ミーコの宝箱

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929022

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに森沢明夫さんの作品に癒されたくて手にとった『ミーコの宝箱』

    全7章は全て主人公ミーコの物語
    厳格な祖母と優しい祖父に育てられた幼少期
    世間の偏見の中で過ごした思春期を経て
    愛娘チーコを授かり介護と風俗で生計を立てながら、地に足をつけてしっかりと根を張るミーコの生き様に、ずっと涙腺が崩壊しっぱなしだった。
    きっとチーコの結婚式並みに、私も明日は目が腫れているだろう笑

    最初は過激で生々しいSMプレイの話から入り、面白い展開だなぁと驚いたのも束の間、数分後にはホロホロと涙が溢れて来た。
    各章毎に様々な感情が押し寄せて来るので、心が揺さぶられて慌ただしい程だった。どれも綺麗事や美しく纏まった物語ではなく、厳しい現実を生きる中で確かにそこにある人間愛を感じた。

    ネタバレになるので詳しくは避けるが、
    私にとって特に茶色いお弁当の話は、亡き母に辛くあたってしまった思春期の記憶とリアルに重なった。戻れるのなら、あの頃に戻って母親に言えなかった素直な感謝の気持ちを伝えたい。

    例え気付くのが遅れても、タイミングが見つけられなくても、相手が生きている間は誰にでも伝えるチャンスがある。素直に言えなかった思いを悔いながら、時には過去に背を向けて生きていくより、伝えたい思いをしっかり言葉にして相手に届けられる生き方をしたいと思う。

    またミーコの生き方から、身近な幸せを見つけるのも見えなくするのも、自分の心次第だなぁとつくづく感じた。
    これは同作家さんの『きらきら眼鏡』にも通じるものがあった。祖父が自作してくれたミーコの宝箱も、蓋に取り付けられた祖母の鏡も、見方を変えればそこにどんな思いが秘められているのかが分かるのだろう。

    読後は温かく満ち足りた気持ちになった。
    やっぱり森沢明夫さんは大人の癒しだ。
    心のデトックス効果があるので、疲れ気味の時や、元気の出ない時にオススメの一冊。


    以下、印象的だったフレーズ

    「人って、生きていれば嫌なことが普通にたくさんあるでしょ?でも、目を鍛えると、嫌なことと同じか、それよりちょっぴりだけ多く、幸せを見つけることができるの
    同じガラクタを見ても、ゴミに見える人と宝物に見える人がいるとしたら、せっかくだから、宝物に見える目を持った方がいいでしょ。その方が幸せになれるって」

    「心ってね、傷つかないで、磨かれるだけなの。やすりと一緒だよ。やすりで磨くと、削られて痛むけど、でも、ごしごしやっているうちに、最後はぴかぴかに光るでしょ。
     チーコもね、ずっと心にやすりをかけられていたから、すごく痛かったと思うの
    でもね、そのおかげでいま、ぴかぴかに磨かれた心があるよ。ここにね。」

  • もうちょっと登場人物を絞ったほうが奥行きが出たんじゃないかなぁなんて思っちゃいました
    どの章もちょっとずつ足りない感じ

    それと全体を通しては森沢明夫さんらしい優しい空気感があったんですが人物の設定とこの空気感があまり相性の良くない感じもしちゃったんですよね

    うん、まあそう感じました

  • 出だしは好みでしたが、途中でなんだかわからなくなって、でも、読み進めたら、、、、よかった!の感想しかないです。
    珠玉のフレーズが、この作品にあります。

  • 両親とは縁が薄かったのかもしれないけれど、祖父母に育てられたのは正解だったんじゃないだろうか。
    毎日小さな宝物をみつける。道端に咲いている花をみつけたとかそんな些細なことでいい。いいな、それ。
    ありがとうの手というのもうまいこと言うわ。
    「心ってね、傷つかないで、磨かれるだけなの」(p.283)
    そう考えると、ちょっと嫌なことがあっても心がピカピカになると喜べそう。
    そうありたいな。

  • ミーコを産んですぐ16歳の母は失踪
    父は実家にミーコを預けてアメリカへ
    父方の祖父母に育てられたミーコ
    祖父は指物師で、とても優しかった。
    祖母は虐待の様な事をし、とてもとても怖かった…。


    ミーコの記憶には優しかった祖父・厳しかった祖母
    でも、祖母の厳しさには理由があった。
    自分の産み育てた息子の無責任さに激しい自責の念があり、
    親が居ないというだけで、これから厳しさに耐えなければ
    いけないミーコの将来を慮っての事だった。
    ミーコの痛みは、厳しく叱る彼女の痛みだった。
    自分はミーコの躾をする役目…。
    心の優しさを育てるのは祖父にして欲しいと願ってた。

