- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334766825
感想・レビュー・書評
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遠田さんの書く主人公て、こうも救われない人ばかりかと言いたくなるくらい破滅型の人が多く。
自暴自棄になって、救われての繰り返しで、読んでて辛くなるが、最後まで読ませちゃうのは、小説としては、素晴らしいのでしょう。
ほずみちゃんがいて、何とか少しは未来が切り拓かれたのが救いですね。
どなたかも書かれてましたが、最後のアクション?みたいなドタバタは余計な気が。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容紹介
「母に捨てられ、父に殴られ、勉強もできず、リコーダーも吹けない。そんな俺でも、いつかなにかができるのだろうか」
劣悪の環境から抜け出すため、罪無き少年は恐るべき凶行に及んだ。
25年後の夜。大人になった彼に訪問者が。
それは、救いか? 悪夢の再来か?
河口近く、殺風景な街の掃き溜めの居酒屋「まつ」の主人、藤太。客との会話すら拒み、何の希望もなく生きてきた。
ある夏の夜、幼馴染みの小学生の娘が突然現れた。二人のぎこちない同居生活は彼の心をほぐしてゆく。
しかしそれは、凄惨な半生を送った藤太すら知らなかった、哀しくもおぞましい過去が甦る序章だった。
今、藤太に何ができるのか?
希望は、取り戻せるか?
慟哭のミステリーという名にふさわしい陰鬱な展開。どぶの中で咲いたような一瞬の暖かな光のような思い出。その思い出に絡みつくような、薄汚れて心に食い込んでくる蔦のような記憶。今現在進行形で輝くたった一つの希望である少女。
こんなに陰鬱で有りながらほんのりと感じる美しさに手を引かれて、読むごとに胸に突き刺さる痛みを我慢して読み進めたことだろうと思います。どうしてこんな親から生まれたんだと心の奥底から叫ぶ子供たち。大人になってもその呪縛から逃れることが出来ず闇へ闇へと引きずり込まれていく姿が胸に刺さります。
この話に出てくる彼らの親のくずっぷりが物凄くとにかく比類なき屑。マーダーライセンスを持っていたら全員皆殺しにしてやりたいところです。これを女性が書いたというのだからびっくりです(女性蔑視ではありません)
悲しみのマドンナであるいずみと、彼女の忘れ形見であるほずみ。彼女たちの人生が悲しい符合をしないように祈るばかりです。
僕は男が女を力ずくでどうにかする描写が大嫌いで読むたびに怒髪天を衝くという状態になります。なので、この本読んでいる時にも主人公の藤太と一緒に怒っておりました。藤太が酒におぼれて人生踏み外し始めた時にほずみが彼に与えた光。それによって変わっていく姿を見たいがために読んだようなものでした。
所で最近読んだ柚月裕子さんといい、女性とは思えないぶっとい背骨を持った作家さんが出てきましたね。読む本がどんどん増えてうれしい限りです。暗そうだけど。 -
新作『冬雷』のインタビューで遠田潤子はこう答えている
-成功した人間よりも、間違って失敗した人間を描いていきたいです。たとえ惨めで愚かな人生だとしても、否定せずに丁寧にすくい上げて描きたい。安易な救済は失礼だと思えるくらいに真摯に向かい合って、なおかつ面白い物語を書きたいと思います。
著者の書く作品には『正しい人』はでてこない。
負け続け、地べたを這いつくばって下を向いている人しか出てこない。
その人に前向けよ、顔あげろよというのは容易ではないし、
果たしてそれは彼らのためになるのだろうか、お節介ではないのだろうか。
蝶になることは簡単だ。
ただ羽ばたき方は誰も教えてくれない。
(抽象的な推薦文になってしまったが、彼女の作品はストーリーを追うことにあまり意味がない気がしてしまって、このような形がいいのではないかと) -
雪の鉄樹に続き、遠田作品2作目。
前作に負けず劣らず衝撃的な作品。
主人公の不幸な生い立ちは前作同様、読んでいて本当に胸が痛くなる。
作中に出てくる新世界よりの『家路』がひたすら頭の中で流れて、より切なさが増す。
小説の中の世界だと言えど、藤太とほづみの幸せを願わずにはいられなかった。
他の方のレビューにも書かれていましたが、東野圭吾の白夜行、天童荒太の永遠の仔を彷彿とさせられました。
ちょっと時間を置いてから、他の作品も読んでみようと思う。 -
内容(「BOOK」データベースより)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。