答えは市役所3階に 2020心の相談室

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  • 光文社
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  • / ISBN・EAN: 9784334915056

感想・レビュー・書評

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  • 猛威を奮ったコロナウイルス、影響を受けてしまった人たちの未来を優しく包みたい #答えは市役所3階に

    ■あらすじ
    2020年、全世界を襲ったコロナウイルス。立倉市役所ではコロナ禍による心の不調や悩み事を「2020こころの相談室」で受け付けていた。

    コロナによって人生が思い通りにいかなくなってしまった人たちが、相談にやってくる。当時、全国のどこにでもいた我々たちの物語。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    あれからすでに3年以上ですか。

    多くの人が亡くなってしまい、有名人にも多くの犠牲者が出てしまいましたね。本当に辛いです。
    そして外出時は常にマスクをして、学校や会社にも行けず、常に周囲に気を使った生活でした。ワクチン接種や、濃厚接触や罹患者に対する差別があったりと、ギスギスした世の中で嫌になったものです。

    本作の主人公は、当時全国のどこにでもいた人たちの物語です。コロナウイルスへの不安、日常生活への影響をリアルに描写しており、当時の辛さを思い出してしまいました。

    なお本作は辛い環境でのお話ですが、いろいろと気の利いた仕掛けがしてあり、読んでいて心を打たれます。きっとあなたも優しい気持ちに包まれる作品です。

    ■各短編のかんたん感想文
    〇白戸ゆり
    コロナのため求人が減り、就職難になってしまった女子高生のお話。

    人生では何度か重要なタイミングがあります。受験、就職、結婚、出産など…
    特に未来のある若い方は、なんという災難なんだろうと思ったものです。不安な中で、彼女の葛藤が細かく描かれていて本当に切なかったですね。

    〇諸田真之介
    コロナ禍の中、結婚と仕事に逡巡する若き男女の物語。

    ある意味、読んでいて一番しんどいお話です。私も当時、この人たちをなんとか守ってあげられないのかと、思ってましたね…

    〇秋吉三千穂
    幸せな出産と子育てだったはずが、コロナの猛威が襲ってきて…

    守るものがある人の大変さがリアルに伝わってくる。
    そして最低な人間は、どんな環境でも最低ですね。

    〇大河原昇
    素寒貧の中年男、コロナで住まいを追われ、公園に住むことに。

    主人公のキャラクターが愛らしく(おっさんだけど)、一番好きな作品です。
    気持ちがめっちゃわかる、私も一つ間違えば、この主人公と同じだったろうなぁ

    〇岩西創
    オンライン授業を受ける学生、部屋にこもってばかりで身に入らず…

    私もテレワークが始まった初期のころは、ストレスがたまりまくりでした。通勤時間がないし、合理的な仕事ができるのは良いですが、やっぱりコミュニケーションは不足します。
    主人公のような若者も、全国にいっぱいいたんだろうなぁ…

    ■きっと共感できる書評
    コロナ禍では普通に生きるだけでも大変なのに、弱い立場の人はさらに追い込まれてましたね。本作にでてくるのは、当時どこにでもいた我々ひとりひとりと同じです。

    現在はかなり収束はしてきていますが、完全になくなったわけではありません。これからももっと大きな災害がやってくるかもしれません。

    しかしそんな時に重要なのは、決してひとりに悩んで不安にならず、近くの誰かに話しかけること。大切な人を守る意思があれば、きっと小さな幸せが芽生えてくるだろうと思いました。

  • 初読みの作家さんです
    レビューを読んで手に取りました(^^)


    市役所に新しくできた
    コロナ禍における心の不調や、悩みごとを聞く
    『こころの相談室』にやってくる人たちの話です


    コロナのせいで、
    コロナがなければ、
    そういった悩みを受け止めることで
    相談者が徐々に変化していく
    そんな物語かなと読み進めていたら


    なんかミステリーな展開に!!
    日常ミステリーとでもいうのでしょうか?
    各章ごとの物語のラストに
    カウンセラーによる謎解きが行われます
    洞察力が凄すぎる!