    でも、祖父母の気持ちが届かず、
    中学では家を嫌がり、その後絶縁状態になったのは辛かったなぁ。
    でも、祖父母の教えはミーコの心の真ん中にしっかりあった。
    『目は、毎日小さな宝物を見付ける為にある』
    『手は、ありがとうの手にしなさい。他人様からお礼を言われる為にある』
    また美しいミーコの所作や裁縫・料理
    お祖母ちゃんの躾がいきてたね。
    ミーコの心の在りようも、心にしっかり芯があるのも
    やはり祖父母のおかげだったよね。

    波瀾万丈の人生のミーコだったが、ミーコに関わる人達の
    心を救っていった。前に進む勇気を与えていった。
    ミーコの素敵な心は娘チーコにもしっかり受け継がれていた。
    あんなに愛情一杯に育てたんだもんね。
    現在の幸せそうなミーコの姿も嬉しかったし、
    新しい幸せの予感にも口元がほころびました。

  • 今まで読んだ森沢明夫さんの小説とちょっと違うので、初めは違和感がありました。
    しかし、やっぱり森沢明夫さんですね

    強烈なおばあちゃんだけど、1番にミーコの事を考えている優しくて強く、たくましい女性
    ミーコにとっては辛い記憶でも、おばあちゃんがありがとうの手を教えてくれたから、沢山の事を乗り越えてこれたし、おじいちゃんに教えてもらった幸せを見つけられる目で宝物をたくさん見つける事ができた。

    自分だけ幸せではなく、周りのみんなの幸せを自分の幸せと思えるようになりたいと思えました。

    チーコが幸せになり、そしてミーコの幸せも見たいと願ってます。

  • 主人公のモデルとなった女性にお会いしてみて
    とても素敵な方だったので読んでみました。

    どこまでが実話なのかわからないけど
    とてもおもしろかったです。

  • さらっと書いてあるけれど、ミーコの人生はかなりヘビーでハード。両親に捨てられたのはミーコの責任ではないが、親代わりになって可愛がり、大切に育ててくれた祖父母の家を出たのはなぜ?祖父は優しく祖母は厳しい。その厳しさに耐えかねたとあったが、それが愛情からだとわかっていたはず。
    確かにミーコは人からありがとうと言われ、自分もその人たちにありがとうと言えたのだろうけれど、まずは祖父母にありがとうをたくさん言うべきだったのでは。祖父母はそんな事を望まないかもしれないけれど、一緒に暮らすだけで、何でもない毎日でいい。

    苦労と幸せをたっぷりと経験して、色々な感情に折り合いをつけながら生きてきたら、きっとこんな顔に…とあり、その辺りが森沢さんらしいとは思うけれど、家を出た後がどんなに大変な人生であっても、自分で選び一人になったのだから。まだまだ考えの浅い子供だったのだろうな。
    その経験が最後の章に結び付いてはいるのだけれど、終わりよければ…な感じは否めない。ずっと祖父母の家にいても小さな宝物は見つけられただろうし、幸せにもなれたと。全ての原因が母親の愛情を知らないという事だとしたら、本当に怖いし罪深い。

  • いやぁ~森沢さん泣かせてくれますなぁ(ToT)もう最後なんて号泣ですよ゜゜(´O`)°゜それから心に響く名言も盛りだくさん!この言葉を心に刻んで生きていけば素敵な人生を送れそう(^^)d

    • ぴょんさん
      tonpeiさんのレビューを読んだら、読みたくなってしまいました。
      検索したら近所の図書館にあった♪
      次回、図書館へ行った時に借りてこよ...
      tonpeiさんのレビューを読んだら、読みたくなってしまいました。
      検索したら近所の図書館にあった♪
      次回、図書館へ行った時に借りてこようっと。
      2014/06/19
    • tonpeiさん
      ぴょんさんコメントありがとうございますm(__)mこの本、私の読書友達からオススメされて読んだんですが、こんなに泣けるとは…(ToT)ぜひ借...
      ぴょんさんコメントありがとうございますm(__)mこの本、私の読書友達からオススメされて読んだんですが、こんなに泣けるとは…(ToT)ぜひ借りて読んでみてください(^^)/
      2014/06/19
  • 最初がけっこう過激な描写だったのでびっくりしたけど、ミーコの人生にすごく引き込まれた。
    あんな恐いおばあさんに育てられて、よくこんな真っ直ぐな心の持ち主になったなぁと。さすがにやりすぎでは。
    でも二人が教えてくれたことは素晴らしくて、ミーコはそれをずっと守って、前向きに生きられている。小さな幸せを見つけながら、ありがとうの手を持ちながら、私も生きていけたらいいな。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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