- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334741921
感想・レビュー・書評
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東京郊外のどこにでもあるような街の中で暮らす
どこにでもいそうな人々の葛藤、挫折、日常の閉塞感を見事に描いた天才!角田光代の秀逸な連作短編作品です!
角田光代作品はどれも面白いのですが
特に連作短編はめちゃくちゃ面白いので
読み初めから期待感が高まりました。
一話目で女子高生が河川敷で大声で叫ぶシーンがとても印象的で、この作品に出てくる人達のもやもや感や
閉塞感を象徴してるような感じがしました。
「百合と探偵」という話の中で
「今がものすごく充実、とか、満足、とかって気持ちじゃない。だからあたしはいつも、
ここを目指していたのかもしれないという思いに
とらわれるとき、本当に、唖然とするんだ。
こんなところだったのかって。
必死になって手に入れて、大事に握りしめてたものを
すべて手放して、代わりに今手のひらにあるものは、
これっぽっちなのかって。
この言葉はかなり胸に突き刺さる言葉でした…
ある程度年齢のいってる方ならば、
自分の人生を振り返ってみて、現在の自分の位置を見つめ直して、失望感やあきらめを抱いたこともあるんではないでしょうか。
この平凡な街の平凡な人々の人生を自分と重ね合わせて、思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
天才!角田光代 万歳!! -
感想に困ってしまう小説。
救いはあるのかな。
短編集の中でもぐさりときたのが離婚した初老の女性の話。彼女が見た現実と彼女の娘の見る現実とが全く違う。どちらが合っているのかは分からない。分かるのは二人は合わないのだろう。
けれども他の短編小説に書かれていたようにその瞬間だけは相手を思う気持ちはあったのだと思う。ただそれは永続的ではなく相手の気持ちを汲めなかったのかもしれない。誰にも答えなんて分からない。
すっきりしないまま終わってしまうけれどきっとまた読む日はくると思う。 -
角田光代『トリップ』光文社文庫。
平凡な日常と異状な日常との境界線を描いた連作集。異状な日常に、何故が余り描かれないので、面白さは無い。十分に異状な日常なのに深刻さは無く、フワッとした感じ。
特に好きでもない相手と駆け落ちの約束を破られ、また平凡な日常に戻る女子高生。子育てしながらLSDを嗜む主婦、やさぐれた専業主夫、大学の同級生をつけ回すストーカー、歳上の不倫相手が離婚したために、結婚せざるを得なくなった若い男……
本体価格495円(古本110円)
★★★ -
東京郊外にあるどこかぱっとしない商店街の小さな町が舞台となり、そこで暮らす人々の心模様を描いた連作短編。
一話一話がかなり短いのでサクッと読める。
『空の底』次の一瞬、わたしはあーとかぎゃーとか叫び出して(中略)暴れるかもしれない、
という描写があるが、自分も日常のふとした瞬間に、ここで急に暴れたら、どうなるのか?と考えることがある。実際はそんなことすることもなく杞憂に終わるのだけれども。ただ、こんなことを考えるのは自分だけだと思っていたのでとてもびっくりした。
角田さんは、形容しがたい心のうちを表現するのが上手だなと思う。
『橋の向こうの墓地』の黒田はインパクトが強く、すごく印象に残った。
どの話もリアルで、それでいて非現実的のような、読んでいると夢と現実の狭間にいるような感覚になる。
誰もが生きづらさを抱えながら、その中でささやかな幸せを見つけて生きているんだろうな。
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どの登場人物も、どこか思い通りにいかない人生を生きている。そして、何か不満や不安を抱えている。もしかしたら、この人物は、私だったかもしれない、と感じてしまう何とも言えない親近感がある。時々、手にとって読みたい連作集だ。
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普通の人々が穏やかに暮らす東京近郊の街と商店街。駆け落ちしそびれた女子高生、クスリにはまる主婦、自称ストーカーの男などが、素知らぬ顔をしてひっそりと暮らしている。
