焼跡の二十面相

著者 :
  • 光文社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912772

感想・レビュー・書評

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  • 語り口調でナレーションが入る、まるでNHKの朝ドラのような文面で書かれていた。そのせいか、ドラマを見ているように各シーンが目に浮かぶ。最後はもう誰が敵で誰が味方かわからなくなりそうなほど、逆転に継ぐ逆転で目まぐるしい。小林少年の奮闘も微笑ましく、楽しく読める作品だ。

  • 小林少年と二十面相の息の合った?共闘がいいですね。

  • 少年探偵団シリーズのパスティーシュ作品。最近この手の作品が多いが、小学生の頃にのめり込んでいた世代としては懐かしい限り。

    タイトル通り終戦直後を舞台に、戦地から戻ってこない明智探偵を待ちながら活躍する小林少年探偵と二十面相との戦い(というか共闘と言った方が良いかも)を描く。

    いきなりの捕物あり、不可思議な殺人あり、宝探しあり、もちろん二十面相お得意の変装もありと、少年探偵団シリーズの要素がふんだんに盛り込まれている。
    最後には「黄金仮面」の壮大なオチまで用意されていて、辻さんの遊び心に感心した。

    しかし全体的にはあの乱歩先生の、少年ものでありながら何とも言えない怪しく泥臭い感じは薄く、むしろスタイリッシュで大人っぽい。
    そういった意味では少年モノというよりは大人向けかも知れない。

  • 終戦直後を舞台に描いた、二十面相のオマージュ作品。明智小五郎の出番は少ないものの、小林少年の活躍がたっぷり。二十面相も変わらず健在。冒険ありトリックあり、どきどきわくわくする読み心地で楽しめます。
    後半の展開については、少年探偵団を読んでいた人たちにはきっと見当がついちゃうんですよね。でもそれも織り込み済み、という気がして。とにかく愉快。とにかく爽快。そしてラストであんな人も出てきたりして! どえらいユーモアが交えられていたのにも笑いました。遊び心いっぱいです。あの「お宝」も辻真先さんならではの発想では。個人的にはあまり興味がないけれど、それでもあんなもん出てきたら度肝を抜かれるなあ。

  • 辻真先さん、懐かしい。
    昔、迷犬ルパンシリーズを読んでいた。
    そのイメージが強くって、今回、見事なまでの少年探偵団のイメージの復活に拍手、拍手。
    こういうの、本当に嬉しくなる。
    明智探偵が不在で、留守を守る小林少年というのもいい。
    敵はおなじみ怪人二十面相!
    お宝をめぐっての丁々発止の闘い。
    ま、そのお宝に、ちょーっと脱力はしたけどw
    最後まで、わくわくしながらページをめくっていた。
    最後に、あの名前が出たのも最高!

  • 「少年探偵団」愛に溢れた良いパスティーシュ作品です。特に、敗戦(第二次世界大戦)直後の日本の描写と、そこで逞しく生活している小林少年の描写が素晴らしい。実際に子供時代をそこで過ごした辻先生でないと書けない「その当時」の思春期の少年の心理描写だよなぁと感心することしきり。鉄道ファンらしいサービスや、原作ネタの散りばめっぷりも見事で良い物を読ませて貰いました。

  • 辻先生による乱歩の「少年探偵団」シリーズのパスティーシュ。
    文体こそジュブナイル仕様になっているが、内容はトリッキーな連続殺人から始まり敵と味方が騙し騙される冒険活劇で、完全に成人向け。春画なんかも出てくるし(^O^)。
    それでも決して荒唐無稽な作品ではなく、読者への呼びかけや暗号解読など、原作ファンなら懐かしさに浸れる一冊になっている。何より、敗戦直後の貧しくて多方面で不自由な日本を克明に描写しているのは、他の作家が書いた「少年探偵団」のパスティーシュには見られない事で、その切り口が斬新で面白かった。

  • 星5にしようか散々迷ったが、原作ではなかった性的な描写やアルセーヌ・ルパン、アニメのルパンなどが出てきたので4にした。ただ、二十面相の話し方や仕掛けの描写は原作そっくりでだった。また最も大事な設定である、血が嫌いなところも原作通りで良かった。

    私が少年探偵団シリーズを読破したのは小学4年生くらいの頃で、今はほぼ倍の19歳。なかなか感慨深かった。奥多摩の鍾乳洞や黄金の虎など、原作の描写が走馬灯のように蘇った。
    当時は歴史の知識がなかったが、戦前の話だったのだと知り驚いた。戦後を力強く生きる小林くんに励まされ、明智先生が帰ってこない心配と、早く二十面相と対決して欲しいという気持ちでいっぱいだった。明智先生が「背がのびたね」と小林くんに感慨深げに言うところで泣いてしまった。

  • 1945年8月15日の敗戦直後
    名探偵明智小五郎は応召していまだ戻らず、文代夫人は軽井沢で療養中

    麻布龍土町にある焼け残った明智探偵事務所の留守を守っていたのは、明智探偵の信頼篤い“小林くん”こと少年探偵団団長の小林芳雄少年でした

    その小林くんが自転車で渋谷の闇市に出かける途中で出会った不可思議な殺人事件

    警視庁の中村警部が首をかしげる謎を小林くんが解いたところから物語が始まります

    国宝級の逸品をめぐり蠢く大財閥の総帥
    それを狙うのは奥多摩の鍾乳洞で逮捕されたはずの世紀の大怪盗怪人二十面相

    明智先生はいつ帰ってくるのか
    賊に囚われた小林くんの運命やいかに

    《昭和を代表するダーク・ヒーロー、
     巨匠の筆に乗り、
     平成の終わりを駆け抜ける。》──帯の紹介文

    「少年探偵団」シリーズへのオマージュがそこかしこに

    「明智先生バンザーイ! 少年探偵団バンザーイ!」

    “痛快無類の冒険探偵小説!”──帯のコピー

    1932年生まれの著者が戦争への悔恨を込めて敗戦直後の世相を描き出す“社会派ピカレスクロマン”、2019年4月刊

  • 本家の雰囲気や文体を漂わせながら、終戦直後の小林少年が事件に巻き込まれてゆく。二十面相は生きているのか?召集された明智先生は帰って来るのか?小林少年が単独でも冴えた謎解きや、行動を見せ格好良い。二十面相シリーズを好きだった中学生~高校生に良い。春画や慰安婦の話題が出てくるので、小学校には不向き。

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著者プロフィール

1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKに入社。テレビ初期のディレクター、プロデューサーをつとめたのち、脚本家に転身。『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆した。また、推理小説作家としても活躍しており、『仮題・中学殺人事件』、『迷犬ルパンの名推理』、『あじあ号、吼えろ!』、『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数の著作がある。現在、デジタルハリウッド大学教授。国際アニメ研究所所長。本格ミステリ作家クラブ会長。

「2009年 『『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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