セリヌンティウスの舟 (光文社文庫 い 35-4)

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  • 光文社
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744175

感想・レビュー・書評

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  • 大きな場面展開などはなく、一つの死に対する疑惑を語り合うだけなのに、ここまで読ませるのは流石です。
    過去に起きた漂流場面の緊迫感たるや、経験者なんじゃないかと思うほどでした。
    しかし、結末に至っては予想を越えるものではなく、少し肩透かし。
    とは言うものの、犯人特定に至る、ある気付きは唸らされました。こういうロジックは気持ちいいですね。
    『走れメロス』は小学生の頃に読んだきりなので、本書を思い出しながら読み返してみようと思います。

  • 石持 浅海氏の作品で、登場人物の心理描写を
    中心にしたストーリー。
    派手なアクションやイベントが起こるわけではなく、登場人物(5人)の会話で構成する話。

    大時化の海の遭難事故により、強い信頼で結ばれた6人の仲間たち。
    そのうちの一人、米村 美月が青酸カリで自殺した。

    四十九日の夜、集まった5人の男女が、彼女の自殺の隠された謎に迫るため、推理を始める。
    彼女は、本当に自殺なのか?
    協力者がいたのではないか?

    『走れメロス』の登場人物になぞらえ、物語は進む。
    果たして、驚きの本当の真実とは?

    会話の中に、伏線もかくれて面白いのですが、好き嫌いが分かれるかも知れませんね。

  • 人の死が関わるミステリと言えば、探偵ものや刑事ものなどの犯人を探し追い詰めていくものが多いと思うけど、このパターンはわたしには新しく感じられた。

    かつてダイバーとして危険に晒され生死を共にした6人。
    特別な関係となった彼らは1,2ヶ月に1回は集まってダイビングを楽しむ生活をしていた。
    ところがいつものようにダイビングを楽しみ、メンバーの家での酒盛りを終えた翌朝、ひとりが自殺をしてしまう。
    遺書もあり、警察も自殺と断定したが、その死に疑問があるとひとりが言い出し、彼女の死について議論を行うために集まることとなる。

    解決済みの死について、捜査をするでもなく罪を暴くわけでもなく、ただお互いを信じるためだけに密室で議論を重ねるだけの時間。
    そこまで信じられる人たちに出会えたらきっと幸せなことなんだろうなと思う。

  • 好きな作家はと問われ、
    その中でもお勧めはないかと聞かれたら
    「水の迷宮」と共に挙げるこの作品。

    凄いと思いました。
    信じたい気持ちと、信じられない気持ちと
    戦うその様はまるで人の根底にある善と悪を見定めているかのようで
    面白かった。

  • 2年前にスキューバダイビングで遭難した6人。その遭難で深めた絆、一体感。
    いつものようにダイビングの後、三好の家で飲み明かした朝、美月が服毒自殺をしていた。

    なぜ、褐色瓶は蓋がしまっていたのか。
    なぜ、転がっていたのか。
    6人の絆が試される。
    それを『走れメロス』に準えた話。

  • 6人の絆を前提とした気付きと受け取りに、あまり共感はできなかった。しかし、人間は興味、関心、知識、精神状態など・・・の影響でかわるものだと思うので、そんなこともあるのかな?と思う。わたしにはかなりきついことだと思うし、想像を超えている。

  • 「僕たちの関係を、大人同士のうわべの信頼関係と軽んじてはならないと思う。誰しも自分の問題は、自分の世界の中で解決しなければならない。荷が重くて、大変で、辛いことだ。そんな日常の中で、僕たちには自分の世界の外に、無条件の信頼が存在する場所があったんだ。この仲間たちだ。それがどれほど貴重なものか。そんな仲間を得られたことが、どれほど嬉しかったか。僕たちは生死をともにした仲間であり、同時に大人としてお互いの世界を尊重し合った。」

    構成としてはミニ『虚無への供物』。動機は不可解。推理は緻密で面白い。

  • 漂流して生死の境を共に経験して以来、強い絆で結ばれた6人。
    ダイビングには必ず6人で行き、その後は飲み明かす。
    いつもと同じだと思っていたその日、皆が酔い潰れた後、彼女は自殺した。
    遺書もあり、警察の捜査でも自殺と断定されたが、彼らは不可解な点に気付く。
    ただの友人ではない彼らだからこそ気付いた疑問。
    遺書には語られなかった彼女の死の真相とは・・・?


