二人静

著者 :
  • 光文社
3.86
  • (21)
  • (45)
  • (24)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 195
感想 : 48
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927288

作品紹介・あらすじ

父親の世話、娘の場面かん黙症、夫の暴力、恋人の自殺…それぞれに事情を抱える二人が出会ってしまった。真実の愛には、何ができるのか。リアリズムの名手が、精神の進化に挑む感動大作一〇〇〇枚。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 初めて読む作品。
    盛田さんの名前も私は存じ上げなかった(失礼)

    生きていく、生活していくという地味なベースが大変細やかに書かれていて、とてもリアルで登場人物が絵空事ではなく、それだけに訴えことが大きい。

    共に生きる、そばに居る人に対しての愛情が素晴らしい。利己ではなく利他。自分と相手の立場をきちんとわきまえ、大事にしている上での利他の愛情。

    最近押し付けがましい利己的な感情をぶつけられることに辟易し憎みもした。又そういう欠点は自分の中にもしっかりとあって、自己嫌悪にも陥っていたのだけれど。
    そんな感情を払拭させるようなしっかりと生活に根ざした他者を優しく思いやり言動を表現する人達のなんて素敵なこと。

    私にとってはタイムリーにあるカタルシス、またはこれからの指針のようなものを感じさせる小説だった。
    自己愛に満ちている私だけれど、遅すぎるかもしれないけれど、利他的な愛の行動化、一つのテーマ。

  • 場面かん黙、DV、痴呆介護。それだけ見るとどんよりしそうなアイテムを上品にゆったりと読ませる。誰かと信頼し合い寄り添い合って生きることが出来ない二人の心の距離が哀しいが、いつの日か安心して共に歩いていける日が来ることを祈らずにはいられない。

  •  顔面緘黙症の娘を育てるシングルマザーと認知症の父を介護する独身男性。辛い現実に直面し生活している二人は、女が勤務し、認知症に罹患した父の入所する特別養護老人施設。その二人の心の交流を描く。


     認知症の父の介護にも、疾病を持つ少女の子育ての、何れにも共感してしまい、読み進めるのが少ししんどかった(勿論、良い意味で)。それは物語と登場人物の心の動きにリアリティが感じられたからに他ならない。
     「静」というタイトルが作品=文体の雰囲気を醸し出す。

  • 盛田隆二氏が聞いた事が無かったがツイッター文学賞という物を取った作品『二人静』を読了。認知症の父親を持つ食品会社に勤める男性。人前に出ると声が出なくなってしまうコミュニケーション障害を持つ女性。二人は人には深い傷をうけた過去を持っている。そんな二人が認知症の父が入る施設で持って出会う。様々な障害に出会いながらわずかにさす希望の光を追い求めて行く二人の物語だ。複雑に絡み合う二人の物語がものすごく上手に編み上げているので、かなりのページ数なのだがさくさくと読み進める事が出来た。ちょっと重いけどいい作品です。

  • 素直な感想としては、気軽に読み終わった後の感想が書けないってことかな。
    自分のこれからの未来にすごく身近すぎて、どのようにまとめたらいいかわからないや。

    題名がとても深い意味があるように感じる。
    決して一つにならない二人静のお花がしくしくと物語とリンクして少しだけ淋しい気持ちになった。

    出会えてよかった。

  • 大切な人だから静かに見守っていきたいと思う周吾の控えめで深い想いや、支えてもらっている安心感が伝わってきました。

    何度かもどかしく感じる部分もあったけれど、男女のガツガツした生々しい関係ではなく、こうやってお互いにサポートしつつ、温かく包み込むような恋愛っていいな。

    親の老後の介護は深刻な問題。できるだけのことはしてあげたいけど、つきっきりのお世話は難しい。働かなくちゃいけないし。無理をして自分たちで抱え込んでしまうと、自分が潰れてしまう。切実な問題。自分たちの親に介護が必要になったとき、都合良く介護施設に入れればいいけど、在宅介護サービスが受けれればいいけど、お金の不安があるのだけれど・・・といろいろな心配してしまう。そして親の老後の心配がなくなれば、今度は自分たちの老後を心配しなくてはならない。どっちにしても頭が痛い問題です。

  • DVとか介護とか、その手の話を読むと、フィクションであっても大体どうしようもない怒りにとらわれてしまうんだけど、この本はそんなことはなかった。読後感がすごく静かで、そして少し悲しかった。

