アメリカ第二次南北戦争

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334925116

作品紹介・あらすじ

直木賞作家が鋭い批判眼と歴史観を以て描く、起こりうる明日の世界。「世界の警察官」アメリカに、内乱が勃発。そのとき日本は、世界は、どう動くのか-。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの分断を先取りした娯楽小説。

    よくやる国別ステレオタイプジョークをエスカレートさせたような感じ。すぐに南部に進んだからか、ギークやナードが出てこないのは物足らなかった。

  •  『アメリカ第二次南北戦争』というタイトルと、「アメリカは成功したオウム真理教」などという紹介文を見たら、別に佐藤賢一作品でなくとも気になるというものだ。近未来小説だが、もはや今年の出来事になってしまった。

     2013年、アメリカ初の女性大統領がダラスで暗殺され、黒人の副大統領が昇格して銃規制に乗り出す、という出来事を契機に、南部諸州を中心としたアメリカ連合国が独立を宣言し、合衆国と内乱状態に陥る。世界各地に配備されていたアメリカ軍は本国に引き返し、連合国と合衆国に分かれ、軍事的に優位な連合国が合衆国に空爆する。
     とりあえず停戦状態となった分裂アメリカに日本国内閣官房政府広報室の役人である「私」が「うちの部で独身は君だけだから」と、広報誌の取材のために派遣されるというのが、思いもよらないが、読み進むとなるほどあり得るかも知れないと思われてくるこの小説の設定である。アメリカがそんな状態なので国連本部は日本に移転していて、常任理事国になっていたりするなど、細部の設定もニヤリとさせられることが多い。ニューオーリンズの攻防戦では、フランス史に詳しい佐藤賢一、当然、アレが出てくる、など。

     この内乱の本質を見極めるという命を受けた「私」は合衆国から連合国へと、連れを増やしながら珍道中を続けていく。出てくる人物はそれぞれ違うタイプの馬鹿だが、みんな馬鹿。日本人も馬鹿だが、アメリカ人はもっと馬鹿。という調子で、中盤スラップスティックになりそうなのだが、そこは佐藤賢一、歴史的パースペクティヴから、アメリカという国の本質を「成功したオウム真理教」という刺激的な比喩で描き出す。世界はアメリカを必要としていない。アラブ人は端からそう思っているだろうが、いわれてみれば、その通りと思わされる昨今の国際情勢である。中東戦略も、京都議定書も。そして世界はアメリカを必要としないということに、なかなか気づかないわれわれ日本人に対しては、日本とアメリカを男と女の関係に譬えて説き起こすのも、この作者らしい。

     私は日本がその国土を失ってしまう小説(小松左京『日本沈没』)と、第2次世界大戦でアメリカが同盟国側に勝てなかった小説(ディック『高い城の男』)を頭に思い浮かべて、とこかで引き比べつつ読んでいた。しかし、考えてみると、小松左京の「アメリカの壁」と対照すべきかも知れない。いわばアメリカという国の沽券を蹴散らし、虚仮にしたこの小説を面白がって読むことに、アメリカに対する日本人のコンプレックスがまさに表現されているのではないかなどと屈折した思考に落ち込むあたり、まだまだわれわれ(私?)はアメリカから自由ではない。

  •  図書館より

     大統領暗殺事件を機に内乱状態となってしまったアメリカ。そしてそれはアメリカを”アメリカ合衆国”と”アメリカ連合国”とに二分にする事態にまで発展する。
     内紛から二年、休戦条約が交わされた合衆国に現地調査のため森山悟が送られる。

     序盤は展開が遅く、また話の背景がシリアスなわりに登場人物たちがハチャメチャでそのギャップにも戸惑いました。具体的に書くと、

     主人公の悟は義勇兵の取材で出会った女性兵士ヴェロニカと出会ったその日にセックスをし、その後もたびたびなんでそんな場面で? という個所で邪な想像をし、
    彼になぜか同行するヴェロニカは周りを気にしない自由奔放っぷり。

     そんな彼らに暗殺事件の真相を一緒に調べるよう依頼するマーガレット・スペンサーも重大な事件の調査をしている割に調査があまりにもお粗末…。
    悟の現地案内をすることになる義勇兵の結城はまだマトモですがアメリカの話になると周りが見えなくなり…

     しかし中盤以降話はぐんと面白くなります。アクションシーンあり、頼りなく描かれていた悟の男らしいシーンあり、そして明らかになっていく大きな陰謀論と読まされます。
     自由奔放だったヴェロニカの言動もいつの間にか魅力的に思えてくるのが不思議です(笑)

     正直始めはなぜこの話でヴェロニカのようなハチャメチャなキャラを出すのか疑問だったのですが、
    読み終えてみるとこの話を気持ちよく締めるのには、彼女のような存在が必要だったのだな、と思えました。

