赤い館 (魔法の本棚)

  • 国書刊行会
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本棚登録 : 35
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336038333

作品紹介・あらすじ

不気味な幽霊屋敷に次々に出現する怪異と凄惨きわまる結末、鬼気迫る傑作「ゴースト・ハント」他、怪奇小説の頂点をきわめた恐怖譚全9篇。

感想・レビュー・書評

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  • あっさりと読みやすい文章で、怪奇譚としての間口を広げている短編集。ふと気付くとおどろおどろしい世界が待ち構えている。以下、各作品について。


    赤い館:三ヶ月ほど田舎の館を借りることにした画家。だがそこには緑の泥がいつでもつきまとっていた。/妻や子のいる分、若干恐怖は薄め。それでもこの手の話のお約束な部分を踏襲して一番馴染みやすい作品。

    ポーナル博士の見損じ:いつでもライバル関係の男に最上位を奪われるポーナル博士。チェスだけは彼に負けなかったものの選手権へ出場した際またしても負けそうになり…/最後のもやもや感が歯痒い。この後も出てくる、(女嫌いの天才肌の)手記を書くと妙に筆が冴え渡る著者。力の掛け具合も違う気がする。

    ゴースト・ハント:ラジオを通じて、幽霊屋敷をレポートする形の短編。/気長すぎるレポーターに早く逃げて、と呼び掛けたくなる。短い分最も容赦が無い。

    最初の一束:友人が片腕を無くした訳を語る。彼(ポーチャス)の父親はある場所で牧師職につくことにした。だが、人々は冷たく、村八分を受ける。そこで謎の儀式を目撃した少年は…/うっすらと提示される解釈にひやりとする。雰囲気が横溝正史や三津田信三のよう。

    死の勝利:過去に残虐の限りを尽くした館。そこに住む末裔の老婆とメイド。段々やつれていくメイドを心配した牧師の妻は弱腰な夫に何とかするよう頼むが…/牧師夫婦の会話がユーモラス。二人の遣り取りが酷い後味の悪さを和らげている。

    “彼の者現れて後去るべし”:久しぶりの友人に再会した弁護士。だが彼は謎の男にたかられ憔悴していた。弁護士は友人のために奮闘する。/他とはちょっと変わった珍しく勧善懲悪な一編。

    悲哀の湖:妻の死に関する騒動からやっと解き放たれた男。近くの村からは3km離れた辺鄙な場所にある屋敷に移住したが、地所の一角には死者が出ると血の色に染まる湖があった。/日記形式で綴られる、狂っていく男の描写は安定した出来。『陶然とした村人』が謎に満ちていて怖い。

    中心人物:舞台に焦がれる「私」は、子供の頃から三角関係を暗示する白昼夢に悩まされていた。やがてそれをモチーフにした「私」の書いた戯曲にぴったりの役者が現れたが、現実は戯曲のように悲劇を予兆させるものとなっていく。/世にも奇妙な物語に近い味わい。幸福の定義はつくづく難しい。

    不死鳥:「私」は憧れの欽定純粋数学講座担当教授の座に年老いても居座るキャノピーが邪魔で仕方ないあまりにちょっとしたことを行ってしまった。地位にはつけたものの、公園でキャノピーに懐いていた純白の鳥が気になりだし、授業も集中して行えなくなってしまう。一計を案じた彼は…/動物ものが苦手な人には嫌でたまらなくなりそうな一編。「私」を慕うXをもっと頼っていればよかったのに、と思わざるを得ない。以上、まとめて読むと孤独な男にどうも手厳しい一面があるようで…

  • 最高。どれを読んでも最高。

  • 個人的には好みの作家を見つけた。さらりとした描写の中にじつは恐ろしい場面が描かれていたり…うまく言えないけど、怖いのです、この人の書くもの。
    「赤い館」
    今まで20人以上の人間が命を落としてきた別荘の話。実際主人公が見る怪異も怖いんだけど、近隣住民であるウィリアム郷が見る夢が怖すぎる。
    「ポーナル博士の見損じ」
    どうしても勝てないチェスの名手を密かに殺害したポーナル博士だったが…
    「ゴースト・ハント」
    「赤い館」と同じく今まで30人以上が亡くなっている幽霊屋敷の中でライブ中継しているラジオパーソナリティの一人称。最後まで明るい口調が逆に怖い。

    それ以外も幽霊譚が多いが、結局は人間の心理に寄る恐怖から来ているのがよくわかる。

  • この中の、チェスの幽霊の話が神がかって面白かった。デスノートのニアとメロと、ヒカルの碁をあわせたような。

  • 「terror」の「ゴーストハント」、「怪奇礼讃」の「ばあやの話」の人。
    幽霊も人間も両方怖い、いい話が多い。いやな読後感。

    怖い も不気味 もどろどろした感情のやり取り も集団の人間の手のつけられなさ も悪意 も入っててすごいな。

    貸出タイムリミット超過。今度最初から読み直す。
    「”彼の者現れて後去るべし”」から。

  • 私の最も愛読する「幽霊屋敷小説」

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