    本格ミステリですが、着眼点というか、今までに見たことのない角度に驚きました。
    独特の感性をお持ちというのでしょうか。
    石持さんの作品は、良い意味で変わってますね。

    自殺に見せかけた他殺を暴くというものはよくありますが、自殺した人の心情を知るために議論するというものは初めてです。
    信じる心と疑う心。
    他人の心情を探るというのは、すごく難しいことだと思います。

    ただ、お互いを心の底から信じ合う6人の関係は、すごく素敵で素晴らしいものだと感じました。

    あたたかく、そして哀しい物語です。

  • 1+
    さっぱり惹き付けられないストーリー。こんな話で信じるも信じないもあるか。説得力薄弱な論理展開で進められる推理、というかただの論理的なフリ。例によって、誰でも思いつくようなことでも、わざとらしく登場人物に「そんなことには気付きもしなかった…」と言わせる白々しさ。意味不明な動機。意外性のないオチ。石持作品は5冊目だが、読む度に印象が悪くなる感がある。二百頁余という短さが不幸中の幸いだが、それでも途中何度もうんざりさせられる。
    ひたすらビールを飲んであーだこーだ推理しあう風景が、某作品に少し似ていることだけが興味を引く。あと表紙が綺麗。

  •  死の危機をともに乗り越えた仲間達、そのうちの一人の女性が自殺。彼女の自殺にはおかしな点があるとして、その謎を残された仲間達が解明していく、「仲間を疑わない」これをルールとして。
     謎が謎を呼ぶ、かなりエキサイティングな展開と言ってよいでしょう。ただ、頭の悪い私としては「あれ?今何考えてたっけ?」となりました。あと、「別にこの謎は解かなくてもいいんでないの?」というところもありました。が、「仲間を疑わない」というルールを守り通した仲間達(ある意味で著者)は、素晴らしいですね。

  • 底の見えない小さな穴の中で疑問がグルグルと渦巻いている感じの小説です。信じるが故に謎が生まれ、謎を追求することで信じることに矛盾する。なかなか共感しにくい感情が物語の主軸にあるので、ストーリーの着地点に追いつけない感覚があります。

  • 綺麗に終わりすぎてしまった

    悪意が欲しかったな

  • 故人とその仲間たちの心情をとても大切に描いた作品だと思うのですが、いまいち嵌れませんでした。

    ミステリとしてはホワイダニットに焦点を当てているのに、登場人物たちがお互いの印象や故人の考えそうなことを言い合うだけで、故人を悼む過程を共有させられるのが苦痛でした。

    想像力と読解力が足りず、最後まで読んでも、故人と協力者側にも、仲間たちにも共感できません。よくわからないうちに読み終わっていた、という印象です。

    瓶のフタ1つ、境遇の変化1つでここまで真剣に話し合うことができるのは、逆にリアリティがあって良いと思いました。
    親類や同輩とは、冠婚葬祭で集まったときにだけ、やたら話が弾みますから。

  • 特殊な事故を経て絆を深めた6人だけど、その信頼感が全ての推理のベースにあるので、読者はなかなか共感できず、推理に納得できないのではないか。

    自分が自殺しておいて残されたメンバーには変わらないでいて欲しいという、行動理由も自分勝手で余計なお世話としか思えない。

  • 瓶ひとつでまぁ色々と、すごいねぇ
    2/4/25

  • 警察が解決した一つの事件。仲間を「信じる」「信じたい」「疑わない」「疑いたくない」といった感情を軸に紐解いていくストーリー。描かれている仲間同士の絆が物語の重要な要になっています。
    途中は結末が気になって夢中になりましたが、終始小さな重箱の中をつっつき続けるようなストーリー展開。
    違うことを言っているのか、同じことを繰り返しているのか、それとも違う角度なのか、よく分からなかったです。
    好みは人それぞれですが、登場人物の想いにも共感しずらく私は正直あまりハマりませんでした。そんな人、本当にいるのかなぁと若干ファンタジーの世界。