何者でもないそれらの人々がみな、日常とはずれた奥底、秘密を抱えている。
東京近郊の商店街が舞台の短編連作、という意味で、少し前に読んだ川上弘美さんの「どこから行っても遠い町」とかなり共通しているのだけど、この作品のほうがよりダークで、現実的に人間の心の中身を抉り出している。
出来れば気づきたくない、目をそらしていたい人間の心理。を、角田光代さんはあぶり出すのが巧すぎる。
巧すぎるから読んでて時々恐ろしくなるし、共感してしまうことに罪悪感さえ感じることがある。
小さな街で、淡く関わる無数の人たち。例えばよく行くスーパーやコンビニの店員さんだとか、何軒か向こうのお家に住む誰かだとか。そんな、顔は見知っているけれどどんな人なのかは知らない沢山の人たちにも、それぞれ色んな人生があり、その中に平凡と呼べるものはきっとひとつもない。
みんな物を考え、色んなことを感じ、生きているのだから。
この小説は「そこに居るのに相応しくないのに居続ける人々」が主に描かれていて、このままでいいのだろうか、自分の人生とは一体、と時に虚無感に襲われそうになりながら、みな“普通”を生きている。
そういうのってきっと誰もが感じたことがあって、自分の人生に大満足している人なんていうのはごくごく少数だからこそ、そういう感覚って解る、と思うし、登場人物に自分を投影させてしまうのだと思う。
私は「ビジョン」と「カシミール工場」がとくに心に残った。
自分と似ているとは思わないけれど、そういう風になってしまう心理はわかる、と理解できる感じ。
1つめの短編の中に登場する誰かが2つめの短編に登場するかたちの連作で、しかしその登場の仕方にもけっこうなひねりがあるから、それを予想してみたり、分かったあとで「あっあの人か!」と戻ってみたりするのも面白かった。 -
少しづつ繋がっている人々の日常的な短編集。
その繋がり方がなんともいい具合になってる。
普通にありそうで なさそうで テンポ良く描かれている。面白いリレー小説でした。 -
連作短編、意外な形で微妙に繋がっていくのが面白かった。いつも思うが、普通の人の暗い部分を描くのがすごく上手い。とてもリアルで、そういうことあるな、という気持ちになる。でもやはり普通の人を描いてるから、特段すごいことが起こるのでもない。みんなそんなもんだよなあと思う。
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ある郊外の町に住む人々の日常。
普通にすれ違う人でも
みんな色んな人生があって
色んな事考えてるんだろうなぁ… -
全体的に閉鎖的で息苦しさを感じた短編連作集でした。決して気持ちの良い感覚になれた本ではなく。なのに休日に家の雑事や所用で家を空ける以外は読む手が止まりませんでした。生きてく上での人との関わりの中で居心地の悪さが細かく書かれていた様に思います。人との関係といっても近しい相手とは限らず壁一つ隔てた相手にフォーカスしたり過去の人間や幻影のようなものに想いを馳せたり、、、。まともな人間なら若干現実離れしたようなそんな不思議な感覚でした。いじめられっ子の小学生の話が1番好きです。抱擁が切ないです。そろそも罪のない子が大人の事情でいじめられちゃう運命を呪いたいし、母も婚約者にあんな目に遭ってしまいいつか子のいじめ被害を知る時には自分を責めるだろうし、(あの子のことだから悲しませたくなくて隠し通すのかな)それでもどうか親子で助け合って幸せになってほしいです。
いややはり期待を裏切らないのが角田光代さんですよね!
どこにでもあるからこそ共感できるけど、だけど人生唯一無二!
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いややはり期待を裏切らないのが角田光代さんですよね!
どこにでもあるからこそ共感できるけど、だけど人生唯一無二!
連絡短編集好きなんですよね~
わたしもそろそろ手放して、見つめ直して、諦めるところに来てるんだろうな~
まだまだ大丈夫ですよ!
連作短編最高ですぜっ
まだまだ大丈夫ですよ!
連作短編最高ですぜっ