みどり町の怪人 (光文社文庫 あ 72-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334794828

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  • 田舎町「みどり町」を舞台としたミステリー作品。
    みどり町に蔓延る「怪人」の噂、そこに住まう人々に起きる出来事、田舎特有の閉塞感が絶妙にマッチしていてとても引き込まれました。
    いつの時代も情報が錯綜し、それが噂となり、それがいつの間にか真実のように変わっていく。『幽霊の正体見たり、枯れ尾花』という言葉にあるように、本当はそうでもないものでも、それが尾ひれが付き恐ろしい怪人となっていく。また登場人物達が抱える孤独・焦り・嫉妬などの鬱屈とした感情、それによりどこかで怪人を作り出してしまうという所もリアルで面白かったです。本人がその虚像にすがりつきたくなってしまうほどに。いつの時代も人はあまり変わらないんだなと思いました。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    奈緒:花澤香菜
    守:内田真礼
    中山裕樹:中村悠一
    中山早紀子:佐藤聡美
    中山光太:田村睦美
    田口悟:神谷浩史
    田口由花:古賀葵
    川村瑞恵:くじら
    柏木正人:森久保祥太郎
    新田友美子:伊藤彩沙
    宮下崇:潘めぐみ
    優人:内山夕実
    今井慎也:福島潤
    卓:松岡禎丞
    日高薫:雨宮天
    橘ゆり:早見沙織
    黒須:三木眞一郎
    須藤正弘:平田広明
    ラジオDJ:津田健次郎


  • 第一話 みどり町の怪人
    第二話 むすぶ手
    第三話 あやしい隣人
    第四話 なつのいろ
    第五話 こわい夕暮れ
    第六話 ときぐすり
    第七話 嵐の、おわり

    みどり町が発端になって伝播した
    女の人と子供を襲う怪人の話。

    正体不明、姿も不明、目撃場所も
    遭遇した条件も諸説ありすぎて定まらない、
    何もかもが噂話の域を出ないように見える、
    謎が謎を呼ぶ怪人に翻弄される人たちの物語。

  • 評価が低いのはエピソードが私には少々退屈だったのとラストにいまいち納得できなかったから。

    「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」的な物語が6話と最終話で明かされる真実。
    みどり町でおこった母子殺害事件の犯人は捕まることなく20年が過ぎた。
    みどり町に住む人々は何かにつけて〝みどり町の怪人〟と関わろうとする。不都合なことや困ったことに辻褄を求めるように怪人を紐付けてしまう。

    生きていればいろんなことがある。誰にでも。
    何かのせいにしてしまえば楽になる。それが答えではなくても。

    人を殺める…日常において無縁であると思っていても
    過失致死とか正当防衛とか意図せず加害者になることはあるし、そこにもさまざまな背景があることを思えば全てを責める資格は誰にもない。
    とは言え…これに関しては到底納得のいくものではなく、モヤっと終わる。

    エピソードの一つひとつは小学生でも楽しめそうなミステリーでめでたしめでたしと言う感じなのに、締めが急に闇。

    今年の6冊目

  • みどり町で怪人が出るらしい。
    そんな都市伝説にまつわる話。
    想像したのとは違い、あまりミステリー要素はないかな。
    盛り上がりに欠ける感じで何だか不完全燃焼。

  • Amazonの紹介より
    一見、ありふれた日常が流れる、どこにでもある小さな郊外の町、みどり町。
    ただある一点、「怪人がいる」という“非日常”を除いては……。
    時は1990年代初め。奇妙な都市伝説の裏には、未解決のまま20年以上が過ぎた凄惨な母子殺人事件が隠されていた――。



    不安に陥った時、「怪人」の噂によって、気分を逸らし正当化しようとする心の揺れ動きが、共感する部分もあり、丁寧に描かれている印象でした。

    不安に駆られる部分はホラーながらも、後半は温かさが残りました。

    どの噂も、ほぼ嘘で塗り固められたに過ぎないのですが、まさか最後に「怪人」の真実が出るとは驚きでした。

    未解決の殺人事件の真相、犯人による贖罪が、最後に描かれていて、一応読者だけが真実を知っているということで、幕は閉じられるのですが、スッキリ感と共に、何とも言えない焦燥感・切なさも込み上げてきました。

  • ホラーではなく、都市伝説の周りの人間関係の変化がメイン。オチはあまり意外性はない。読後は爽やか。

  • 一話完結の連作短編小説です。
    ジャンルとしてはホラー&ミステリ&イヤミス+ハートフルが混ざった感じでした。

    各ストーリーは完全に独立していますが、すべて「みどり町」を舞台にしていて、「みどり町の怪人」という都市伝説的な“なにか”が軸となって物語が展開していきます。

    町で暮らす人々は共通しているので、ある話では嫌な人間に描かれていたのが、別の話では親切な人間として見えたり、主人公の視点で見えかたが反転したりするのも面白かったです。

  • プロットそのものはイヤミス風だが、最後は丸く収まる展開。故に、読後感は悪くないが、それでもハートウォーミング系とまで言えないだろうか。むしろ、そちらに振り切った方がいいのかも知れない。

  • 1990年代前半に広まったみどり町の怪人という都市伝説。大きな台風が来た夏に怪人は現れ、女性と子供を狙うというもの。20数年前の殺人事件が噂の根拠となっている。怪人とはなんなのか。ということと、その噂によって人々の心の中で作られていく怪人。想像することで大きくなっていく不安や恐怖。その棲み着いてしまった怪人と自分の今ある生活の中で感じる不安とが重なり合っていく。怪人の噂への恐怖より人の心の内に自分で作っていってしまう想像の怖さが物語にずっと流れているように感じる。

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著者プロフィール

山形県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。『未成年儀式』で富士見ヤングミステリー大賞に準入選し、2009年にデビュー(文庫化にあたり『少女は夏に閉ざされる』に改題)。他の著作に『ひぐらしふる』『夏の王国で目覚めない』『僕らの世界が終わる頃』『サクラオト』『思い出リバイバル』などがある。本作『向日葵を手折る』が第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門にノミネート。

「2023年 『向日葵を手折る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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