    そんな展開は知らずに読んでたので、
    1、2章は驚きました!
    本編で楽しんで更に謎解きで楽しめる感じ!
    3章以降は謎を考えながら読んでました(^^)


    後半は作者もそれを意識してるのか
    読んでいても謎がある感満載で
    悩みに寄り添う感じが
    少なかったような気がして
    ちょっと残念な気もしましたが
    本編で感じたモヤモヤを
    一気に解決してくれるのでスッキリします(^^)
    謎解きとして読んだら面白いのかもしれないですね


    カウンセラーの二人はとても好きです(^^)
    話聞いてもらいたいー!
    話すだけでスッキリすることってありますよね
    行政がやってる相談室とかたまに見かけるけど
    なかなか足が向かない…
    行ってみたら案外いいのかな…
    てかみんなあんなに隠し事するもんなんでしょうか??


    産後のお母さんの話は
    自分も割と産んで間もないので
    もう共感しかなく、
    あの閉塞感をよくかけてるなと思いました。

    次はミステリーとして
    この作家さんの作品を読んでみたいです(^^)

  • コロナ禍ですべてが激変した。
    それも思いもよらぬ悪い方へと…
    この怒りや悲しみを苦しみを誰に話せばいいのだろうか?
    そもそも話をして解決するのだろうか?

    答えは市役所3階に。
    『2020こころの相談室』が開設されコロナ禍における心の不調や悩み事を晴川と正木の2人の相談員が担当する。

    晴川さんが柔らかい笑顔で、時おり深く頷きながらことばを発することなく、耳を傾けてくれる。
    決して否定はせずに「大丈夫ですよ。心の内を吐き出してください」と包容力がありながらも洞察力は半端ない。
    すべての人のちょっとした誤魔化しや嘘を見抜く。
    けっして彼女が解決するわけではないのに上手くおさまるのが不思議だ。
    正木さんは、年齢的に人生経験は豊富であり、醸し出す人懐こさに来る人を和ませる力がある。

    全5話あるが、1話のNのお守りがラストの5話まで繋がっているのもおもしろい。
    それぞれの悩みが晴川さんの推理で氷解するのがミステリーになっている。

    • ポプラ並木さん
      湖永さん、コロナ不条理を感じつつ、心理士の2からのカタルシス、堪能しました。面白かったです。相談者は何故か心理士にウソをつくんですよね。コロ...
      湖永さん、コロナ不条理を感じつつ、心理士の2からのカタルシス、堪能しました。面白かったです。相談者は何故か心理士にウソをつくんですよね。コロナ禍、闇深いです。
      2023/04/22
    • 湖永さん
      ポプラ並木さん コメントありがとうございます。

      辻堂ゆめさん、続いていますね。
      これもコロナ禍ならでは…の悩み相談ですよね。
      とても読みや...
      ポプラ並木さん コメントありがとうございます。

      辻堂ゆめさん、続いていますね。
      これもコロナ禍ならでは…の悩み相談ですよね。
      とても読みやすくて、あれば良いなと思える相談室でしたねー。
      2023/04/22
  • コロナが流行り始めた2020年のお話。
    市役所に設けられた心の相談室。臨床心理士の若い女性カウンセラーと、年配で新米の男性カウンセラーの二人が担当する。
    コロナ禍の苦悩を抱えた様々な年代の人たちが相談にやって来る。
    悩みを聴いてもらい、気持ちに共感してもらった相談者たちは、最終的に自身で悩みを解決していく。
    答えはいつだって自分のなかにあるのだ。
    短編集だが、少しずつ繋がっていく構成は見事だった。

    カウンセラーって探偵みたい。表情や仕草、言葉の矛盾を見逃さず、心の内を推理する。
    探偵と違うのは、真相を暴かないところ。相談者の隠したがっていることはあえて指摘せず、相談者が去った後にひそかに種明かしする。
    女性カウンセラーの洞察力と推理力に感心するとともに、おじいちゃんカウンセラーのキャラのよさに癒された。

