私が白洲正子氏を知ったのは「風姿花伝」について調べていた際に彼女の「世阿弥」を読んだことに始まる。それ以降、雑誌記事などがあれば目を通していた。白洲次郎ブームがあった際にも、白洲次郎の本と一緒に白洲正子の本を読んだりしていたが、河合隼雄氏と対談していたことは知らなかった。友人と書店へ行った際、たまたま友人が見つけてくれたのが本書である。
ほとんどが河合隼雄との対談であるが、その対談が非常に面白い。白洲正子は女性として初めて能楽堂に立ったことは周知であるが、その能についての話が非常に面白いのだ。私が彼女を知ったのも「風姿花伝」だった。また、親戚が日本舞踊の師匠であるので、能に関しても舞台を見に行くことが多々あり、話の内容も割りと私自身の生活に近い。自分にとっての興味の範囲であったので、とても面白く軽快に読み進めることが出来た。芸術の所作やその特質に関しては、畑は違えど音楽をかじっていた者としても、なるほどと頷くものもあり、芸の奥深さを久々に痛感した。対談なので、河合隼雄の冗談もいたるところで炸裂しており、時には笑いながら、時には深く考えながら頁をめくった。まるで目の前で対談が繰り広げられているように感じ、その光景を見ているようだった。
後半の西行や明恵の話にしても、非常にテンポよく、内容も面白い。普段では分からないような歴史の裏舞台が見え、その内容を読んでいるだけで自分も研究してみたくなってしまうほどだ。
白洲正子は美術や芸術を愛した人である。色々な人々との交流の中で自分を見つめ、そして自分の愛するものを見つめてきた。彼女の生き様というものをもっと深く知りたいと、この対談を読んで感じた。
今後、白洲正子の著作も一つ一つ読んでいきたいと思う。