平場の月

著者 :
  • 光文社
3.65
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本棚登録 : 2010
感想 : 297
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912567

作品紹介・あらすじ

第32回山本周五郎賞受賞作&第161回直木賞候補作!

朝霞、新座、志木。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとり。元女子須藤とは病院で再会した。50歳になった男と女の、心のすき間を、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く大人の恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • R1.12.26 読了。

     せつない、やるせない、もどかしいと思わずには、いられない。50代の中学の同級生の青砥健将と須藤葉子との恋愛小説。自分も同年代だから、分かる気がする。好きや愛しているだけではその先に進めない気持ちもよく分かった。
    そして実際にこの年齢ならば、こういう終わり方もあるだろうなと思う。

  • これはしばらく忘れられない物語。
    読み続けるのが辛くて中々進まなかった。
    中年再会死別系恋愛小説とでも云うのかな。
    最初に須藤が死んだことを知った主人公から話が始まる。出会いから交流、病気、離別というなかでお互いの家庭や仕事、歩んできた歴史が明らかになる。
    中学同級生、地元、家族、変わったこと変わらないこと含めて二人が再び出会って別れるまで。
    青砥はこれからどんな思いで生きて行くのか、と思うとやるせなさで一杯になる。

    作品紹介・あらすじ
    第32回山本周五郎賞受賞作&第161回直木賞候補作!

    朝霞、新座、志木。家庭を持ってもこのへんに住む元女子たち。元男子の青砥も、このへんで育ち、働き、老いぼれていく連中のひとり。元女子須藤とは病院で再会した。50歳になった男と女の、心のすき間を、求めあう熱情を、生きる哀しみを、圧倒的な筆致で描く大人の恋愛小説。

  • この本はずっーーと後を引く。次の日も、そのまた次の日も、心に残って、考えている

    それぞれの過去を背負って出会ったもう若くない二人
    晩年感がふとよぎる歳で再会した「異性」は、15歳の面影を残しているものの、虹色の好意を友情と呼ぶほどには熟れている
    お互いを「青砥」「須藤」と呼び捨てできる仲

    青砥、景気づけ合いっこしない?
    どうってことない話をして、その時、その場しのぎでも『ちょうどよくしあわせ』になって、お互いの屈託をこっそり逃すやつ。毎日会うんじゃなくて、各自の屈託がパンパンになりそうになったら連絡を取って、『やーやーどーもどーも』『イヤ、しかしなんだねえ』みたいな感じで無駄話をする会を結成したいのだけれども 。互助会的な

    いいな、ひととしいってからの異性の友達、共通の思い出を持っているのもいい。女友達にはないあっさり感や裏のない明るさがあるような。きっと話題が嫁姑や孫の話になったりはしないのだろう
    ただし、わたしの場合は恋愛に発展しないことが条件、友達のまま

    各章のタイトルがまたいい
    1 「夢みたいなことをね。ちょっと」
    2 「ちょうどよくしあわせなんだ」
    3 「話しておきたい相手として青砥はもってこいだ」
    4 「青砥はさ、なんでわたしを『おまえ』って言うの?」
    5 「痛恨だなぁ」
    6 「日本一気の毒なヤツを見るような目で見るなよ」
    7 「それ言っちゃいかんやつ」
    8 「青砥、意外としつこいな」
    9 「合わせる顔がないんだよ」
    どれも須藤が青砥に言った言葉だ。さりげない愛情や気遣いや遠慮や寂しさが感じられ、胸が締め付けられる

    須藤はもっともっと甘えて、身勝手でもよかったのでは?
    須藤は青砥の胸にしがみついて、泣き叫んでもよかったのでは?
    青砥だって、グイグイ須藤に自分の気持ちをぶつけたらよかったのでは?
    須藤が亡くなった後、菜園に埋められたプレゼントのネックレスと合鍵を入れた封筒を掘り起こした時の青砥の気持ち
    悲しすぎる。淋しすぎる

