刀圭: 長編時代小説 (光文社文庫 な 35-1 光文社時代小説文庫)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765637

感想・レビュー・書評

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  • 電車で読むのに最適。でも、夢中になりすぎて降り損ねそうになったので、注意は必要。
    余一とお糸の始末屋シリーズでハマり、他の作品もと手にした一冊。
    初の長編とは思えないおもしろさだった。
    とはいえ、疫病の流行、永代橋の崩落事故、貧しい人々の日々の苦難など、暗い側面もしっかり描かれていて、印影の深い作品だった。

  • 頭はカチカチで、頑な。
    青臭い自分の考えが、現実に向き合い、
    打ち砕かれていくたびに、
    圭吾は、一つひとつ成長していく。

    そんな、医師の道を行く若者、圭吾の物語。

    父の病気で、長崎での医学修行から急遽、
    江戸へ戻った圭吾は、貧しい人々を惜しみなく
    助けてきた父の意志を継ごうとする。

    治療費をとらず、必死に患者をみる圭吾を
    人々は頼りにするが、元々ゼロから始めた医療行為、
    薬も回してもらえず…。

    主人公、圭吾のキャラ、理想に燃えるのはいいのだが、
    どうも、世間常識とは噛み合わない。

    イライラさせられるのだが、
    それを救うのが、周囲の人々、特に、若旦那、笙三郎は
    柔軟で魅力的だ。

    主人公とは対照的だから、
    かえって、圭吾のダメさが際立ってしまうのだが、
    若者の成長物語としては、それがいいのかも。

    周囲の登場人物のあたたかさに救われる。

  • 軽い話かと思えば、深くて思いやりがいっぱいみられました。

  • 頑固で生真面目な蘭医と、粋で放蕩児な薬種問屋の若旦那。反りが合うはずがない。それが次第に絡み合って行く様が面白い。中島要さんの作品には、常に市井で生きる者達の温かさと粋がふんだんに盛り込まれている。面白くないはずがないのだ。

  • 中島要さんの「刀圭(とうけい)」(2010.9刊行、2013.4文庫化)を読みました。長崎帰りの若き蘭方医・井坂圭吾23歳を中心に、仁助長屋の人々、大きな薬屋、吉原花魁などの人間模様を描ききった力編、中島要さんの長編デビュー作なんですね。読み応えがあるといいますか、心が大きく揺さぶられました。刀圭とは、薬を盛るために使う匙(さじ)の別名だそうです。いつの世も厄介なのは「貧」という名の病。そんな中、自分のことはいつも後回し、いつも患者のために頑張る圭吾とそれを見守りサポートする人々~。穏やかなラストに大拍手

  • 自分で読みたくて手に取ったわけではないが
    読んでみるとよかった。
    読みやすい。

    若い医者・圭吾の話。

  • リアル本屋に行ったら丁度改装中で、文庫本は全部が平積み状態。その中でこの表紙が目に入りました。「初々しい。これがこの本を読んだときの、第一印象だった」そんな解説を読んで買ってみました。中島さんは初読みです。
    表題の刀圭は医者や医術を意味する言葉。江戸の長屋で貧しい人を相手に無料に近い医療を続ける若い医者・圭吾を主人公に、青臭い理想論と挫折、そして復活が描かれます。
    確かに「初々しい」かな。悪く言えば稚拙さのようなものも感じます。人物の発言や直接的な言葉での心の動きの説明など。しかし、読後感は爽やかでなかなか良いものです。
    「爆発的な著者の伸長」と解説にあったので、さらに何冊か読んでみたいと思います。

  • いいねぇ。こういうの好き。
    江戸の奮戦するお医者さんを描いた逸品。
    みをつくしお医者さん版、ってかんじか。

    泣かせもタメもいいし、話のテンポもいい。
    シリーズ化して欲しいなぁ。

  • 書店でなにげなく手にして買った作品だが当たりだった。語り口と会話がすばらしい。説明的な叙述がほとんどなく、シーンの積み重ねで物語が進行するスタイルには先に読み進めさせる力がある。
    否定的に書かれていた人物たちが次々と好人物だとわかるエピソードが積み重ねられて読後感はかなりいい。

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著者プロフィール

早稲田大学教育学部(講談社文庫初期の傑作『古典落語』を編んだ興津要のゼミ)卒業。横浜在住。2007年、第2回小説NON短編時代小説賞で「寝姿指南」が最終候補になり、08年、「素見」で小説宝石新人賞を受賞。若き町医者を描いた初長編『刀圭』と、受賞作を含む短編集『ひやかし』が好評を集める。祥伝社文庫既刊に『江戸の茶碗』『酒が仇と思えども』。著書に「着物始末暦」「大江戸少女カゲキ団」シリーズ、『うき世櫛』『御徒の女』『神奈川宿 雷屋』などがある。

「2022年 『吉原と外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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