- Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334753030
感想・レビュー・書評
-
ついに…読み終えてしまった…!めちゃくちゃにおもしろくて、素晴らしい作品…
①ダンブルーズ氏の葬式における描写。
・フローベールの死に対するあっけない滑稽な描きかた。『ボヴァリー夫人』でも死人の扱いはさっぱり、淡々と扱う。死にゆくまでの肉体的な苦しみは丁寧に描くものの、死そのものに対する厳かな目線はない。
「小石まじりの土がかけられた。これでもう、だれひとりとしてこの男のことなど気にかけないのだろう。」
という文章に見られるように、死んでしまえばおわり、という達観した死生観がみられる。⇔だからこそ、生きている間の滑稽なまでの生にしがみつく動き、がおもしろい
・葬式の「形式」を批判。参列した人はみな葬式のことなんてこれっぽっちもわかっておらず、口ぐちに俗物てきな話ばかりしている。
②フレデリックのアルヌー氏化
フレデリックはアルヌー夫人に恋をし、はじめはそんなアルヌー夫人を妻としてもちながら外で遊び歩いているアルヌー氏を軽蔑している。しかし物語がすすみ、アルヌー夫人と思い通りの関係になれないと、むしゃくしゃして他の女性に手をだしてしまう。
まずフレデリックが手を出すのが、ロザネットだ。ロザネットは、もともとアルヌー氏の愛人だった。フレデリックはアルヌー氏への当てつけの意味もあり、ロザネットと関係を持つ。
その後も故郷のルイーズや、上流階級のダンブルーズ夫人など、さまざまにタイプのちがう女性にあっちへこっちへ気がおもむくままに手を出す。結局、四人の女性の間で身動きが取れなくなるが、フレデリックが最後に出会い、最後まで想いを寄せていた相手はアルヌー夫人であった。これはアルヌー氏も同じである。
しかし決して、フローベールはそんなフレデリックやアルヌー氏を非難しているとは思えない。
「どれほど心を開いたうちあけ話でも、相手にたいする気がね、思いやり、憐憫の情などから、かならず口にだせないことがあるものだ。相手の、もしくは自分の心のなかに懸崖や泥沼を見いだして、それ以上さきへ進むことができなくなる。話したところでとうてい理解してはもらえまいという気持ちになる。どのようなことであれ、それを的確に言いあらわすのは至難のわざだ。人と人との理想的な結びつきがめったに見られないのも、そのためである。」
から見られるように、人と人が一対一で完璧につながり合うことなど不可能であるのだ。フレデリックも、アルヌー夫人に寄せた恋心は本物であるが、相手が既婚者なため理想的な関係にはなれない。ほかの女性でも、ここはよくてもあそこは欠点だというように、完璧に好きになることができない。それが人間関係の当たり前のことだと、フローベールは理解していたのだろう。
それでも、最後にはアルヌー夫人と再度恋心を確認し合う、しかしその時にはアルヌー夫人の白髪をみて、フレデリックは一瞬幻滅してしまう。恋というもののもろさを暴き出し、そして最後にはデローリエとふたり、まだ恋というものを知らなかった、夢見ていたころ、友情こそが第一だったときを思い出して「あのときがいちばんよかった」と語り合うのだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フレデリックとともに二月革命のパリを体験する第3部だけど、後半一気に展開する。それに合わせて一気に読み進めてしまった。それにしてもフローベールの文章は読み落としを許さない文章で、読み落とした文章が重要だったりする。今でも読み落とした文章はあるだろうから、もう一度読まないとと思う。
-
「一瞬、まぼろしがたち現れたのかと思った」
アルヌー夫人との出会いが、強烈に印象深い、まるで時が止まったかのような、一文で描かれている。
私はこの一文が好き。
フレデリックは4人の女性と恋沙汰になるけど、結局1人だけを愛し続けていたし、人生思うようにならない歯痒さや時代に翻弄される感じが泣けてしまう。
フランス革命、特に二月革命でナポレオン3世が第二共和国時代を立てた時代が、鮮明に描かれている。
後年アルヌー夫人へ愛を語る際、もはや情熱が無いことを意識しながらも自分の言ったことに酔うところも良い。
上巻はルイ・ナポレオンによるパリ大改造前のパリの詳細を描き物語はあまり進展しないのだが、下巻で一気に進み始める。
あっという間に読了してしまった。
フローベールはこの小説を、同じく二月革命を体験した同世代の人達に向けて書いたと言われている。昔のパリを懐かしく思う気持ちもあったろう。(私は衛生的な改造後のパリの方が好ましいけど)
19世紀の小説とは。
フローベールはやっぱり面白い。 -
下巻、怒涛の展開。高速展開とも?笑それが面白いです。上巻ではアルノー夫人に恋してるだけだったのが、何人もの女を手玉にとったり妊娠させたり、時代も目まぐるしく動く。最後、老人となりデローリエと人生を回顧する中、やはり若い頃の瑞々しい記憶というものが一番心に残るってことなのかな…
-
それがすべてだった