整形美女 (光文社文庫 ひ 18-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334769109

感想・レビュー・書評

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  • 題名から想像したストーリーとは乖離があったが、読者が勝手に求めるお約束ストーリーではなく、美人とは何?ブスとは何なの!?と考えさせられる一冊。

    登場人物は聖書の登場人物の名前から考えられているらしく、所々聖書の一節が引用されたりしている。

    個性的ななかなか面白い表現をされていたが、私には少し苦手だと感じてしまった。
    文章の相性が少し合わなかったのかもしれない。

    しかし話は終盤にかけて、なかなかに惹き付けられるものがあった。

  • 目鼻立ちくっきりでスタイル抜群の美人・甲斐子は、自分が美人だという自覚がなく、ある計画を元に20歳で全身整形をして地味な女に生まれ変わる。
    一方甲斐子の同級生で地味な見た目だった阿部子も、同時期に整形手術を受けて元の甲斐子そっくりな美しい容姿に生まれ変わる。
    整形してから十数年、全く正反対の容姿に変わった二人はどういう人生を歩み、どんな人間になっていくのか。

    美容整形を扱った作品ってたまにあるけれど、これは単純に美容整形をして美人に生まれ変わった人間の物語ではなくて、そもそも美人とは?を問う物語。
    見た目が整っていれば美人なのか?
    でもよくよく考えてみると、見た目が整っていても美人とは思えない人もいるし、見た目は地味でも振舞いや内面を合わせて美人だと呼ばれる人もいる。

    甲斐子と阿部子。これは聖書のカインとアベルになぞらえたもので、この二人の主人公に付随するような名前の登場人物も出てくる。
    神から不当な扱いを受けてアベルに嫉妬し、最後にはアベルを殺したカイン。
    この物語では元々甲斐子はとても恵まれた容姿をしているのに、なぜか異性から不当な扱いを受けるところから物語がスタートしている。
    だけど甲斐子はとても慎ましやかで真面目な性格の持ち主でもあった。それが地味な見た目に整形した後、どんな風に変わっていくのか…。

    美容整形がいまだに負というか“出来れば隠しておきたいこと”であるのは、嘘をついているような後ろめたさを覚えるからなのだと思う。
    芸能人でも、素人でもはっきり分かるくらい顔が変わる人っているけれど、本人が堂々と公表するケースはほとんどない。逆に開き直られたほうが清々しいと思うけれど、そういう人はまだ少ない。
    人にはそれぞれコンプレックスがあり、例えば胸が小さい人ならパッド、髪の毛が薄い人ならカツラ、背が低い人ならシークレットブーツなど、そのコンプレックスをカバーするものを用いたりする。
    でもそれもやっぱり嘘をついているような後ろめたさから逃れられないから、必要以上にそのことに関して敏感になったりする。 
    他人はさほど気にしてはいない、という客観性も、強いコンプレックスの前では通用しない。

    整形によって一度美人を経験した阿部子の変化の仕方が素敵だった。コンプレックスをはね除け、自分の生き方を手に入れるということ。
    美しさとは、そして本当の幸福とは。

    余談だけど、年齢を重ねるにつれて内面って顔に出てくるから本当に気を付けなきゃいけないと思う。
    つくりは綺麗なのに意地悪さが隠しきれてない人って、けっこういるよね。

  • 完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。
    そして、手術後の二人の運命はどうなったか。

    まず、
    なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。
    もっと高尚な理由が。

    『自分が醜いと信じている、どすぐろい強欲な未練を断ち切れないから、整形手術という手段を使えばこの状態から抜け出せるのではないか。ブスになったら健康であることを神に感謝できる。』

    これでも訳、解らないよね。
    甲斐子は精神も完璧に強かったのだ。個性も美人ということ。

    他人は個性的な人に『変わっているね』というが、『個性的だとほめられたなどゆめゆめ思わぬがよい。自分の経験からはみ出した状況や物や人に対して嫌悪していて』仲間に入れぬ。という経験をして痛いほど嘆いていた甲斐子なのだ。

    うーんわかる。しかしその後の運命は...。
    はたまた、対称的な「望月阿部子」はどう...。

    これから読む方に悪いのでやめる。

    でも、美女ってほんとうに男性にもてないの??
    整形外科医、大曽根三ヶ衛(おおそねみかえ)のキャラクターがいい。

    姫野カオルコさん初めて読んだが、お、面白い。シニカルなんだけれど、真実をついているね。示唆に富んでいるし。私が言うのもなんですが、沢山書物を読んでいらっしゃる方ですねぇ。

    私は曽野綾子さんの「ギリシャの神々」を愛読しているが、その解説に

    『一見役に立ちそうもないもの、どうでもいいように思えるものをどれだけ許容し、包含しているかが、その社会の体力、奥行きの深さを測る目安といえるのである』(田名部昭)

    とあり私もいろいろと興味をもっているので、こういう作風が好もしいのである。

    姫野カオルコさんは一作ごとに文体が違うらしいから、他作品も読もうと思う。

  • なんやかんや言うてもわたしはお金があるのなら整形したいですわ。ほんとに。


    阿部子は決して鼻持ちならない高慢な女ではない。すこやかなのである。文化祭の準備を手伝ってくれ、便箋数枚にわたる文字量の多い手紙を三度以上よこし(二年のあいだにであろうとも)、東京からP市までやって来、もうひとりの男との角度を六十度に維持したあとに走って自分のもとにもどり、自分とふたりだけで会いたがった異性は、自分のことを好いている。そう確信できることは特異なことではない。日常のさわがしさのなかで人はあらためて気づかないが、阿部子のように信じられる人間は男女の性差なく数多く存在する。圧倒的多数といってもよい。すこやかとはそういうことである。

  • 整形の話だけど、「顔としての美しさ」と、「それがどう他者から見られるか」を切り分けて描こうとしているのが伝わった。
    そもそも美人とは何なのかという話。

  • 完璧な美を備えている、と(大曾根医師には)思われた甲斐子が「全身整形したい」と手術を望む。絶世の美女ではなく、大衆受けする程度の女(大曾根医師によると「ブス」)に。一方、整形なんか興味なかったのに「なんとなく」やってみた二重瞼手術に始まり(甲斐子のような「美人」に)全身整形した阿部子。結果、甲斐子は男受けし、阿部子は男から敬遠される。……「美人」って何ですか?という姫野先生の深い考察が物語となっているが、正直「豆つぶのような目」は美人…?と疑問を感じながらも面白く読んだ。与瀬くんが良い味出してた。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/731307

  • 整形してからの2人の変化が面白い。

  • つまらない。
    読み手の問題なのか?
    途中で止めた。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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