    コロナの影響は私たちの生活を変えるほど大きかった。
    亡くなった人や仕事を失った人だっている…苦しいのはみんな一緒…などと無意識に我慢していなかっただろうか。
    本来、悲しみや苦しみは比較できるものではないはずなのに。これは災害が起きたときにも言えること。
    登場人物たちもコロナの影響で様々な悩みや苦しみを強いられることになった。
    目指していた合唱コンクールが中止になる、就職口が激減する、仕事を失う、病院で面会できない、感染予防のため家族に会えない、リモート授業で学校に通えないなど。
    苦しいとき相談できる人がいることって大事だなぁと改めて思った。
    こんな素敵なカウンセラーがいたら相談者も殺到しちゃうよなぁ。
    いつか、そんなこともあったねと懐かしむことができる時がくるといいな。
    固くなった心を解してくれる優しい物語だった。

  • コロナのせいで、こんなことになってしまった。コロナのせいで、できなくなった数々のこと。何で!どうして!?
    その思いをぶつけてやりたい!どこにぶつければいいの!!

    コロナ拡大はスピードを増した。
    発生当時、大学卒業式中止、入社式、
    入学式中止になったところが多かった。
    人生の大事な節目なのにだ。


    この本は、コロナ期に様々な思いを抱え
    思い悩む人々にカウンセラーさんが
    寄り添い、一緒に考えてくれるという
    相談室を描いている。
    五話の連作短編になっている。


    相談者は、何から何まで打ち明けて相談ができるわけではない。
    カウンセラーは凄い人のようで、相談者の話し方や素振りで嘘や秘密を見抜く。
    もちろん、相談者には言わずにだ。


    今、コロナが収まりつつあるという。
    マスクを外している人も増えた。
    大丈夫なのだろうか?私は思う。
    中国では、日本への旅行が解禁になった
    とTVニュースで言っていた。またコロナが運ばれてきたらどうするんだ!
    心配しすぎだろうか?

    また、初読み作家さんが増えた。
    辻堂ゆめさん、とても読み易い文章だ。
    以前からお名前は知っていたが、この本が初めてだ。



    ――――少しだけ ネタバレ―――――
    五話に登場する五人にはきょうだいが
    いる!
    リモート授業に飽き飽きする受験生。
    住所を持たずに建設現場労働者の男性。
    妊娠中から出産後まで家に帰らない彼。
    この話が一番印象強い話だった。
    私が女性だからなのか?

    2023、8、14 読了

    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、
      共読です。
      この心理士2人の洞察力は凄かったね!
      コロナ禍で疲れた心を癒してほしい~
      アールグレイさん、
      共読です。
      この心理士2人の洞察力は凄かったね!
      コロナ禍で疲れた心を癒してほしい~
      2023/08/25
  •  辻堂ゆめさん、初読みです!この作品は、コロナが未知のウィルスとして恐れられていた、治療法もワクチンも確立していなかった2020年度のお話です。物語の舞台は、立倉市役所に開設された「2020こころの相談室」…2人のカウンセラーが常駐し、2020年度だからこその悩みに対応していく5話の連作短編集。

     コロナ禍であることによって、性別も年代も異なる人々が将来の夢、婚約者、幸せな未来、人間の尊厳、生きる気力を失ったとカウンセラーに打ち分ける…。カウンセラーに話を聴いてもらったことだけでは、抱える悩みの解決とまではいかないのは当然のことです。ただ、話すと客観的に自分のことをみることができるのかな…そして、あの頃は誰しもが、この作品のカウンセラーのような人を欲していたんだとも感じました。

     この作品では、すべての登場人物が生きにくさと、秘密を抱えていました。限られたカウンセリングの中で、当事者が話したストーリーと全く異なるものであろう秘密について推理するって展開スゴイです。ただあまりにも真実が当事者たちの話すことと違ってるんだよね…ど感じてしまいました。

