千一夜の館の殺人 (光文社文庫 あ 36-5)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746322

作品紹介・あらすじ

数理情報工学の天才、久珠場博士が死去。遺産は百億円にも上るという。遺産は子供三人が相続し、最新の研究成果を収めたディスクが、博士の恩人の子孫に遺されることに。遺書開示の立会弁護士・森江春策の助手・新島ともかは、ある奇縁から、遺族への潜入捜査を開始する。そこには連続殺人の惨劇が待ち受けていた…。凝りに凝ったプロットが光る、本格推理の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • ハウダニットの部分には、複雑なトリックはないものの、分築された建物が現場だったってのは想定外だった。巻頭や作中の図面をしっかり観察して気付くことが出来ていたら、めちゃくちゃ面白かっただろうと思う。にしても、この発想は良い意味で裏切られたし、館、複雑な人間関係、本格ミステリに必要な要素が全部詰め込まれていて純粋な探偵小説として楽しく読めた。

  • ミステリー好きにはなんとなくピンとくるようなたくさんのガジェットを散りばめたおもちゃ箱のような作品。
    リアリティはまったくないけど、パズラーとして読むなら面白い。

    遺産をめぐる連続殺人、館、家系図、遺産の暗号、アラビアン・ナイトの絵画、密室、、、文体としておどろおどろしさに欠けるが、十分に楽しめる内容だった。

  • 3-

  • 芦辺拓の「森江春策」シリーズの一つ。この作品では,森江春策の助手である新島ともかが活躍する。
    数理情報工学の権威・久珠場俊隆博士の遺産をめぐる連続殺人事件であり,相続人候補者が次々と,東京中で殺害される。
    大げさ過ぎるほどのプロット。森江春策は,作中で,千一夜の館が解体され,東京中のあちこちに移設されていることから,東京中のあちこちで起きた今回の殺人事件が,同一の「館」における殺人だと解釈するが…。
    新島ともかが,親戚であり幼馴染である池浦紗世子に扮し,事件の真相と謎のディスクの正体等を解明しようとするが,真犯人は池浦紗世子。紗世子は,久珠場俊隆が生きていると誤解し,遺産相続の順番を気にせずに殺人を繰り返していたという。
    「久珠場俊隆が既に亡くなり,遺産の分割も済んでいるという正しい認識に基づいて事件をみたために,かえって真相をつかみ損ねた」ということだが,これも疑問。書評サイトなどにも書いてあるが,いくらなんでも久珠場俊隆が死んでいないと誤解したまま事件を繰り返すとは思い難い。
    文体も合わない。森江春策の大阪弁も含め,全体的に稚拙な文章という印象をもってしまう。トリックも,プロットも大掛かりで,バカミスと言えなくもないが,バカミスとしてもそれほど楽しめなかった。
    ミステリなんて楽しんで読めればよいと思うのだけど,せめて文体が合わないとバカバカしいと思えてしまう。内容はバカバカしくても,文章はしっかりしてほしい。好みも合わないし,トリックもしっくりこなかった。トータルでも★1とせざるを得ないかな。

  • これは、ぼつぼつミステリを読んできた私も度肝を抜かれるハイペースで事件が起きます。この数ページの間に何人殺しちゃったの作者さん⁈って突っ込まずにはいられない超弩級展開。…こーゆーの、好きなのよね~(笑)。

    ただでさえ多くない容疑者候補が次々殺されて行く上に、変装したワトソン役が最重容疑者になっちゃったり、その上見取り図は頻出(大好物)、謎解きが犯人究明以外にも及ぶわ、アラビアンナイトは語られるわ。とにかく、内容が詰め込まれていて息つく暇もありません。

    …でも、一番の大オチは、かなり早い段階で看破できちゃったんだぜ~(*^o^*)わーい
    伊達に館もの読んでないんだぜ!笑
    久しぶりだなー大オチ当てたの…犯人は分からなかったけど…まあそれは通常運転だからいーんだぜ…←


    情報工学の天才であり資産家でもある久珠場博士が死去した。百億円を超える遺産は三人の子供達が相続し、最新の研究成果を収めたディスクは博士の恩人の孫が相続することになった。
    博士の遺言開封の立ち会いを依頼された弁護士・森江春策の助手・新島ともかは、何者かに襲われ負傷した旧友に成りすまし、潜入捜査を開始する。ところが、そこで彼女を待ち受けていたのは恐ろしい連続殺人だった。

  • 本書(芦辺拓『千一夜の館の殺人』光文社、2009年8月20日発行)は、素人探偵・森江春策シリーズに属する推理長編である。単行本は2006年に刊行され、本書は文庫版である。

    森江春策シリーズは事件に巻き込まれた弁護士・森江春策が謎解きをする推理小説である。フィクションは現実と非現実の微妙なバランスに醍醐味がある。現実から乖離した物語はリアリティに欠ける。一方で中には小説より奇妙な現実もあるものの、一般的には現実そのものでは面白みに欠ける。

    その点、刑事事件中心の弁護士を探偵役とする本シリーズの設定は巧みである。刑事事件を扱う弁護士は高校生や家政婦の探偵に比べて不自然さがない。しかし現実の弁護士は当事者が収集した事実を元に法的主張をまとめることが仕事であり、探偵のように自ら事実を収集することはない。

    この点は弁護士への大きな誤解であり、裁判に勝つためには当事者が事実を収集することがポイントになる。これは記者自身の不動産売買代金返還の裁判経験から断言できる(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。結論として弁護士を探偵役とする設定は「ありそうでない」設定であり、フィクションとして魅力的である。

    本作品のタイトル「千一夜の館」からは「館モノ」を想起させる。外部との連絡が取れない館で連続殺人が起こるという展開は推理小説の王道である。しかし、本作品では「千一夜の館」自体が謎であり、関係者や場所を限定する役割を果たさない。そのために読者は最後まで裏切られ続ける。

    また、本作品の特徴は作中の話題が豊富であることである。タイトルに「千一夜」とあるとおり、アラビアン・ナイト(千一夜物語)が下敷きになっている。また、天才的な数理情報工学者・久珠場俊隆博士の死が発端であり、博士の遺した量子コンピュータやRSA暗号など最先端のITの話題が登場する。また、博士の莫大な遺産が連続殺人の背景になっており、法定相続人の知識も必要である。さらに殺人事件では茶室の構造がポイントになる。推理小説を一冊書き上げるためには幅広い知識が必要になることを実感した。

  •  千一夜に着想を得たミステリ。
     展開や人物造形は面白いんだけど、どうにも根本的なポカが気になってしょうがなかった。こんなとき、自分がミステリマニアなのかなと絶望する。

     たぶん、普通に読んで気にならなければ面白いんだろうなぁ。

  • この作者のは、初めて。ごちゃ、とした感じだが、こういうのが好みの人ももちろんいらっしゃるだろう。

  • 森江春策シリーズ

    新島ともかの幼馴染で従姉妹の紗世子が襲われた。入院中の紗世子に代わって紗世子と名乗って久珠場家の遺言状公開の場にあらわれたともか。平和に終わった財産分与。紗世子に残された謎の遺産。密室の茶室で殺害された久珠場雅重。第2の殺人事件。カフェを経営する豊樹・由岐子夫婦の殺害。疑われるともか。「千一夜館」に隠された謎。夜中に車で出かけ死体で見つかった章一。森江春策の推理。

     2009年8月9日購入

     2010年6月30日読了

  • 2009/8/8 ジュンク堂住吉シーア店にて購入。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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