幻想の未来/文化への不満 (光文社古典新訳文庫 Bフ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751401

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった、まずはその一言に尽きる。今後はものの見方が少し変わってしまうかも知れない。そのくらい強烈な印象を受けた。
    と同時に自分が芸術作品から得ていたある種の予感が決して的外れではなかったことが分かったことで少し安心した。

    あと、やっぱり日本人て特殊だなと思った。日本人には父の記憶がないから、無闇にカリスマを求めるのかな。
    天皇陛下だってもともと祭祀しか司ってないもんな。
    これは文化的に遅れてるということなんだろうか、分からん。まあここでは関係ない。

  • ジークムント・フロイトの三論文「幻想の未来、文化への不満、モーセと一神教」が乗っている。

    宗教の成立を心理学的視点から考察しており、フロイトの論理構成は必ずしもわかりやすいものではない。宗教を否定しつつも大衆の道徳規範や大衆の規律のために必要だと論じている。

    一貫してフロイトの前提が話を進める上で必須であり読みにくいです。まぁ、論文だからしょうがないかー。

  • 論文です。

  • しかしここで指摘された矛盾のうちで、とくに重視されている矛盾について考えてみよう。人間は理性的な根拠にはあまり影響をうけず、欲動の願望に完全に支配されている存在である。だとすると、人間に欲動の充足を禁じて、理性的な理由を与えようとしても、意味があるのだろうかという疑問についてである。ただしこれについては、人間はたしかにこうした存在であるが、そうでなければならないのか、人間のもっとも内的な本性からして、こうした存在であらねばならないのかは、自明なことではないことを指摘しておきたい。(p97)

    (前略)たしかにわたしたちは、人間の知性の力は、欲動の生の力と比較すると弱いものだと、繰り返し強調してきたし、それは正しい主張なのである。しかしこの知性の〈弱さ〉には、ある特別な要素があるのだ。知性の声はか細いが、聞きとどけられるまでは、黙すことはないのである。繰り返して拒否されても、やがて聞きとどけられるものなのだ。そこに人類の将来について楽観できる数少ない理由の一つがある。(p109)




    ここでフロイトが展開した宗教批判、宗教教育批判の重要性は、現在でもまったく意義を減じていない。

    それは、フロイトが批判した「宗教」とは、「人間の本性はこんなものだから仕方がない」という現状容認的な考え(思考停止)の普及による支配の形態、『宗教による思考の禁止の力』(p99)ということに、その力点を持つものであり、現在は、通常宗教の名で呼ばれるものにとどまらず、自国(自民族)中心主義とか歴史修正主義とか新自由主義とか、ある種のリベラリズムとか、さまざまな形態をとって、そうした支配の形態(思考の禁止)が幅を利かせていると思われるからである。

    フロイトは、文化を「自然から人間を防衛する」ものととらえるわけだが、欲動のままに自由を求める人間にとっては文化による強制は敵視されるほかないものだから、「人間を文化と和解させ」る方策が必要であると言う。

    それがつまり、「宗教」をはじめとするさまざまな「幻想」の存在理由であるが、フロイトは、そうした幻想が人間にとって不可欠なものであることを認めながらも、むしろだからこそ、「知性」によって自分が幻想のなかに生きているという現実を常に批判的にとらえ続けることの大事さを説いたわけである。

  • これはキリスト教社会に波紋与えるはずだわ……。ただのエロい人ではなかった、フロイト!(そらそうだ)

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著者プロフィール

1856年生まれ、オーストリアの心理学者、精神科医。神経病理学者を経て精神科医となり、神経症研究、自由連想法、無意識研究を行った。精神分析学の創始者として知られる。心理性的発達理論、リビドー論、幼児性欲を提唱し、人間の心の『無意識』という世界を発見したことによって、マルクス、ダーウィンとならんで20世紀の思想に大きな影響を与えた人物の一人ともされる。1939年没。主な著書は『ヒステリー研究』『夢判断』『日常の精神病理学』『精神分析入門』『自我とエス』『性欲論三論』など。

「2024年 『フロイト著作集第7巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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