    ただ、そんなかけがえのない仲間に恵まれる人生は羨ましいなぁと思います。

  • このストーリー構成力には驚嘆です。これを兼業でやってのけるのですから、石持浅海先生には脱帽ですね。

  • 石持さんはやはり素晴らしい~。
    今回もミステリのようでいて、ノンミステリな感じ。なんたって被害者(?)は自殺だから。
    海での漂流という事故をきっかけに強い絆で結ばれた6人。しかしその中の1人・美月が6人でいる時に自殺する。しかしそこには不審な点が。5人はその謎をつきつめていく…。
    けど磯崎が共犯、もとい協力者っていうのは、割とすんなりわかるよね。あと美月と磯崎の自殺の動機も、いまいち納得いかない…というか理解しかねる。まあそうい状況になったことがないからなあ。
    けどやっぱりなぜか好き。全体のストーリー、空気、そういううのがいい。

  • つまらなかった。残念です。

  • どうしてもこの手のミステリはこじつけ感が強く感じられて、読むのがしんどいんだが、これはましなほうかな。

  • 最初の50ページでこんなに悲しくなったミステリは今まで読んだことないのです
    展開が分からなくても、序盤で「おや?」と思う伏線がちゃんとあって、よく分からなくても辿り着くは着くのです
    ただ、何を疑問に思って、何に繋がっていくか。
    ミステリを読む上でとても大事なお話だったのです

    あまりミステリを読んで自分の経験や感じたことと重ねることはなかったのですけど
    大事な仲間、集団、一緒に居たり話したり思い出す時間、心の拠り所。
    その大事なモノへの思い入れがぐだぐだしない様に主人公の年齢層を選んだのはとても良かったのです
    きっと誰にでもあって、過去にも持っていた、或いは感じたことがある場所。
    それを手放す時って、複雑な気持ちになるのですよね
    時間もかかる
    気持ちも消費する

    何だかそんな切ない気持ちを思い出したのです

  • 2015年8月26日読了。
    2015年116冊目。

  • 一つずつ問題提起されて一つずつ解決していく。テンポは良いが登場人物特に美月に全く感情移入できない。凡人たちが話あって論理展開していくのもなにか物足りない。こいつは!ってキャラクターがいないのが惜しい。読みやすい

  • 議論をただこねくりまわしているだけで、はよ話を進めてくれと思った。
    あと、人前での自殺はやめろ。

  • 大時化の海の遭難事故にあった六人の仲間。
    そのうち一人が青酸カリで自殺。
    不自然な点に気付いた仲間が推理を始める。

  • 強い絆で結ばれた仲間たちの、静かで悲しい話だった。

  • セリヌンティウスとは「走れメロス」の登場人物。メロスの身代わりとして人質になった。

    ダイビング中に漂流、協力して窮地を乗り切った6人。
    後日、その中の一人が自殺する。
    残された5人は自殺の真相をあれこれ推理する、推理の過程は著者お得意のパターン、色々な角度から可能性を論理的に検討していく。
    しかし、今回は堂々めぐりが長過ぎて、動機も不可解。
    セリヌンティウスの意味もよくわからなかった。

  • 複雑、巧緻に筋が通っていて知的興奮は味わえる。
    でも、魂は救われない。

    前提に無理がある。
    生きてる人間に死はわからないのだから…

    Mahalo

  • 作品としては面白い試みだと思う。しかし、大きな展開があるのかと飽きながらも読んでいくが、あー、このまま終わりかという感じ。物足りないというより、固い絆で結ばれた6人の、お互いを信じるというスタンスでの話に混ざって行けなかった。

  • 一緒に遭難した経験をもつダイバ仲間が,自殺した仲間の1人の真相を推理する話。
    やっぱり何だかよく分からず共感できない。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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