    大人の分別を持った二人の恋は、こんなに静かで遠慮深いものなのか

    萎れている青砥の背後から
    「胸を張れよ、青砥」
    「簡単だよ。貝殻骨をくっつければいいんだ」
    須藤の声が聞こえてきそうだ

  • 中学の同級生でお互いに初恋の相手だった、須藤と青砥。
    須藤がパートで働く病院の売店に、がん検診で訪れた青砥と再会したことから始まる恋愛。
    50代にもなれば、誰しも痛すぎる過去がひとつやふたつあるものだと思うのに、須藤の頑ななまでの意地の張り過ぎに、ちょっと可愛げ無いと思ってしまった。
    誰にも頼らず、自分の事は自分で何とかしようとする意思の強さは認めるけど、母親の事や、過去の結婚生活がそうさせているのか、須藤はどこか自分は幸せになってはいけないと思い込んでいるのではないか?
    50年も生きてきたのだから、青砥におんぶに抱っこでもいいんじゃないか?辛いときは辛い、寂しいときはそばに居てと甘えて何が悪い?・・・と、まぁ、末っ子丸出しの自分は、大声で叫びたくなりました。
    須藤の死をあんな形で知ってしまった青砥が不憫で仕方ない。須藤らしいと思いながらも、この先ずーっと引きずって生きて行くんだろうな。

    • りまのさん
      奏悟さん
      フォロー頂き、ありがとうございます!この頃眠くて、本があまり読めていない、りまのです。こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたしま...
      奏悟さん
      フォロー頂き、ありがとうございます!この頃眠くて、本があまり読めていない、りまのです。こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします!
      2021/03/05
    • 奏悟さん
      りまのさん

      いつも、いいねをありがとうございます。
      私も読むペースは偏りがありますが、こちらこそよろしくお願いいたします(*^^*)
      りまのさん

      いつも、いいねをありがとうございます。
      私も読むペースは偏りがありますが、こちらこそよろしくお願いいたします(*^^*)
      2021/03/05
  • 50歳の男・青砥は健康診断の結果が悪く、再検査を受けることになる。検査に行った病院の売店で中学時代に告白した須藤に会う(その時、須藤には振られた)。そこから二人の交流が始まる。しかし、須藤に大腸癌が発覚する。面倒見がいい青砥、心が太くみえる須藤。二人の想いの結末は…。
    主人公たちは50歳、それに恋愛が絡む。それに物語の調子として、最初は、どうかなあ…読むのが苦痛で終わるか不安でした。しかし、読み終える頃には、物語の完成度に素晴らしさを感じました。生まれの土地での昔からの顔なじみの世界、その雰囲気、中年ぽさ、二人の不器用なやりとり、上手く描けているなあと。ありそうなことを物語としてしっかりと書き上げて入りところが素晴らしいと思います。50歳というのが、また良い設定なのかな、自分の近い未来を想像させるような。癌だって、身近にあるような設定だし。何だろね、派手ではないんだけれど、読ませるのは作者の力か。
    須藤の心はわからないでもない。結末も裏切らずによかった。

  • 新聞の一面下段に大きく文庫本の広告が出ていて興味を持ち、図書館で単行本を借りて読む。とても切ない大人の恋愛小説で、でもとても面白かった。半世紀も生きると身体の何処かにガタが来て、大病を患う確率は男女とも2人に1人、とのこと。恋愛と病気を組み合わせた小説は多々あれど、主人公が初老という話はとても新鮮に感じられた。朝倉かすみの他著作あるいはエッセイも読んでみたい、と思った。読みたい本がまた増えてしまった…(^_^;)。

  • 50才を超えた“平場” 即ち、中の下流の男と女のお話。舞台が埼玉、東武線沿線というのもリアルな感じです。50才を迎えると60才までの年数をカウントダウンとかします。がん患者の9割以上が50才以上なので、紛れもなくがんはシニア世代以上の病気です。これからの人生を考えたり、がんになったりするのはシニアに身近ですね。ただ、この物語は初恋がシニアになって実る稀有なラブストーリーです。不倫ものではありません。互いに「須藤」「青砥」と中学時代のように呼びあったり、ベタベタしない2人の会話も良かったなぁ。ただ、作者の文章はごちゃごちゃして読みづらいところがあります。

