塩沢地の霧 世界探偵小説全集 37

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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336044372

感想・レビュー・書評

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  • 本書の前半部分はイギリスのとある海辺の漁村で暮らす人々の人間関係を丁寧に描き、群像劇のようなドラマが展開していく。様々な出来事を経てある人物への殺意が発酵しきった時、おあつらえむきの霧の夜に。その夜、塩沢地に消えた人気小説家が死体で見つかると、そこからは刑事の地道な捜査パートへと変化する。倒叙モノと思わせてー?という作品の構成が面白く最後まで読ませる作品。サスペンスかな。

    ただ、今まで読んだ「推定相続人」や「議会に死体」に比べるとミステリとしては地味な印象。人々のドラマとして面白い一冊でした。

  •  つい先日のアイルズ作品に続いて不倫の三角関係。といっても中身は大違い。こちらは女たらしファインズにちやほやされてだまされるヒラリーが馬鹿で堅物亭主のジョンが気の毒。彼の悩める姿には同情を禁じ得ないので、とうとう事件が起きた時には、ああ、やっちゃったよと暗然とする。これでそのまま警察につかまってしまったのでは、倒叙物としてもあまりにミステリとしてはうすっぺらだが、そこでひとひねり。本当にジョンが犯人なのか。捜査陣はいろいろな状況証拠から、不審な動きをしているボート運転手マジェックに目をつけて、徹底的な捜査により逮捕に持ち込むが、そこに最後の劇的な幕切れが待っている。前半の恋愛心理は読みごたえがあるし、後半の警官たちも生き生きとしている。人間ドラマとしては見ごたえがあるものの、残念ながらミステリとしての華には欠ける。解説子は横山秀夫になぞらえているが、なるほどという気もする。

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