愚者が出てくる、城寨が見える (光文社古典新訳文庫 Aマ 2-1)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751746

作品紹介・あらすじ

精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 通勤電車の中と昼休みと就寝前に分けて1日で読んだ。小気味良い展開なので、ほんとにあっという間だった。

    不条理バイオレンス犯罪小説と思いながら読んでいたが、最後はしっかりハードボイルドミステリーとして終わった。振り返ると、確かに仕掛け人はこいつしかいないよな、と思えるのに、あまりのドダバタ劇だったので、伏線回収があるとは夢にも思わなかった。

  • 70年代ノワール小説の最高峰マンシェット新訳だ。精神病院を退院したジュリーは企業家で慈善家のアルトグに雇われて彼の幼い甥っ子ペテールの世話を始める。屋敷のまわりではアルトグの昔の共同経営者で凶暴なフェンテスがうろついていた。ある日散歩中の2人は凶悪な4人の殺し屋に誘拐されてしまう。ジュリーは1人を殺してペテールと共に脱出。殺し屋は容赦なく追いかけてくる。銃撃、破壊、殺人、流血の逃走劇。殺し屋の背後に誰がいるのか?誰が味方で誰が敵なのか。実は登場人物全員がイカれている。善悪の話ではない。生きるか死ぬかの本能の話だ。そしてハッピーでもバッドでもないサバサバしたラストが印象的だ。
    昔はノワール小説というとペーパーパックの三文ハードボイルドばりにワイルドに訳そうとしたりイカれぶりを強調しすぎて白々しかったが、この翻訳は現代風で気負いがなくて読みやすい。

  • 【本の内容】
    精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。

    しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。

    ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。

    殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 精神病院に入院していたジュリーがある日アルトグという富豪の甥のベビーシッターになるが、殺し屋のトンプソンに誘拐される。ジュリーは子供を連れて必死の思いで脱出する。果たして2人は無事に逃げおおせることができるのか?というのが粗筋。特異なのはジュリーにしろアルトグにしろ殺し屋にしろ、どこか行動が狂っていて、もはや善悪の区別が付けられなくなっている点。一切の心情描写を省いた文体がそれを強調する。物語の展開や殺し合いの描写は極めて巧みでハードボイルドとしては傑作だと思う。個人的には主要な人物があまりにもあっけなく死んでしまい、その狂気から何かを読み取る前に物語が終わってしまった感があって少し物足りなかった。ただそれこそが暗黒小説の特徴であるのではないか?といわれれば反論できない。

  • メチャクチャ。でも好き

  • 楽しい犯罪小説。ただし、もっとフランスの社会にくわしければ、深く読むことができるかもしれない。

  • 文学

  • 光文社の古典新訳文庫はほかではなかなか見ないものもいろいろ訳してくれているので、最近またいろいろ借りてるんだけど、ちょっと苦手なバイオレンスものだったので入り込めなかったなー。

  • これが古典なのか、と思うわね。でも50年前か。50年前というとけっこう昔か。そういう意味じゃ古典か。そして年を取ったものだ・・

    それはさておき中身は古典というよりノンストップ・バイオレンス・アクション、って感じ。これをハリウッドの適当な監督が映画化すれば絶対にB級の酷いものになる、間違いない。
    思わせぶりなタイトルにはきっと深い意味が隠されていて、読んでいる中で伏線を回収しているのか、タイトルの意味も理解できるのか、でもそんなの関係なく、ギャングから逃げるシーンは手に汗握って大好きよ。

  • 裏社会の闇で身悶える者どもの情動を切り詰めた文体でクールに描き切るロマン・ノワールの雄マンシェット1972年発表作。マンシェットは推敲を重ねる完全主義者の面もあったらしく、作品数も限られている。単に冗長なだけの小説にはない張り詰めた緊張感がみなぎり、贅肉を極限まで削ぎ落とした骨肉のみで、人生の一瞬の光芒を鮮やかに切り取る。暗黒小説の神髄に触れたいならば必読の一冊といえる。

    親を失い、おじとなる企業家に引き取られていた少年が何者かに誘拐される。直前に世話係として雇われていた若い女も共に連れ去られるが、隙を突き二人は脱出。だが、執拗に追跡する誘拐犯らとの攻防は熾烈を極め、壮絶なるバイオレンスが展開していく。

    登場人物はすべからく「壊れて」おり、繰り返される衝動的暴力の噴出は無残な結末を予感させるものだが、プロットは緻密に練られており、展開に不自然さは無い。少年を連れて逃げる女は、精神的疾患を抱えており、企業家の男に何故選ばれたのかも後に解明されるのだが、当然のこと女が常道から外れて誘拐の首謀者と殺し屋らの予測を裏切る行動を取る。さらに誘拐犯のリーダーとなる男も重度の疾患を胃に患い、強烈な痛みに悶えつつ少年と女に肉迫する。それらの捩れた構造が、緊迫した情景の中にもアイロニカルでユーモラスなムードを創り出している。

    マンシェットの筆致は冴えわたっている。テンポを殺すことなくスタイリッシュな日本語として甦らせた中条省平の翻訳も見事だ。

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