  • お互いを「青砥」「須藤」と苗字で呼び合う2人の、静かながらも強い愛の物語。

    そこそこカッコよく、人生にも不自由なく生きてきたバツイチの青砥。略奪婚の末、旦那を亡くし、歳下の男に散々貢いで人生のどん底を経験し、それでも平凡ながら逞しく生きてきた須藤。
    2人は中学校の同級生だった。一度青砥が当時から「太かった」須藤に告白するが、振られ、50を迎えた2人は病院で再開する。

    そこから2人の友だち以上の緩やかな関係が続いていく。物語の冒頭で須藤が亡くなるのはわかっていたが、それでも終局で須藤がいなくなるシーンは心が引き裂かれるように辛かった。

    お互いさっぱりしたもので、普通の恋愛小説の感覚で読むと物足りなさすら感じるかもしれないが、それでも2人はしっかりと愛し合っていた。長い時間友だちでいた2人が初めてキスをするシーンにはシビれた。女性の作家さんが描くからなのか、とてもドキドキしてしまった。

    ずっとこのままでいられたらいいのにと思うが、病気が2人を引き裂いてしまう。須藤の頑固な強さ、青砥の不器用さのせいで最後までモヤモヤさせられてしまった。でも、最後の一行が全てを溶かし、ゆっくりとしっかりと感動を広げていった。

  • 著者の朝倉かすみさんは、なにげない日常の出来事を掬い上げ文にするのがとても上手いと思う。朝霞にお住まいだったのですね。主人公たちの道ゆく姿がありありと見えてきました。

    タイトルから「平場」ってなんだろう?と興味を抱きました。
    「おれら、ひらたい地面でもぞもぞ動くザッツ・庶民」だから「平場」なのだ!

    青砥健将(あおとけんしょう)と須藤葉子は中学校の三年間、同じクラスだった。中央病院の売店で35年ぶりに再会した二人は50歳。もう若くはないけれど「どうってことない話をして『ちょうどよくしあわせ』になってもいいんじゃないか」と互助会を結成する…

    元同級生との偶然の再会。相変わらず(性根の)太い須藤といまさら青春でもないなと思いつつ、互助会が家飲みになり、心の内をさらけ出せる友だち以上の関係となった。お互いの35年間を取り戻すように語り合うシーンが繊細に丁寧に描かれています。

    生検の結果に怯えていた青砥。かたや進行性の大腸癌になり、ストーマ手術や抗がん剤治療を淡々と受け入れていく須藤。青砥が大切な存在だからこそ、寄りかかろうとしない彼女の姿勢が清い。「このひとと生きていきたい」と青砥は願う。「彼がまだ自分を待っていてくれる。彼にとって月のような存在でありたい」須藤の思いの切なさに言葉をなくしてしまいました。

  • 初読みの作家さんですけど、とても良かった♪
    齢50にして偶然に出逢った中学生時代の昔男子と昔女子の少し切ない悲しい、友達以上 恋人未満な物語。きわめて庶民な大人の、互いに互いを苗字呼び捨てで呼び合う仲なのだけど本音のところは惹かれ合っていく過程がなかなか面白くて焦れったくて大人甘酸っぱい。各章タイトルが女性からの「会話」仕立てで構成されていて、書体が大きいのは読者層寄り?
    主人公たちと同世代以上の読者には あるある 又は ありたい 物語かも知れない(笑)
    直木賞候補作品だったことに納得です。

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著者プロフィール

1960 年生まれ。北海道出身。04 年「肝、焼ける」で第72 回小説現代新人賞、09 年「田村はまだか」で第30 回吉川英治文学新人賞、19 年「平場の月」で第35 回山本周五郎賞受賞。

「2021年 『ぼくは朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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