     著者である佐藤さんのアメリカ論もなかなか面白かったです。著者紹介によると大学院の博士課程も受けていた方らしく、
    そのためか作品内のアメリカ論もリアリティや実感があるように考証されているのだな、というのが伝わってきました。

  • いるいる、アメリカかぶれのくせに、アメリカの批判ばっかりしてるヤツ。

  • ~「MARC」データベースより~

    2013年、「世界の警察官」アメリカに内乱が勃発。

    死傷者の飛躍的な増加。

    即時停戦に向けた国際社会の努力は急がれている。

    そのとき日本は、世界は、どう動くのか。

    直木賞作家が描く、起こりうる明日の世界。


    ~感想~

    発想は悪くないねんけど、戦争の原因となった陰謀に無理がある。
    しかもこれ、アメリカ在住が長い人が書くならまだしも、
    日本に住んでる人が書いても余計に説得力ないねんな~

    ただ、アメリカは成功したオウム真理教という考えは、
    妙に納得してしまったわ。

    あと、主人公が嫌い・・・

    でも、その主人公を慕う女性の能天気さは好き(ノ´∀`*)


    おしまい。

  • 2013年,アメリカで初の女性大統領が暗殺され,黒人の副大統領が昇格,
    FBI主導での事件の捜査と銃規制強化を進める。
    反発した南西部の諸州が「アメリカ連合国」を宣言して「第2次南北戦争」がはじまり,
    連合国側優勢で2015年に休戦状態となる。
    2016年,森山悟はジャーナリストとして合衆国と連合国双方を取材するが,
    連合国側のニューオーリンズで事態は急変,ある真実を知ってしまう。

    アメリカを考えるための1つの解釈としておもしろい。
    もちろんフィクションだが,設定がしっかりしていて,細かい演出もあり,引き込まれる。
    ただ舞台設定のリアルさに比べて,主人公たちの行動はあまり現実的でない感じがする。

  • 我こそが世界一と驕っていたアメリカの近未来。んなアホなぁっておもっちゃうこともありますが、主人公がとても好きなので評価高いっす。かっこいいです。私もこのような男性に救ってもらいたい~

  • 【あらすじ】
    大統領暗殺事件をきっかけにアメリカがに二分されたという仮想の近未来。その内情を探るべく日本人調査官は米国に降り立つ。北部から南部へ内戦によって人の本質がむき出しになった国土を行く旅は、同時にアメリカのさまざまな面に対し、光を当ててゆく旅でもあった。



    舞台は近未来ではあるものの、ほぼ現在と考えて差し支えない。歴史上の人物の根本的な行動原理を極めてシンプルなものとして読み解き、その複雑な人生を貫く一本の道を見せることが佐藤賢一の真骨頂。しかしそれは歴史小説だからこそ可能なのであって、人の行動に複雑な要素がからみ合う現代を舞台としてはその手法は使えないのではないか? そう思えば南北分裂というかなり無理がある設定を付与したのは、人の蛮性が剥き出しになる戦闘状況を作り出すことで佐藤流の語りを可能としたのかもしれない。


    そうした状況下で解析されるアメリカのあり様を、フィクションであるとのエクスキューズを含めた大袈裟さと認識するか、あるいは剥き出しにしてしまえばすまし顔の近代国家とてこの程度でしかないと見るか。


    いずれにせよ、今回シンプルな行動原理に解析されて、その生を語られる対象はアメリカという国家そのもの。世界一の大国で、民主主義の旗手を標榜し、世界中に戦争をまき散らす、そんな特殊なアメリカという国家の血統と理念を、佐藤流のシンプルさで読み解いて見せている。 ああ、と腑に落ちる要素も少なくなければ抜群に面白くはあるのだが、やはりストレートに楽しめるのは歴史ものの方だとも思う。

  • なんだい、このテの近未来シミュレーション小説を佐藤さんが書くとは思わなかったよ。
    しかし、話の内容と文体に違和感が。
    あくまで佐藤節っちゃ佐藤節なんですが、気の弱すぎるエロのび太&色気だだもれすぎるセクシーダイナマイツ☆しずかちゃん(※未成年)&やたらニヒルなスナイパードラエもんが、第二次南北戦争絶賛開催中のアメリカを「うらァ!アメリカの大地を北から南まで縦断しつつ取材するぜえ!o(゜Д゜)」(←・・・違ったかな)的ごむたい紀行を繰り広げるって言う話には、仰々しい時代小説文体はあんまり合わないだろう。
    もっと軽くてポップでさばさばした文章の方がよかったんじゃ。
    と思いながら読了しましたが、ご自分のスタイルを通すのもまた作家道ってものなんですかねえ、と知ったかぶりなことを言ってみる。
    しかし、このアメリカ人論はどうなんだ?
    知り合いのアメリカンとはずいぶん違うな(笑)
    とりあえず、次に読むなら『英仏百年戦争』ですかねえ・・・。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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