタイトルにこの言葉を入れることはなかっただろう。
何故なら、この言葉だけで、勘の良い読者は“ミステリーの肝の部分”に気付いてしまうかもしれないから。
それほど、日本のミステリー分野も進歩したということなのだろう。
もちろんそれは、昔の作品が今より劣っているということを言いたいのではない。
名作は名作として今もなお燦然と輝き続けている。
だが──
この作品を再読して、感動こそしたものの、高校時代に初めて読んだときのように涙にむせぶことはなかった。
なぜだろう?
自分の感受性が加齢とともに衰えてしまったのだろうか。
あの高校生の頃のような純粋な感性が消えてしまったのだろうか。
いや、そんなことはないはずだ。
辻村深月「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」のラストでは、この年齢になっても号泣した私なのだから。
初めて知った“差別”という事実に理不尽な怒りを覚えたからだろうか。
若さと、正義感が有り余って、それゆえの涙だっただろうか。
うーん。自分でもよく理解できない。
まあ、同じ作品でも、さすがに数十年も経って読み直せば、感じ方がかなり違うのだなあと、あらためて実感した。
それでも、この作品は、今でもみなさんにお薦めできる名作だと思う。
新装版が文庫で出版されているようなので、興味を持たれた方は、是非ご一読ください。