- Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334752149
作品紹介・あらすじ
泥棒で同性愛者だった青年ジュネは、獄中で書いたこの処女作で20世紀最大の"怪物"作家となった。自由奔放な創作方法、超絶技巧の比喩を駆使して都市の最底辺をさまよう犯罪者や同性愛者を徹底的に描写し、卑劣を崇高に、悪を聖性に変えた、文学史上最も過激な小説。
感想・レビュー・書評
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謎がとけたような
「泥棒で同性愛者だった青年ジュネは獄中でこの処女作を書き、コクトーに見出され、20世紀最大の怪物作家となった。(文学的)超絶技巧を駆使して年の底辺をさ迷う犯罪者や同性愛者を徹底的に描写し卑劣を崇高に、悪を聖性に変えた文学史上もっとも過激な小説」との評価
ストーリーはディヴィーヌ(源氏名)というの男性がヒロイン(主人公)の成長録のようなもの。彼女(彼)をとりまく犯罪者や同性愛者の女たち(男たち)とのかかわりが、時々作者の姿、声も参加して絢爛豪華(ふんぷんたる臭気も放って)に流れていく。
ミステリ的に事件を追うという興味も加味されていて飽きさせない。
文学的論的価値はコクトー、サルトルに定評で、おまかせするとして
同性愛者、okama
そんな言葉を話題にするのもはばかられる時代を過ぎてなんでもありの現代でも、この古い作品は新鮮に感じる。
書かれた時がわたしの生まれたころとはおもしろい。日本では6~70年代に翻訳流布されたらしいが、そのころはそんなこと知りもしなかったし、興味もなかっただろうが。
読み終わり「ああ」と謎が解けたことがある(笑)
男性が男性を愛する。しかも肉体的に。どうするの?まあ、具体的なことは本書を読んでいただきたいが。
男が男を愛するのであって、女を演じるだけで男が女に成るわけではない
ということが精神論を含めて随所にあり、なるほどとうなったしまった。
「あたしってかわいそうな女」とディヴィーヌはいう
感じるのは「女として」だが、考えるのは「男として」だから
人工的な女装趣味でもなく、重大な事態になるとつい母国語に頼ってしまう現象でもなく、男性特有の器官が邪魔をするのだという、
わたしは女だから男性器官の機能の特徴はわからないが、意味はわかる。
考えるのは行動することだから、「女として」感じるには詩がうまれるという。なんとなく詩が解かったような気がしてきたからおもしろい。
ジュネのひととなりは気の毒なり、不道徳なり思うが人間論として深い深い作品であった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
獄中の手記というものであることを考えるとこれが評価されていいのかどうか疑問もあるけど
時間の流れによる淘汰を免れているのだから文学的な価値があるのだろうと思う。
ジャンが獄中でディヴィーヌ、ミニョン、花のノートルダム、ミモザ、セック・ゴルギらの男色家たちの物語を書くということを書いている小説
性的表現が下品で直接的で刺激的。
とにかく刺激的で野生味な強力な力がある本であることはすごく感じることができた -
すげぇ!!久しぶりに小説読んで面食らった。
ジュネがどこまで意識的に自分の文体と向き合っていたかは分からないが、書くという行為によってしか表現しえない極地世界が紙面の上に確かに漂ってました。
何度も何度も読み直したい。 -
表現が斬新で面白い。
ただ、話があっちいったりこっちいったりしてあんまり引き込まれなかった。 -
日本昔話では青鬼に惹かれた。孤独、哀しみを漂わせ、強靭に鍛えられた肉体を持つ。後書きを読んで、この作品が世界中の同性愛者に大きく影響を与えた作品のようだが、そうです、青鬼=ドラグクイーンとつながるのですね(自分のイメージ)。自分はエログロはむしろ寛容で好きなはずだが、直球すぎて、三振して帰る所です。
ところで(例外もあるが)赤鬼=2本の角=ウルトラマンロッソ(赤、猫耳)武器も二刀流、青鬼=真ん中に一本の角=ウルトラマンブル=そのまんま、という一致に気付き、1人で狂喜してました。 -
強烈な内容だったが、その強烈さに引きずられて最後まで読んでしまった。
これを形にしたエネルギーがすごい。いや、恐い。 -
挫折
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とんでもない本だった。この本の語り手となる「私」(ジャン)が、刑務所の独房でこの本について述べている描写が多いので、メタ小説のようになっている。まるでジャンとともに牢屋に押し込められて、そこでジャンから作り話めかした思い出話を聞かされているような気分になる。
基本的には男娼のディヴィーヌ(本名はキュラフロワ)の生い立ちから死ぬまでが描かれており、時系列や空想と現実が入り乱れて展開する。直接的な同性愛描写や犯罪描写も多く読みづらい。しかし読むのをなかなか止められない。
聖なるものを貶める行為が逆に聖性につながっているのを、物語のなかで「私」がディヴィーヌに仮託しただけでなく、現実世界でジャン・ジュネ本人も結果的にそのように祭り上げられていくのは興味深い。
ボンクラな言い回しになってしまうが、頭のなかにある自分の様々な顔に、名前を付けて、キャラクター化して、それを動かして喋らせて、自分を語ろうとするオリキャラ小説を文学の域に高めた作品と言えるかもしれない。自分を愛せない、母から愛されないが故に作り上げられた強烈な自我を感じる。世間から押し付けられた犯罪者の仮面に流されるまま犯罪を犯すのではなく、自発的に汚れに身を浸す行為で自分を保っていたのかもしれない。 -
難しかった。話の筋が奔放に飛ぶので作中の時間軸と過去の回想、登場人物の空想が入り乱れる。
言葉は美しく、現実できたないとされているものを聖なるもののように神聖に映し出していて読んでいて不快ではなかった。