われら (光文社古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754099

感想・レビュー・書評

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  • ソ連の作家によるディストピア小説です。
    当時の祖国に作品内容を受け入れられず、著者は亡命を余儀なくされました。
    <単一国>が管理する空想上の国に生きるД-503を主人公に、物語は無機質なものから有機的なものへ展開していきます。
    理性によってコントロールされる世界に迎合しない女性I-330の出現が、周りの男性の人生を狂わせていくのです。
    非常に癖のある作品なので、真剣にではなく適当に読み進めると良いかもしれません。

  • ロシア、ソ連の作家によるディストピアSF。
    ディストピアものは、『1984年』『すばらしい新世界』を読んで主なものは読み切ったつもりでいたのですが、『三体』の劉慈欣氏のインタビューで「ディストピア三部作」として本著が並び挙げられていたので(※)、まだあんの!と思いながら読了しました(笑
    しかし、よくよく考えてみたら『華氏451度』もまだ読んでないし、「読み切る」なんて不可能な気がしてきました。

    ※大ヒット中国SF『三体』を生んだ劉慈欣「私の人生を変えた5冊の本」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/de883ae01986b05403d9ed197cf265d88e090607?page=2

    驚くべきは、本著が完成したのは1921年。翻訳が素晴らしいのもあってか、そこまで昔の本とはとても思えません。
    描いているのはざっくり1,000年後の未来(今からだと900年後ですか)で、「単一国」のもと各人の行動が管理されている社会。
    この社会の描き方は『すばらしい新世界』ほどキラキラしてはいないものの、『1984年』のように鬱々とはしておらず。フラットな文体ではあるものの、ただ『1984年』以上のスーパーリアルガチの管理社会になっています。

    その管理社会で色々な出来事が起こる訳ですが、私の読解力が低すぎるのか、ストーリー展開はまるで白昼夢を見ているかのような飛び飛びのシーンに感じてしまって、ちゃんとした理解はできなかったというのが正直なところです。。
    そこを気にしなければ(笑 、読みやすい翻訳や、やたらとモテる主人公、やたらと出てくる「色」の表現なんかもあってスイスイ読めます。

    1点、面白かったのは「時間タブレット」の存在。解説で触れられていましたが、まさにiPadじゃん…。

  • まず、難解な小説である。全体主義で管理された社会に生きる(存在する?)uによる記録集。遠い過去に一度滅びかけた世界では、緑の壁により秩序が保たれかつ管理された社会が広がっている。
    過去の遺物であるマンション部屋よく訪れ煙草を吸うlに会い、惚れ込み、緑の壁の外に暮らす野蛮人(とは言え、それほど野蛮でもなさそうだ)に会い、自分が正しいと信じ込んでいた世界が恩人によって過剰に管理・抑圧された社会だと気付いていき、、という話。

    至る所に数式が出てくるのだが、微分積分(波を平らにしていく)で没個性を表しているよう。
    やたら女性に好かれるところからも、理系のこじらせ男子の妄想が入ってるんじゃないか。ザミャーチン自身造船技師でばりばりの理系だ。
    村上春樹ぽい。(村上春樹はザミャーチンに影響を受けた、と言っているらしい)

    この小説、その後に続くスターリンの抑圧など暗い歴史があるので、重々しく捉えがちだが、案外ザミャーチンは、社会主義への変革に向かうロシアを、案外改革でこんな社会になっちゃったりして笑、みたいなノリで書いたのかもしれない。
    カフカの変身も、カフカ自身友人へ音読する際ゲラゲラ笑いながら読んでいたという。
    私達は変にかしこまって、ザミャーチン様、ははーっと平伏しすぎなのかもしれないのだ。

    そう考えると、この小説は実はこじらせ男子の恋愛小説として読む事もでき、この難しさが少し愛らしく感じてくる。

  • 今まで様々なディストピア小説を読んできたが…これは、何だか"真っ白"と言う印象を受けた。表現としては、青やピンクなどの色が出てきて、カラフルなんだけど…それはきっと、主人公の側に"個"が認められないからだろう。ぜーーーんぶ同じ。明言されているわけではないけど"個"が認められているのは、トップのみ。上の考えが全てなので、だからそういうイメージなのかも知れない。

    私がディストピア小説で好きなところは、徹底的に管理された世界で、そこからはみ出した人が矯正されたりなんだりする、みたいなところなのだが…今回も存分に徹底的に管理されていて、そして…



    あー、面白かった

  • ソ連成立前夜の1921年に完成されたと言われるロシアのディストピア小説。本屋でディストピア特集をやっていて、目にとまったので読んでみた。ディストピア小説も本場(?)のロシア人作家が書くとこうなるかと思わせるラストで、ある意味衝撃的。"Brave New World" や "Nineteen Eighty-Four" を読み返したくなる。

  • 超全体主義の国で悪い女に嵌ってしまった男が「幸せ」になるまで。自分/世界への信頼がじわじわと崩れ去っていき、女がいないときと現れたときで天地が入れ替わるような動揺に陥る様が可笑しいような気の毒なようなだった。

    単一国はとにかく無機質で、権力者もこっそり自分たちだけいいものを食べているようにも見えないので、あまり怖いものならではの魅力がない。その分、とにかくД君の右往左往に注目して読んでしまった。各方面から叩きのめされちゃって、可哀そうでしたね。

    Д君は単一国の優等生なのでもののあわれを解さない男という設定なはずなのだけれど、文章がカラフルで(毎朝の光の色合いをあんなに多様に表現できるのは普通じゃない)過去の文化や歴史をよく知っている。その一方で自分の感じや考えを表現するのは不得意で、なかなか文章を完結させられない。それがじれったくて、初めて読んだときはなかなか読み進められなかったのだが、3回目となるとかなり余裕をもって一文一文を味わうことができた。映像的で面白かった。アニメーションの動きを想像しながら読んだ。

  • ソ連最初期1920年代あたりに書かれたロシアのディストピア小説。
    凄いのはそれよりも先の時代のソ連の様子、特にロケットを打ち上げる宇宙開発やソ連崩壊を予言していることです。
    ザミャーチンはソビエトロシアの心を見つめていたのかもしれません。

  • 岩波文庫の紹介文では「ロシアの政治体制がこのまま(1920年当時)進行し、西欧のテクノロジーがこれに加わったらどうなるかという未来図絵を描いてみせた、アンチ・ユートピア小説」と説明された。2019年にこれが新訳となったことを有難く思いながら拝読。
    文章や構成はわかりやすいとは言えないので、紹介文に惹かれて読むと挫折しやすいかもしれない。ストーリーよりも世界観を楽しむ小説だと思う。
    自由なき幸福か、幸福なき自由か。ドストエフスキーの問うたものを更に突き詰めているようにも思えた。
    アンチユートピアつながりで読むなら、出版順には反するけれども『1984年』と『すばらしい新世界』読了後に読むことがおすすめ。また、本作末尾の解説を読んでから本文に入る(本文を読み進めている途中に解説、でも良いかも)ことも話の理解の助けに良さそう。

  • 古典ディストピアシリーズ
    支配みたいなものに警鐘を鳴らしたというより、機械化による理性をとことん突き詰めた合理主義をよく描いている
    詩的な文章で分かりにくいため情景を思い描くのに苦労する

  • ディストピア小説 全体主義社会

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