    DV夫から逃げて二人ひっそりと暮らす母子と、その母の方の勤め先である施設で、年取った父を介護している男。
    母子の小学生の娘は場面緘黙症といって、母親以外とはうまく話せない。
    これでもか、という不公平の中でもただひっそりと、静かに生きようとする母子の姿に読者として救われる。二人静という植物をググって調べてみたけれど、この親子の姿を投影したタイトルなのだな、と納得。

    一方、男の方は、母親の方との結婚すら望まず、ただひたすらこの二人を見守ろうとする。こんな人いないよ!と、実は思ってしまった。
    例えば母子を追ってくるDV夫に対して、何故暴力に走り、何故母子に執着するのか、というところまで考えて、原因を解決しようと考える。DVそのものを責めることは簡単だけど、それでは問題は解決しないし母子は救われない。
    その、DV夫までを救おうとする行動がこの小説中私にとって一番の衝撃だった。

    男の人って「守ってやる」と言う自分に酔っていて「え、何から?」とか「あなたの存在が一番私を傷つけてますけど?」ってことが多いよね、と友人と盛り上がったことがあるくらいで、現実にはこんな事ないよ、と悲しい気持ちで考えてしまうけど。

    実際にいくらでもあるだろうこんな家庭で、同じように生きていくのは多分すごく難しいことだと思うんだけど。

    でも、読み終わってすごく救われる小説でした。

  • 第1回(2011年度)受賞作 国内編 第1位

  • あかりのDV問題は元夫が逮捕されてある程度決着がついた形になったけど、
    実際のDVは介護が看取るまで終わらないのと同じで
    加害者が消えない限り被害者は心落ち着けることができないと思う。

    介護もDVも終わりを待つのはとても辛い。
    その辛さを和らげるには問題を直視する時間を少し減らして、
    希望の持てる事を見つけて両立していくのがいいのだと思う。
    志歩ちゃんが周吾とあかりの希望になっているように。

  • 【二人静】 盛田隆二さん

    食品会社に勤める町田周吾。32歳、働き盛りの彼の父に認知症の
    症状が現れ始めた。気むずかし屋の父は定年後に妻をパーキンソン病で亡くしてからますます人との関わりを避けるようになっていたのだった。病気の進行具合から、「父を家で一人でおくのは危険」とのケアマネージャーの判断から彼は父を有料介護施設「のぞみ苑」へ預ける。
    父は入苑を嫌がったが仕方がない、仕事を休んで介護を続けるコトは不可能なのだから。。周吾はそこで乾あかりという同い年の介護職員と知り合う。あかりは常に入所者の気持ちになって介護をしていた。そして、そんなあかりに周吾は惹かれ始める。
    周吾は「恋」からはあえて距離をとるように気をつけてきた。
    自分には恋をする資格がないという辛い思いが学生時代にあったのだ。一方あかりにも過去に夫のDVに苦しんだという辛い記憶があった。彼女はやさしかった夫が突如暴力をふるう男に豹変する様を見てきており男の人の優しさにふれるコトをおそれていた。それは信じていた人に裏切られるという恐怖であった。あかりには一人娘がおり、彼女の娘・志保は場面緘黙症という情緒障害をかかえていた。娘の病気も夫のDVの影響によるものだ。
    認知症が進み、ますます大変さを増す父の介護。
    暴力夫へのトラウマが消えないあかり。情緒障害と闘う志保。
    彼らの未来に希望はあるのか・・・



    初めて読む作家さんですが、評判通りよかったです。
    「きみがつらいのは、まだあきらめていないから」という
    本の作者さんというコトは読み終わってから知りました。
    次はこの本を借りてこようと思います。(^_^)

全48件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九五四年、東京生まれ。九〇年『ストリート・チルドレン』で野間文芸新人賞候補、九二年『サウダージ』で三島由紀夫賞候補。『ぴあ』の編集者を経て、九六年より作家専業。二〇〇四年に刊行された『夜の果てまで』は三十万部超のべストセラーとなる。著書に『残りの人生で、今日がいちばん若い日』(祥伝社文庫刊)、『いつの日も泉は湧いている』『蜜と唾』など多数。

「2020年 『焼け跡のハイヒール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

盛田隆二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×