- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334791452
感想・レビュー・書評
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かなたの雲 ― 日本橋牡丹堂 菓子ばなしシリーズの7作目
2021.01発行。字の大きさは…中。
栗羊羹で里帰り、喧嘩別れはおはぎの味、丸くおさめる卵菓子、涙の虹と栗汁粉の短編4話。
鎌倉のはずれの村から菓子が好きで、菓子作りがしたくて江戸へ出て来た小萩が、牡丹堂の皆に助けられて、菓子に係わっていく物語です。
【栗羊羹で里帰り】
小萩の実家、鎌倉から手紙が来る。お爺ちゃんが大変だ、帰って来いと。帰ると、雰囲気がへん、お爺ちゃんは、元気にしている。腰を少し痛めたとき、お爺ちゃんは、江戸へ出て一人で頑張っている小萩が心配で、心配で、どうしても会いたくなった。そのお爺ちゃんが栗羊羹を食べたいと言われ、作ると家族みんなに喜ばれる。
小萩の幼馴染みは、結婚して子供をもうけている。18才になった小萩が(心配です)
【喧嘩別れはおはぎの味】
故郷を出るとき、母が作ってくれたおはぎを、弟と絶縁するするいま、もう一度食べたいと言って大升屋の内儀・銀が、ご主人のために小萩庵に注文に来ました。小萩は、ご飯と一緒に大升屋のご主人の故郷常陸国の岩山ばかりの八溝山の近くの村で作った里芋を練り込んでおはぎを作りますと、ご主人の権太郎は、この味だと喜びます。内儀銀は、このおはぎをご主人の弟に届けるようにと……。
肉親の縁というものは、切っても切れないものか(………)
【丸くおさめる卵菓子】
山野辺藩から前回納めた、珈琲にあう金色羹(こんじきかん)は良かったが、小さい姫様が卵が嫌いなので、卵の入っていない卵菓子と、それに新しい工夫をしたものをとの注文が来る。
出来た菓子は、白く丸い温泉卵のようで、外側はふるふる揺れる柔らかそうな生地で、中のだいだい色がうっすらと透けて見える。包丁で切ると、黄身に似せた鮮やかな橙色の球体が現れる。一切れ口に入れるとぷるぷると不思議な食感があった。ほのかに異国の香りがして、甘酸っぱい杏の味が広がった。「凄く美味しい。だけど、初めて食べる不思議な味」。名前を暁(あかつき)玉子とする。
書きながら、食べたくて、食べたくて(お腹がグー、グー……)
【涙の虹と栗汁粉】
牡丹堂の職人・伊佐の母親・安乃が、危篤の状態になる。牡丹堂の皆が、安乃の好きな栗汁粉を作って食べさせると。伊佐は、小萩に「たった一人のために作る菓子ってもんが有るんだな。そして、それはだれかを助けたり、幸せにしたりするんだ。そういう仕事ができるのは、小萩みたいな真っ直ぐな気持ちの人だろうな」
「そんな立派なものじゃない。今の私は、お客さんの話を一生懸命聞いているだけ。お菓子に仕上げるときは、親方や伊佐さんやほかの皆に助けてもらっている。でも……いつかは、誰かを助けたり、幸せにしたりするお菓子を作りたいと思っているわ」、小萩は頬を染めた。
安乃が亡くなり、伊佐は、母親の呪縛から解かれるか。そして小萩との関係は、進展していくのか、今後が楽しみです(笑顔)
【読後】
この物語は、小萩を見ているのが楽しみです。そして、美味しいお菓子が毎回出て来ます。今回は、特に「丸くおさめる卵菓子」が良かったです。次回を楽しみにしています。
【著者紹介】
中島久枝(なかしま ひさえ、1954年6月4日 - )は、日本のフードライター、小説家。
2021.04.08読了
※シリーズの感想と読了日
はじまりの空 ― 日本橋牡丹堂 菓子ばなしシリーズの6作目 2020.09.08読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/433479047X
それぞれの陽だまり ー 日本橋牡丹堂 菓子ばなしシリーズの5作目 2020.03.13読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4334779557
ひかる風 ー 日本橋牡丹堂 菓子ばなしシリーズの4作目 2019.07.23読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4334778534
日本橋牡丹堂 菓子ばなしシリーズの3作目以前は、ブクロクの登録前に読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本橋牡丹堂シリーズ第七弾。
牡丹堂や縁のある人々に支えられ、自分の菓子に取り組む、
<小萩庵>の小萩は18歳。伊佐の母と彼への想いで悩む日々。
栗羊羹で里帰り・・・鎌倉まで共に旅したおせんの抱える事情と、
友や姉、母の姿から、妻や母に成ることに心が揺れる、小萩。
喧嘩別れはおはぎの味・・・何故、そのおはぎに執着するのか?
伊佐の母への心情も気になる。切ろうとしても切れない縁。
丸くおさめる卵菓子・・・卵が入らない卵菓子は解決したが、
もう2つの、卵を使った菓子の注文は?人の心情の難しさよ。
涙の虹と栗汁粉・・・病が重くなった伊佐の母のため、栗の下拵えを
する店の面々。たった一人のためにつくる菓子。そして・・・。
主要参考文献有り。
秋の情景の中で、悶々としていた小萩でしたが、成長しました。
人を思いやる行動、真実を受け止める心。かける言葉。
彼女を見守り、手助けするような、牡丹堂の人々の心根。
お客の言葉の裏に隠された思いに気づいて、初めて心に届く
ものが出来る。故郷、肉親、そして好いた人。
菓子作りの中に、そんな様々な想いを受け、心を巡らせ、悩む小萩。
それは伊佐の母についても、同様。何故伊佐は心を寄せるのか。
だが、彼女の真実と姿。心配していた人々がいたことを知る。
小萩がずっと思っていたことを言えたクライマックスは、
じ~んときてしまいました。伊佐の行動にも、ほっこり。
次巻で、どう話が展開していくのか、楽しみです。 -
2021年1月光文社時代小説文庫刊。書下ろし。シリーズ7作目。栗羊羹で里帰り、喧嘩別れはおはぎの味、丸くおさめる卵菓子、涙の虹と栗汁粉、の4つの連作短編。いつもの菓子ばなしと小萩の仕事への想いと伊佐の話が絡み、するすると読了。小萩の将来に関しての良い展開が続いたので、次が楽しみです。
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頑張れ、小萩!思わず応援したくなる。
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あったかい だけじゃない。
小萩さんの 頑張り -
202112/シリーズ全8巻まとめて。江戸の菓子屋が舞台というのも好みだし、読みやすく面白かった。主人公が、菓子に見せられ鎌倉で旅籠を営む実家を飛び出してきたわりには、菓子への情熱や職人としてのひたむきさがあまり感じられないのでそこは残念。でも職人らしい気難しさもありながら気のいい菓子屋の面々や、我が道をいく呉服屋の女将お景など、周囲の人々の描写も魅力的で、楽しく読めた。
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伊佐と母親の話でほろっと。
小萩が…うん…思いが突っ走るけど…
2人のこの先が気になる! -
2021.09.03