  • この1か月間に3冊読了、いいペース。毎回心の浄化・カタルシスを促す作品ばかり。コロナ禍ではやっぱり多くの方の人生を狂わせてしまったんだなぁと。市役所3階に設置された「心の相談室」。このコロナ不条理だからこそ誰かに話しを聞いてほしい。話を聞くのは2人の心理士。相談者への共感だけではない叱咤激励。話を伝えることで自分の頭の中が整理でき、カタルシスへの向かっていく。しかし、この心理士2人の洞察力は探偵レベル。相談者全員がつく嘘、それをいとも簡単に暴いていく。このような相談相手を公的に配置できるといいんだろう。⑤

  •  コロナ禍は社会の様相を一変させた。人生設計が狂ってしまい、不安や苛立ちでいたたまれなくなった人たちは多い。
     そんな悩みに押しつぶされそうな人のため、市役所3階に設置されたのが「 2020心の相談室」だ。

     相談に゙訪れた人の話をじっと聴き気持ちに寄り添いながらも、話されなかった事情やその真意まで読み取って相談者の背中をそっと押す。
     そんな女性カウンセラーのミラクルカウンセリングを描くハートウォーミングミステリー。
             ◇
    将来の夢を失った17歳の白戸ゆり。高校3年の進路選択。母と2人暮らしで経済的余裕がなく、就職を選んだものの、折からのコロナ禍で希望するブライダル関係やホテル関係への就職は絶望的な状況だ。

     進路担当の教師は、製造や販売を勧めてくる。でも夢を諦めることができないゆりは、当面はブライダル関係のアルバイトでいきたいと母親に相談したところ……。
       (第1話「白戸ゆり(17)」) 全5話。

         * * * * *

     とてもおもしろく、読み応えもありました。それは2本の柱がしっかりしていたからです。

     1本目は、コロナ禍で苦境に立つ人たちの様子が端的に描かれていて、共感できる内容であるというところです。リアリティという点では申し分ありませんでした。
     さらに言えば、その矢面に立つ人間として、いろいろな立場の人たちを設定したところに感心しました。特に、医療関係者や就職希望の高校生を持ってきたのはよかったし、ホームレスが被った被害まで描いたのは興味深かった。そのユニークさにうなってしまうほどでした。

     2本目は、カウンセラーの晴川あかりの名推理と謎解きに無理がなく、どれも意表を突かれるという点で、できのいいミステリーを構成しているところです。個人的には、これまで読んだ辻堂さんの作品のなかではいちばん優れたミステリーだと思います。
     相談者に対し、話を急かすことも必要以上に詮索することもなく、丁寧に聴き取っていくあかり。その目のつけどころが明かされる各話のエピローグ部分。もう読むのが楽しみで仕方ありませんでした。
     
     この市役所の相談室でのシリーズ化は難しいかも知れませんが、臨床心理士・晴川あかりとしての物語を読んでみたいと強く思いました。連作、長編どちらでもうれしいので、辻堂ゆめさん、ご一考くださいませんか。よろしくお願いします。

  • コロナ禍で開設された、ある市役所の『こころの相談室』のお話。
    5人の相談者がそれぞれの悩みを打ち明けに来るのですが、相談後に相談員さんの推理が毎回書かれていて、あ〜本当はそういうことだったのかな!と気付かされて面白かったです。
    特に、『婚約者を失った』男性の話と、『幸せな未来を失った』女性の話が印象に残りました。
    全体的に読みやすい文章でした。

  • コロナ禍で苦しんだ人(合唱部の高校生・医療従事者・妊婦/産後のママ・仕事を無くした人・受験生)が立倉市役所の「こころの相談室」を訪れ、ベテランカウンセラー春川さんと人生のベテラン正木さんに思いのたけを話す。その後相談室訪問後のことが描かれ、最後は相談室でのカウンセラー二人の会話(謎解き)という構成。
    私は4話の大河原昇さんが面白かった。
    各章をつなぐアイテムも持ち割りと市役所だから近辺のことなんだなと思わせられる最終章。この作者のいつもながら後味の良いミステリーでした。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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